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―自室―
[起き上がり、辺りを見渡すが誰もいない]
おはよー?
[ゆっくりと四肢を動かしてから、機械のような作りの寝床を触る。
共に寝ていたぬいぐるみを胸に抱え、寝台から出て行った]
[部屋の中にあるものを次々眺めていく。
本棚、鏡台、クローゼット。
一枚の白いワンピースを取り出して、じっと見つめた]
『プレーチェ』?
[タグに書かれた文字を、“声”が読み上げたのでそれに倣った。
ワンピースに着替えたが、背中のファスナーは半ばまでしか上げられない]
りん、りん、りん。
[ぬいぐるみの鈴の音を口真似ながら部屋を出て行く]
はぁー。
[また扉を開くと、そこはビオトープ。
ぽかんと口を開けて、木々を*見上げた*]
― 部屋 ―
[並ぶ部屋の一つ。中央に腕を組んで立ち、目の前の壁をじっと見つめる、妙に背の高い男がいた]
……。
『やあ、おはようございます』
ああ、おはよう。
[聞こえる「声」に低めの声で返してから、また黙る。上向きがちだった顔を今度は俯け、ぽりぽりと頬を掻き]
……
君の名前は、何と言うのだね?
[ぽつりと呟く。すぐに首を横に振り]
ああ、順番がおかしいか。
人に名前を聞くならまず自分から、だ。
私は……
[声を途切れさせて逡巡していると、「声」は自分はカナメというのだと名乗った]
カナメ、か。
宜しく頼もう。私は、……
ええと、ああ、格好がつかないな。
君、もしや私の名前を知ってはいないかね?
……ライデン。
ライデンというのか、私は。
[思わぬ返答に瞬き、確認するよう繰り返してから]
覚えがあるような気もするし……
ないような気もするな。
ああ、いや。他に思いつく名前もないから、きっとそれで合っているのだろう。
有難う、優しい誰か……
いいや、カナメよ!
これで私は名のない生活を送らずに済んだわけだ。
[恩に着る! と腕を広げ、両手をかざすようにして宣言する。大げさな、芝居がかった言動。傍にあった椅子に腰を下ろし]
感謝ついでにもう一つ二つ聞いてもいいかね?
[背もたれによりかかり、膝を組み、足の上で両手の指を組み合わせながら]
一つ、此処は一体何処なのか。
二つ、私は何故此処にいるのか。
三つ、……この部屋に鏡はないのかね?
[声は一つ目には此処がドームの中である事を教え、二つ目には...が冷凍睡眠から目覚めたという事を伝え、三つ目には後ろを振り向いてごらんなさい、と答えた]
おお! これはいかにも……
灯台下暗し、というやつだ。
……いや、それに驚いている場合ではないな。
此処がとあるドームの中で……
私がつい先程まで冷凍睡眠――コールドスリープをしていたと? ふむ?
どうにも奇想天外な話ではないかね。
しかし……
名前すら思い出せなかったところをみると、一概には嘘と断じ難い。
知っているかね、君。
存在の証明より、不在の証明の方が難しいのだよ。
[そんな事を言いつつ立ち上がり、背後にあった鏡へと向かう。壁にぽつんとかけられているそれを、やや膝を曲げて覗き込み]
おお、我ながらなかなか色男ではないかね?
どう思う、君……
……ああ、親切だがつれないな、君は。
[それには返さない「声」に、やはり大げさに溜息を吐き、やれやれと*肩を竦めた*]
―自室―
[仰向けに小柄な少女が横たわっている。
両手を胸の上で組んで、つま先を揃えた雰囲気は、
眠りの深さや、安らかさを伺わせる。
やがて。おもむろに。
瞼が上がるにつれ、現れる黒い双眸]
――おはよう?
[目覚め。
幾度かの瞬き、子供の高い声が零れ。
続いて起きあがった上体、蒼みを帯びた前髪が流れ、
少し間をおいて眉根がよせられる。耳をかたむける風]
あなたは、どなた、ですか?
…カナメ?それがお名前ですか?
[訝りもなく問いかける口調だけれど、ほのかな照明の中に他の人影は無い。
まるで目に見えない、彼女にのみ感知できる存在――『カナメ』を示す如く
不思議な対話は続いている]
――ルリ。
それがルリのお名前ですか?
