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[遣い手は、未だレイヨが差し出すカップを取らず、
扉前で得物を構えるアルマウェルへと声をかける。]
――何なら、もう二、三頭
中へ入れて部屋をあたためるか。
[警戒する使者の背後――微か雪踏む複数の気配。
低く唸る狼が数頭、彼の後ろへうろついていた*。]
/*
レイヨを吊り損ねた日といい
マティアスの仔犬伏線を早めに出し過ぎた前日といい
どうも誘導RP下手だなと凹むのでした。
いつだったか、びーとんさんが仰ってらした
制縛ロールってのに該当してるんじゃなかろうかと
今村に限らずたまに気になってたりします。
でもスレスレの線はいっていたいともまた想い。
預けて戴こうとする試み。たのしいのです。
[男は上空から村を見下ろす。
他の魂らしき気配に言葉を添えず、ただ見下ろす――
その顔を覆う包帯は無く、
とても見目良いとは言い難い男の素顔が晒されている]
…今更、とも、なんとも詮無いが―
そう思えるのが義理だと確信無い程には、棲み良い村だったな…
[それからゆっくり下降する。
透ける自身の体も、それ以外も、視界そのものが久しい男に大した違和感を与える事は無く]
…ああ、だがやはり―
あながち間違いでも、無かったのだな。
[全員殺して終えば良いと思ったのは本気で。
大恩ある長老のこの村を護る事にすべてかける男に、残る「容疑者」達が映る*]
貴方だけでなく彼にも約束しましたし。
それに眠る間のツケが貯まった僕に出来る事は…
そう多くありませんから。
[カウコへの言及へ短く返されるトゥーリッキの言葉に、茶を煎れる間の耳を傾けても視線を向ける事はなかった。差し出す双方に受け取られぬ茶、二つのカップを膝上に引き寄せ、鎌首をもたげる白い蛇の所作に眼差しを細める]
………彼女にあえたんですね…
[腸詰の中身が血である事と同時に語られた言葉、いつの間にか姿を消したイェンニの面持ちを思い返す。トゥーリッキの口振りからも、口にせずも薄らと考えた道り腸詰の中身は彼女なのだろう。
自ら群れの頭と名乗り腸詰を齧るトゥーリッキの言葉に、前髪に隠れる眉を顰めるも、隠れぬ面持ちに浮かぶのは嫌悪ではなく思案。両手にカップを持っていなければ、眼鏡をはずしつるに歯を立てただろう]
[レイヨが差し出した茶を、男も取る事はなく、一度首を緩く横に振ってみせた。狼から注意を逸らさないようにしながらも、トゥーリッキが腸詰めを食す様子を見ていて。声をかけられると、やや間を置いてから]
……閉めろと言うならば――
[四頭がいる閉ざされた空間と、広いがどれ程狼がいるか知れない空間。孕まれる危険を比較し考慮してか、肯定の返事をしかけ――続けられた言葉と背後の気配に、はっと手に力を込め、振り向き]
…―――
………僕に人を癒せと仰るんですか。
[―――若先生―――呼ばわりに対する問いは語尾をあげずも、狼でも蛇でもなくトゥーリッキを捉える眼差しは細まる。アルマウェルへと向けられた言葉に、閉まらない扉の向こうへ顔を向け―――…]
…っ?!
[キィ…―――アルマウェルへ飛び掛らんと身を沈めた狼の姿に、眼鏡の奥の瞳を見開き声を上げるより息を呑んで、咄嗟に身を乗り出すと車椅子が軋みトンと片足が床を踏んでしまった。ギヂギヂ…ザザァァア…―――非難の声をあげるように崩れかけた小屋の軋む音と同時に、崩れかけた屋根の破片ごと積もった雪が入り口へ*降り注ぐ*]
姉様……?
[ゆっくり、ぞわりと顔を這う指をうっとり見詰め
次第に狭まる世界に惜し気は見せない
閉じた眼窩に広がる赤い世界は甘すぎるほどの傷みと恍惚 ]
私の世界なんて狭いのに そんなもの 美味しくないわ…?
[世界が彼女の口の中で蕩ける間、思いを馳せるのは……]
[飛びかかる一つの影、狼に向けて横凪ぎにナイフを振り払った。反応は早くも、振り向く僅かな時間のぶれ。狼の刃は男のコートを、あるいは肌までも破ったかも知れず。雪と破片が入り口を塞がんとするように落ち来るのは、それとほぼ同時にだったか*]
[たゆたう意識はそこで途切れる。
生死の狭間、聞こえる声に命を感じなくなったのは
残された半分の世界が色を失ったからか
赤だけを望んでも色亡き世界は灰色で]
あかぁい…あかぁい……
それ以外は、いら ない……
[自ら殺めた男の声も
杖に音色奏でる男の声も
赤恋うるを伝えた男の声も
秘密を語った女の声も*]
誰も、誰も私に赤をくれない
なら、もういらないわ
貴方達なんて、もうイラナイ
綺麗ゴトも世迷ゴトもこの村も
赤くないものは皆イラナイ
[狼の唸り声に目を細める。
今まさに崩れそうだった―最も男がその事実を知ったのは今だというのは皮肉でしかないけれど―レイヨの小屋から、崩れる音。
温度感じぬ冷たき雪の動き]
…――おこがましい、か…?
[自身に浮かんだ感情に、微に困惑した態で
行く末を、見つめて居る*]
[誰の何へ応える間もなく、レイヨの挙動が
苔生した屋根の端ごと崩れる雪崩を誘発し――
遣い手も思わず目を瞠り火の傍で腰を浮かせる。]
――… 、…っ? …さがれ!!
[飛びかからせた狼が、使者たる男が振った刃の
一閃に、胸へぱっと鮮血の赤を散らした瞬間も
顔色を変えなかった遣い手が、鋭く声を上げる。
アルマウェルの左肩へ深々と爪を喰いこませた儘、
赤茶色の狼は雪塊と石屋根の欠片に呑み込まれた。]
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