[教わった名を唇は発音して。カナメと一通り話しがなされた。
小さな足が寝台から下りたつ。
己の身体をたどった視線の先には、入院着のような服がある。
それだけでは肌寒いか、少女は、
備え付けのチェストから探し出したブランケットを羽織り、ついでに見つけたリボンで髪を括る。
かなり無造作な所作だった。
そして軽い足音が扉を出て行く*]
―自室―
[夢を見ていた気がする。時は容赦なく、人から大切な物を奪いさっていくから。大切な何かを、決して失わないように。瞳を閉じれば、いつでも美しい景色が浮かんで来るように。楽しかった日々の思い出が、いつでも思い出せるように。大切に思っていた人達と、もう一度出会ってもすぐにそれとわかるようにと。夢を見ていた気がする。夢の中で誰かが振り返った時、声は聞こえた。]
―おはよう 目を覚ましなさい―
[繰り返し見ていたあの夢は、目覚めと共に泡と消えて。忘れぬようにと見続けた夢は、聞いた事のない声にかき消されて。自身の名も、歳も、記憶も、全て失ったウシナイビト。失人の目覚めは、最悪な気分だった。]
―おはよう 気分はどう?―
最悪だ、バカ野郎。
[カナメと名乗るその声は、最低限の情報のみを語る。まずは失人がヒトという生き物である事から。生きる上で絶対必要な記憶を聞くだけで、失人はかなりの量の説明を受ける事になる。しかも、叩き起こされて不機嫌なところにだ。一通り説明を受けてやっと、カナメが失人の置かれた状況の説明に移ろうとした時。失人は最早聞く気すらなく、ただぼーっと虚空を眺めるのみになっていた。全ての説明を終えたカナメが、失人にそれを告げるまで。彼はただ、呆けていたと思う。]
―さぁ説明は終わり―
―起きなさい 行動しなさい―
[説明の終わりを告げられた失人は、解放された喜びに満たされていた。目覚めてから、六度ほど時計の音を聞いていた。座っているの、もうも限界だったから。]
長い説明、お疲れさん。
じゃぁ俺、もう一回寝るから。
今度は起こすなよ、バカ野郎。
[失人は、もう一度眠りに落ちる。しかし、あの夢を見る事は*二度とない*]
[幾人かが目覚め始めた部屋の扉が並ぶ通路。]
[ こつ こつ こつ 歩む靴音は数歩分。]
[ こつ こつ こつ 扉を叩く音は3回。]
部屋の主は、お出ででしょうか?
[控えめな声が尋ねる。しばし返答を待つ。]
[応える者があれば、他愛無く言葉を交わすために。
応える者がなければ、左手へ握る鍵を試すために。]
[扉に触れる。
指先へ無機質な冷たさが染入る――気がする。]
此処も、違いますか?
[さらりと手探りに辿る。鍵穴は見つからない。]
私の部屋では、ないのでしょうか?
[部屋の主が出てきたならそれは明らかなのに。]
[何時からこんなことを繰り返しているのか……
Knockerは疲労した様子もなく、次の扉へ歩む。]
[遠くで扉が開き――細い人影がビオトープの方へと
歩いて行くのを見た。半ばしか上がっていない背の
ファスナーを見遣っているうちに声はかけそびれたが]
あの方も、忘れてしまったのでしょうか?
[次の扉を叩こうと、鍵を握る手を持ち上げつつ呟く。]
…初めてだといい。
カナメが教えてくれるでしょう。
――…2度めにはもう、…
[ こつ こつ こつ 扉を叩く音は…呟きに*重なる*]
[夢は、見れなかった気がする。夢は記憶を整理する為の物であるから、記憶の無い失人には無縁であったから。]
―起きなさい―
[カナメの声が再び失人を目覚めさせ、やはり不機嫌に。]
俺、外に出てくる。腹が減ったから。
[カナメの声を背中に聞きながら、失人は歩き出した。]
―自室→室外―
[ひとつふたつ向こうの部屋から、扉を開けて出てくる人影。
二度寝から醒めた失人へ――Knockerは丁寧な辞儀を向ける。]
…おはようございます?
[視線は1度扉へ逸れ。其処はもう叩く必要のない扉。]
あちらに、先に目覚めた方がお出でのようですよ。
[ すう ]
[淀みなく上がる腕。ビオトープで屈み居る娘を指す。]
[ こつ こつ こつ 靴音は空気を震わせず
然し聴こえて。
Knockerは失人の背後を抜け次の扉へ向かう。]
思い出したことが真実かも、確かめられない。
[擦れ違いざまの呟きは彼に向けた其れでなく]
[然し *聴こえて*]
[すれ違った見知らぬ……のは当たり前だが、男に声をかけられてビオトープを眺める。膝を曲げ、何かを見つめる人の姿を認めた。あれは、オンナという生き物らしい。カナメがそう教えてくれた。失人は、ふらりそれに近寄ってみる。見知らぬ男は何処へやら去ったようである。]
何をしているんだい?
あり?
[声の降る方を見遣る。
すん、と鼻を鳴らして、人差し指の腹を見せた。
しかし蟻は既に吹き飛ばされている]
[鏡で己の姿を確認した後、また室内を見回した。くすんだ白色の壁に貼られた何枚かの紙。空を飛ぶ超人や派手な衣装を纏った青年が描かれている紙、中央に赤いバツマークが描かれた黒い紙、破れ掠れたそれらの絵を一望して]
君。
ふと思ったのだが、私の正体は正義の味方だったりはしないかね。
悪に改造をほどこされてしまった、というような……
あるいは逆に封じられた何か悪しきものでもあるか。
[それに「声」があしらうように返せば、眉を下げ]
……
冗談だ。そう冷たく否定しないでくれたまえ。
だが、私が何者かと聞いても……
君は答えてくれないのだから、色々と想像してしまうのも道理というものだろう。
哀れだとは思わないかね、君は――事情を知っているというなら、尚更!
今自分が使っている言葉が何という言語であるかすらわからない私を……
ああ、まるで迷い子のような気持ちだよ、私は。
[額に手をあて、ふらりとよろめいてみせる。はたと気が付いたように己の袖を見、そこから身に纏った服をざっと見て]
……改造というのは冗談としても……
これでは本当に実験体か何かのようだ。
[実験体のようでも、囚人のようでもある灰色の服。その箱を開けてごらんなさい、というカナメに、床の隅に置かれた木の箱を見やり]
着替えかね。
よもやびっくり箱などではないだろうね?
……いや、これも冗談だ。
全く、君は親切だが……
どうにも生真面目なようで困る。
[ぼやきつつも木の箱まで歩み、しゃがんでその蓋を持ち上げ横に置く。中には薄い色のシャツと黒っぽいズボン、地味な色のコートが畳んで重ねられ、その上に皮のロングブーツが置かれていた。どれも共通して大きく]
ふむ。丁度良さそうだ。
[それらに着替えると鏡を覗き、前髪を指で軽く梳いて。膝下まであるコートを前はしめないまま、マントのように翻して部屋の外へ出た]
とりあえず、ありはわかった。
ありってなんだ?
[あり、とだけ語るそれに呟くが。視線は小さな黒い生き物へ注がれる。視線でそれを追うが、何をするでもなく。]
……おお。
[まず見えたのは白く、広い景色。向こうには木々らしきものがあり]
あそこまで、何kmあるだろうか?
[こつりこつりと足音を鳴らし、緩慢な歩調でそちらに向けて歩き始め]
[何度目かに巡る、幾つめかの扉。鍵穴は見つからない。
左手に鍵を握りこむ。温かいか冷たいかはわからない。
やがて、ドームに沿い弧を描く通路の向こう、軽い足音。
蒼みを帯びた髪を揺らす少女の姿を見とめ、丁寧な会釈。]
…おはようございます?
[目元だけで笑みかける。初対面の少女へと、口数少なに
自らの名を告げて…彼女の名と、部屋の位置とを尋ねる。]
不躾に、扉を叩いてしまいたくはないので。
[そして、ルリの肩へかけられたブランケットを
暖かに掛け直そうと両手を伸ばしかけるが…留めて]
……。
どうか、お風邪など召さぬよう。
[今度の笑みは、どこか諦観の滲むいろを*口元に*。]
>>30
なんだ?
[聞こえる言葉を繰り返し、首を傾げる。
ぬいぐるみを地面に置いて、樹へ昇ろうと裸足を幹に付けた]
[が、一番下の枝にさえ手は届かない]
[やがて木々らしきものがはっきり見えてくる。ビオトープと思しき場所。一度足を止めてから、ぐるりと回るように歩き]
……おや?
おや。君達も……此処の人かね?
ん、いや。此処の人、という言い方は少々妙だな。
ひとまず一人きりでなかったというのは僥倖だ。
[前方の二つの人影に、声をかけた。最後などは独り言のような調子だったが]
[差し出された手を見て、どうすればいいかわからないから。とりあえず、自分も手を伸ばしてみる。]
俺の名前か。そうだな。
獏って呼んでくれたらいい。
夢を食う生き物の名前なんだそうだ。
俺は夢を喰われた方だけれど。
獏、か。
夢を喰う方ではなく喰われた方である。
何だか詩的な言葉ではないかね。
[伸ばされた手を握り、軽く何度か上下に振る。それからふと、木の頂点よりも遥かに高い天井を仰ぎ]
本当に此処はドームのようだが、……
そういえば、君達の他にも人はいるのかね?
[思い立ったよう、二人に*聞いてみて*]
[大きすぎたブランケットを引きずる有様。
二歩三歩と、いくつ進んだろうか。ふいに響いたは――叩かれる音。
反応して回転しルリの視線が男を捉えた]
おはようです。
こんにちは。
こんばんは。
ごきげんよう。お元気ですか。
はい、おかしいですか、カナメ?
[最後のは声に。
向きを変える
小さな身体のバランスは危なっかしい。
[頭に浮かんできた挨拶を並べたのに、
「声」から注意をうけたか、それでも静かな笑みのまま、男に]
ルリは、ルリといいます。
あなたは、どなたですか?
[テンマと聞けば頷いて。その名を唱える。
問いには、ルリの部屋の方へ人差し指が向いた]
ルリのおへやは、あっちでした。
あっちだったかな。あっちでしょう。
あなたのおへやは、どっちですか。
音は、あなたでしたか?
たたいていたのですか?
ルリは、聞きました。
よい音でした。
ありがとうございました。
[男の手中の鍵には目は留まらず、
男の会釈の真似か、首を縦に振る]
かぜとは、なんだったかしら。
あー。
ぐずぐずで、ずびずびで、へっくしょい!かしら。
テンマもおかぜなどめさぬよう。
[音の響きが気に入ったのか、
「めさぬよう」を幾度も繰り返し。
笑顔で、掌を向けて。
またブランケットを引きずりだしたのだった]
[ルリと名乗る少女が、目の前で『カナメ』と話す。
憶える既視感は束の間遠くなる視線に表われるが、
並べられる挨拶に、ゆるり目許を和ませた。]
お蔭さまで… 元気にしています。
こんにちはとこんばんはは、適当な時間に。
[彼女の『カナメ』の補足でもするかの様に添える。
そして、自らの部屋を聞かれると困惑げに笑み]
私の部屋は… わからなくなってしまいまして。
…音は、私です。
お尋ねしようにも、皆さん長くお休みのご様子でしたが。
ああ。ご迷惑でなかったのなら、よかった…
[扉を叩く音を聞いたと口にするルリへと恐縮するも、
続く言葉へ安堵して…少しばかり背が丸くなる。]
そう、ぐずぐずでずびずびは、いけません。
へっくしょい、は愛らしいですから、機会があれば。
…。
有難うございます…私は大丈夫なので。
[幾分堅苦しくさえある丁寧な会釈でルリに感謝する。]
御機嫌よう、ルリさん…また。
[彼女の笑顔へ僅かに感慨を浮かべるも詮無く――
大きなブランケットを引き摺り歩む姿を*見送った*。]
――カナメさんに宜しく。
ルリはルリといいます。
おはようです。おかぜなどめさぬよう、です。
[子供のわりにルリには起伏が少ない。
そのまま静かな風情で順ぐりに見回し、プレーチェで止まった]
のぼりますか?
のぼってどうしますか?
[木登りを理解しないらしく、こんな問がとぶ*]
[こつ こつ こつ 足音は空気を震わせずただ聞こえる。]
[目覚めた者等が、1本の樹へ集い在る様子が見えると
気づかれずともとか、其方へ向けて丁寧な辞儀をひとつ。]
……
[目覚め始めた人々。己が目覚めた際もこんな光景を見た。
先刻、ルリと言葉を交わした折>>55に…穏やかなKnockerは
「もう1度、長い眠りを得たいのです」とだけ答えた。
そして自分も部屋を探すと言ってくれた心持へ、感謝を。]
[蒼みがかった髪の少女へ再度の眠りを勧めるのはよした。
彼女の『カナメ』はきっとそうはさせないのだろうから。
左手の中に、白く軽い鍵をじわりと握りこむ。]
…友人が仲間とは、限らない。
[各々が交流するさまを暫し見詰めて――口の中で呟く。]
[やがてKnockerはビオトープ内の小道を抜け…*墓碑群へ*]
詩ってなんだろう。
よくわからないが、俺は本当の事を告げただけ。
俺は夢を喰われた。夢を失った。
それだけは、覚えている。
[手を掴まれ、上下に振られて。首を傾げたが、カナメによりそれは補足される。それは、握手と言うらしい。人間の挨拶の一つで、それには色々な意味があるらしい。仲良くしよう。約束した。仲直り。色々な時、人は手を握りあうらしい。]
もう一人、男に会った。他は知らない。
俺が知ってるのは、三人だけ。
ライデンと、その男と、こいつ。
[隣にいる、女という生き物を指差して。背中から、カナメの声が聞こえ。人を指差すのは失礼だと習った。]
失礼って、なんだろう。
登ると高い。高いと気持ちいい。
気持ちいいと嬉しい。だから登る。
お前も登るか?ルリルリ。
[彼女が答えるまで、失人はただ見つめ続けて*]
ライデン。バク。ルリ。
[人々の名乗りを繰り返し、枝の上に立って幹を抱きしめる]
プレーチェ。
[口にしたのは、ワンピースのタグにプリントされていた文字。
カナメは、その意味までは教えなかった]
木に登るのなら気を付けたまえ。
落ちたら怪我をしてしまうからね。
何なら私が肩車をしてあげよう。
[ルリと獏のやり取りを見てそんな事を。プレーチェ、と呟く少女に]
君の名前かね?
[と、短く問う。身を乗り出す様に心配げな表情をしつつ、その視線の先を*一瞥し*]
[獏の方へ向いて]
ばーくー[復唱]
なまえ、わからないですか。まえはわかったですか。おへやとおなじで、探せばまた見つかるかもしれせん。
るりるり、ルリ はひとつのはずです。けど、ルリルリですね。
[大きな目がじいと見上げる]
たかい。知らないです。もしくは忘れてしまいました。・・のぼるです。
[おもむろに枝にぶらさがろうとして。ライデンの申し出に]
かたぐるま。
[考え込んだあと、彼の肩をかりて枝へのぼった]
[閉ざされたドームの中は、緑溢れる小さな楽園。
プレーチェの視線>>64を背へ受けながら、Knockerは
ビオトープの合間を縫い、配された小道を歩みゆく。
淡いむらさきの睡蓮が咲く池の畔を回り込むと、
やがて墓碑たる白壁が列を為す一角に出る――]
……。
…何のために、増やすのでしょうか…
[白壁を大きめの色紙ほどの広さずつに区切った、
其処が「ひとりぶん」。刻まれた名の一つ一つへ
指先で触れながら――記憶を手繰るひととき。*]
―枝の上―
[身を引き上げた弾みで、
肩からブランケットが落ちていった。
[腰かけて足はぶらぶら、
ゆるりと頭はプレーチェの方へと]
なにしてるですか?
[女性の背中と直面し、
ぷ、れー、ちぇ、タグをよみあげる]
あー。
プレーチェが書いてあります。
あり。
[何しているのか問われると、蟻のことを思い出して幹を伝う小さな虫を指した]
プレーチェ。
[ルリが読み上げる声を追いかけ、こくこくと頷く]
プレーチェが書きましたか。ちがいますか。
ワンピースについてます、ワンピースがプレーチェなのでしょうか。ちがいますか。
このファスナー半分開いてます。
または半分閉じてます。
閉じるのにファスナーは使われます。
おさめておくように。零れないように。暖かいように。
…とじますか。とじませんか。
[女性の背のファスナーへと、手が伸びて行く*]
あたたかい?
[大人しく枝に腰掛けて、ファスナーが上げられるのを待つ。
背中に顔を向けるとそのまま半回転しそうになって、幹へとしがみついた]
[指された方を視線が辿り。小文字のoを象る口]
ありは、動いてるです。
ありは、いつ眠るんでしょう。
彼らの寝顔は、どんなでしょう。
[ひとりごち。
ファスナーの摘みをあげる。すると、
ちち、ぢ、ぢじーっ、
緩やかに速度を増し、音をたて閉じていった]
できました。プレーチェ。
[そう静かな声*]
[落ちたルリのブランケットを拾い上げ、傍の大きな丸岩の上に畳んで置いておく。
ルリやプレーチェ、獏の様子をしばらく眺めていたが、思いついたように]
私は少し散歩をしてこよう。
此処の詳しい様子も知りたいし……
他にも人がいるかわからない。
[遠い円周を見据える。部屋を出る時に確認した、点々と並ぶ扉は、此処からではよく見えなかったが]
では少年少女達よ、また会おう!
[正義の味方を気取ったような挨拶をし、三人に向けひらりと手を振った。コートを揺らして踵を返す。ビオトープを離れ、歩いていき]
[仰いで見えるのは、天井のガラス越しの空。それより少しく下には二階部分が見え、上るためらしい螺旋階段もあったが、ひとまずはドームの壁際を歩いていく事にした]
君。
私かこの状況について、何か一つでも教えてはくれないのかね?
[時折は「声」に話しかけつつ。教えてくれないかというその問いには、「声」はいかにも棒読みで「貴方はヒーローですよ、多分」と返し]
……まあ、教える気がないらしいというのはわかった。
しかし何だね、こうしていると何かゲームに参加してでもいるような心持ちになる。
記憶を取り戻せば私の勝ち、取り戻せなければ君の勝ちという……
実際そのような話であったりはしないかね?
[これには返事がなかった。肩を竦め]
では、代わりといっても何だが。
部屋に戻ろうという気になった時には……
……私がいた部屋がどこだったか、教えてくれるね?
[緩やかな歩みは止めないまま、そう*問いかけた*]
[ルリの視線に気付いて目線を合わせる。
ぱちぱちとゆっくり二回瞬いてから、ライデンを見た]
また会おう?
[スチャッと敬礼で見送り]
[立ち並ぶ墓碑の向こうから、水が流れる音が聴こえる。
こつ こつ こつ ざらりとした石畳を歩みゆく靴音も。
彷徨うKnockerは時折立ち止まり…死者の名の刻みに触れ]
…私が、あなた方を悼むというのは…
やはり道理に適わぬことでしょうか?
[その「鍵穴」を辿る。こつり―― 1度だけ、Knock。]
[Knockerは見知る名を探しては、墓碑銘に触れる。
高い位置にある其れには、踵を僅か持ち上げて。
低い位置にある其れには、片膝を石畳へついて。]
幾人かが、既にお目覚めです。
今のところ、年若い方ばかりで…。
…ああ。お一方、少し年長さんがお出ででしたか。
[他愛無く、死者へ見聞きした出来事を報告する。
1本の樹へ集っていた面々の姿…中でも幾分か
年嵩に見えた長身の男――ライデンを思い出す。]
若い方々の保護者になって下さるでしょうかね?
そういうことには、興味のない方でしょうかね?
――かつての私のように。
[同意を求める態で、こつり。手の中の鍵が軽い。]
…記憶がなければ、重ねた筈の経験も焦燥の種。
せめて楽園が、楽園のままでありますよう。
[触れた名へ供えられた花はどれも枯れて久しい。]
[高い位置から見下ろす、さっきまで自分が立っていた場所。高さが変われば、世界はその色を変えるから。低い位置にいた時に、例えば悲しみに崩れそうになって。世界が、悲しみの色に染まってしまった時。そんな時には、登ればいいと思う。高い位置から、世界を見ればいいと思う。悲しみの藍に染まった世界が、見下ろせば透き通る青になる。見上げれば澄みわたる蒼になる。世界は、こんなにも美しい。そう、誰かに言われた気がするから。]
やっぱり、高いと気持ちいい。
[ぽつり、小さく呟いて。]
気持ちいい?
[聞こえた言葉を反芻してから、やおら立ち上がる。
右足を振り出し、樹からすとんと降りた。
屈伸の姿勢から両手を上に伸ばす格好へ]
ん。
[小道を歩き出すと、遠く、黒髪の少女と目が合った。
先に目をそらしたのは年上の少女の方]
おはよう?
[声をかけてから、道を更に進む。
やがてKnockerの背中を見つけて忍び寄ったが、裸足が枝を踏み折った]
グッドモーニング スイートダーリン。
[真っ暗な室内]
眠り姫は、『おはよう』なんて味気ない挨拶ではなくて、王子様のキスで目を覚ますのよ。
それから、レイディの着替えの時は、背を向けてね。
うふ。気持ちの問題よ。
[衣擦れの音と共に笑い声が響く]
[ぺたり
ぺたり]
[壁のディスプレイに灯りがともる。
女性は笑みを浮かべ、ディスプレイに軽やかに指を躍らせる。
表示されたのは、通り一遍のインフォメーション。]
ダーリン。あたくしの名前を教えて頂戴。
[7つの名前が映し出される]
……アン・プレーチェ・ライデン・ルリ・バク・テンマ・ペケレ……。
……ペケレって変わったお名前ね。
[少し間を置いて、ぷ、と噴き出す]
まぁ。ペケレってあたくしの名前なのね。
ペケレ……ペケレ。哲学的といえなくもないわね。
[歌うように名前を唱える]
7人の眠り姫はみんな起きてる。王子様頑張ったのね。
7人だと小人になっちゃうわ。
他の眠り姫はどこにいるのかしら?
[ディスプレイを指でぴんと弾く。反応は無い]
今は内緒なの?
つれないダーリン。
[くすくすと笑いながらディスプレイに背を向ける]
じゃあ。眠り姫たちに目覚めのキスでもしてこようかしら。
[扉が開き、明かりが室内に差し込む。
まぶしそうに目を細めた後、裸足のまま歩き出した]
[またひとつ――白い墓碑のひとつへ触れようとした折、
ぱきり
乾いた音が空気を響かせるのが聴こえ…指先を止める。]
……、
[石畳へ片膝をついたまま振り返ると、先刻樹上へ見た姿。
Knockerは立ち上がる。膝へは塵ひとつついては来ない。]
おはようございます? …お怪我はありませんか
[丁寧な辞儀を向けて、彼女の足元を見遣りながら言う。]
なぁ、ルリルリ。
喰われた夢は、どうやったら帰ってくると思う?
帰って来ないのかな?
[隣に残る少女に声をかけるが、答えは期待していない。]
いいお天気ね!
ダーリンあなたもそう思わない?
[ぺたり ぺたり]
[適当な扉を開き、たどり着いたのは、白い石の群]
お墓かしら?
[顎に手を当てて辺りを見回す]
あら、眠り姫さんたち、グッモーニン。
[墓碑群に居る人を見つければ笑顔で声をかける]
……しかし、私は間違いなく大人だろうね?
やたら老け顔の少年だったりはしないだろうね。
しないかね。それはよかった。
[ふう、と息を吐き]
>>96
おけが?
[視線の先にある自分の足をふらふら振る]
だぁれ?
[Knockerに尋ね、そして聞こえてきた女性の声>>99に顔を向けた]
グッモーニン?
[天を覆う白いドームには、太陽を模した暖かな光源。
石畳は仄かに温かく…佇むなら冷え来るもあるか。
華やかな響きの声が、新たなひとりの訪れを告げる。
白壁の如き墓碑の向こうを振り返り…丁寧な一揖を]
おはようございます。
…あなたにもよき朝だとよいのですが。
[此方も眠り姫とやらに含めるらしき女の言>>99へは、
僅か困惑げな笑みで空気を震わせずそう答えた。]
[娘の白い素足>>101が揺れる。小枝のささくれなど
刺さらなかったかとすこし見遣るが…赤は見えず]
大丈夫だったようですね。
テンマと申します… 天満貴文。
私の名には、あまり意味はありませんけれど。
[そして、ルリへもそうしたようにまず己の名を告げ、
出会ったふたりへ、名と――もうひとつを*尋ねた*。]
それから――お2人のお部屋は、どの扉でしょうか?
あら。外れちゃった。
テンマさんとおっしゃるのね。よろしく。
あたくしはペケレよ。
部屋は……あっちの方ね。
[出てきた方角を告げる]
テンマ。
[男の質問>>103へは、しゃがみ込んで枝を手にして土の部分へ図解し始める]
プレーチェ!
[ペケレ>>104に抗議の声を上げ、自分を指差した]
[部屋のすぐ前に扉。開けばビオトープ。
のぼった樹。小道、この場所。
描いたのはそれだけ]
なぁに?
[はたと動きを止め顔を上げる。
枝を捨てて近寄ったのは墓碑の一つ]
[土に汚れた手で、墓碑に触れる]
やすらかにねむれ?
[カナメの言葉を復誦し、しゃがみ込んだ姿勢のまま後ろを見る。
瞳は、ペケレとテンマを順に*捉えた*]
[ブランケットを畳んでくれたライデンへ]
こういうときは、
ありがとう、
言うですか。カナメ?
[声へきいて礼を紡ぐ]
ありがとうです。
かたぐるまもありがとうでした。
高いは、こころぼそいですか。
ひとそれぞれですね。
ルリは、どう感じるでしょう。
[新たな目覚めびとが口にする名>>104が、全くの
あてずっぽうでもなかったらしき様子>>106に、
驚いた様子で暫し薄く唇を開いたが――ふと頷いて]
宜しくお願い致します、眠り姫のペケレさん。
…貴女のカナメさんにも宜しく。
[カナメという名を口にする瞬間だけ、笑みは消えた。]
[プレーチェが部屋の位置を地面へ描き示し出すと、
その傍らへ屈み――自らの記憶と照らし合わせる。]
…有難うございます、プレーチェさん。
不思議ですね、…これだけなのに解りやすい。
と、なると…ペケレさんのお部屋はこちら側――
ああ、用件があるとき以外の来訪は控えますので。
[描かれた図を共に覗き込むペケレへ、形式ばかり
慌てた様子を繕って片手を振って道化て見せ]
私の部屋は、見つかったときにお知らせを…、
[言いかけて――ふと何かに呼ばれるような様子を
見せるプレーチェ>>108の背へと意識を向けた。
『 やすらかにねむれ 』
誰の言葉かとは問い返すもなく…娘の瞳を見詰め]
……。
ああ、…
それも、"Prece"でしたね。
( 祈り )
[娘の名と、同じ音。]
……。 眠れますかねえ…
[プレーチェが触れた墓碑に刻まれた名は―――**]
そのうち帰ってくるかもです。
ずっと戻らないかもです。
喰われたならば、どこかのお腹の中でしょうか。
そこから、取り出せばいいのでしょうか。
かえらせる方法はまだ、よくわかりません。
[木肌を這う蟻の列へと視線は移ろい、
ふと――問いが落ちる]
カナメ。
どうですか、わかりますか?
[だが返答はなかった]
[ひとつ目を閉じ開き
枝から伝い下りて、足取りはよろめく。
いちどだけ獏を振り返った。
またあおうと、唇だけで象って。
そうして
水音に足並み添わせ、どこかへと*]
[変わらずドームの壁際を回っていたが、ふと立ち止まり天井を見上げ]
綺麗な空だ。
こうして見ていると……
あそこを飛べたらどんなにか楽しいだろう、と想像してしまう。
何。少し休憩しようか。
[呟いた後。壁に背をもたれ、*座り込んだ*]
[テンマの呟き>>115を聞いて、すたすたと近づく。
男の表情を見つめ、先ほどペケレにされたように自身の右手をKnockerの頭上へ伸ばした。
そして、僅かに目を丸めてから視線を外す]
……おやすみ?
[抱えているぬいぐるみへ、顔を*埋めた*]
なぁカナメ、お前は俺の歳を知っているか?
[ぽつり、虚空に問う。答えは、やはり返らないけれど。ガラス張りの天井をもう一度見上げれば、そこには輝く太陽と、大空を舞う渡り鳥の姿があった。失人は問う。]
なぁカナメ、あれはなんだ?
なんで空を飛んでいるんだ?
なんで落ちて来ないんだ?
[記憶を失う。それにも程度があるらしい。眠っていた時間の差か、あるいは環境の差か、はたまた個人の資質なのか。むしろ最初から、記憶などないのかもしれないが。とにかく、失人には、世界の全てが新鮮だった。見るもの全てが、新しい発見だった。世界は、失人を強烈に惹き付けていた。]
[此方へ伸ばされる白い手>>122を不思議そうに眺めた。
プレーチェが男の黒髪へ触れたか触れなかったか――
僅かにも感触があったのならばそれは彼女のもの。
空気を震わせるプレーチェの声は、ささやかにも届いて]
…有難う。
すこし、眠れそうな気がしてきました…
[ゆるゆると穏やかに吐く息は、何も揺らさないけれど]
…浮気者かどうかは、さて…解りかねます。
[上目使いで見上げてくるペケレ>>123の視線を受けて、
ひとつふたつ思案げな瞬きを落とし…緩く顎を引く。]
「御目にかかりたい」…
そんな他愛無い気紛れは、"用件"に入りますかね?
[やがて墓碑が並ぶ傍、草地へ横になって寝入るペケレの
様子に、Knockerは空気を震わせぬ声を耳触りよく落とす。]
おやすみのキスなど捧げてはいけませんね?
[天真爛漫な眠り姫に相応しいのは、目覚めの――――。
そして今は心地よい眠りをと、上着を脱いでふわり掛け]
こんなに愉しそうな寝顔をなさるのですから――
[ペケレが目覚める頃には跡形もなく消えてしまう其れ。
Knockerは立ち去る。齎す暖かさばかりは*残るといい*]
[ こつ こつ こつ 石畳を歩みゆく靴音。]
[ こつ こつ こつ 草地を踏む筈の靴音。]
[其の存在は空気を震わせず――然し聴こえて]
…もう1度眠ったら、
もう1度忘れられるのでしょうか?
[握りこむ鍵は白く、跨ぎ越す時ほどに軽い。]
[一歩後ずさり、寝そべるペケレの全身を一度に視界に入れる。
もう一歩下がり、かけられる上着の動きを瞬きもせず見つめる]
おやすみ。
[先ほどと同じ言葉は、右手の指先をあたためるかのように零された。
二人から視線を逸らし、震える指先で赤い唇をなぞる]
[墓碑の見える方へ視線を戻すと、そこにはもうKnockerはいなかった]
―自室―
[かしゃり、と扉の開く音が室内に響く]
[冷凍睡眠装置が開く音だ]
……うーん。
[寝ぼけ眼をこすりつつ、少女が目覚める]
……んー。
[カナメと名乗る「声」に耳を傾けてはいるが、
どこか生返事でまだ夢うつつといったところか]
ふぁ……。
[あくび交じりで返事らしきものをすると、
二度寝の誘惑に逆らえないまま*再びの眠りについた*]
―現在―
[岩の上のブランケットは少女の手中へ。
偏光硝子から光注ぐビオトープを出、
点々と扉の並ぶ通路に移動し、
時折止まっては上下左右を見回す姿。
誰かの部屋か夢でも探しているのか。
やがて前方に螺旋階段が現れた。
そちらへとルリは進み*]
ん──?
[テンマに掛けられた上着にくるまり、横向きに寝返りを打つ。]
[幸せな夢でも見ているのか、目と口が緩んでいる]
──ィ──ャ。
[つうっと、頬をひとしずくの涙が流れ落ちた。
唇から小さな言葉が漏れる]
[すやすやと、*眠っている*]
[ぱちりと目が開く]
[無表情で動かない。
目が赤く腫れている。]
私……お昼寝してたのねダーリン。
[きっちり15秒後にまばたきをひとつ。
うーんと伸びをして上体を起こし、掛けられた上着に気づく]
暖かいのは日差しだけじゃなかったみたいね。
[丁寧に上着を畳み始める]
[キッチンに向かう途中に誰かに会ったら]
グッモーニン眠り姫!
[ハグ付きで挨拶をしたり]
ご飯を作るんだけど、ご一緒にいかが?
[などと誘ったりするだろう]
[赤い目をして、裸足のまま、楽しそうにキッチンに向かって歩いていく]
[ぺたり
ぺたり]
[カナメの声に従い、たどり着いたのは、白を基調にした清潔なキッチンと食堂]
ずいぶんと広いわね。
[大きな冷蔵庫を開けると、そこには新鮮そうな野菜や、厚みのある肉など食物がぎっしりと詰まっている]
[貯蔵庫を空ければ根菜類も充実している]
[棚にはさまざまな調味料]
どうしようかな。
[腕を組んでしばらく悩んだ後、キッチン中で一番大きな鍋を取り出す]
[じゃがいも、にんじん、たまねぎを手際よく刻んでいく]
[秤も計量カップも使わず、よどみの無い動き]
[やがて漂いはじめるのは*カレーの香り*]
[空気を震わせず届ける穏やかな声も…やはりひとつのKnock。
通路へ座り込んで居るライデンから、いらえはあったろうか。
とろりと何処か眠たげな瞬きをして、男はまた歩を進めだす。]
…… …
[目覚めた人々が思い思いに過ごす、その気配に耳を傾ける。]
[本来の性質か否か、大げさに吃驚したような素振りをみせてから]
やあ、気を取り直して、今日は。
貴方が……
[獏の言っていた男だろうかと。確認しかけ、相手自身に言っても意味がない事に思い至ってか、やめた]
私はライデンという者です。
以後お見知り置きを。
そういえば、今……何といいましたか。
「ひとりの時間」?
どこから……どこまでが。
[かわりに挨拶した後、今しがたの声を思い出すように言っては、首を傾げる。テンマが何か反応を返したなら、ふうむ、と口元に手をあて]
何やら謎かけのようですね。
一人でいるならそれは一人の時間か。
一人でいないならそれは一人の時間ではないのか?
そういう問題であるのならば、難問だ。
そもそも一人という状況自体も概念の定め方次第で変わってしまう。
そうでない意味なら、……ふむ。
どうにも推し量るというのは苦手なようです。
[ぽつりぽつりと零しつつ、肩を竦め、僅かに眉を下げて笑う。そのうち眠たげに去っていくテンマを見送ると、己は少しく思案してから、向かっていた方に再び*歩き始め*]
[2回目の目覚め。そこでミナツは、先ほどと同じ話をもう一度聞くことになる。
自分の名前とか、今の状況とか、カナメと名乗る聞こえてくる声のこととか]
へえー、そうなんだ。
[先ほどよりは幾分しっかりした口調で返事をする。
やがて声が途切れると、周囲を見渡す。
目を引いたのは、スケッチブックと一緒に置かれていたカラフルな色鉛筆だった]
[気の向くまま歩き、たどり着いたのは広いキッチンだった。
食欲をそそる辛みの利いた香りに、お腹も小さく鳴る]
これ、食べてもいい……のかな?
[キッチンの主らしき女性に問いかける]
マンドラゴラ?
[樹の根元から滴る水が貯まり、泉となっていた。
浸した足をゆらゆら動かしている。
広がる波紋]
嘘?
[笑うカナメに、首を傾げた]
[引き寄せられるまま、失人は世界を受け入れていく。新しい記憶が、更に古い記憶を消して行く。もう、夢のカケラすら残っていない。それでも、取り戻したくて。]
ルリルリが、俺の夢を見てみたいって言ってたし。
取り戻さなきゃな、夢。
[だけど夢の最後だけは、まだ覚えている。最後に見たのは、誰かのシルエット。悲しくて、手を伸ばした時に夢は消えた。]
なぁカナメ。
俺の夢を食ったのはお前か?
[問いは、虚空に溶ける。]
[あのシルエットは誰だったのか。忘れてはいけない人だった気がする。忘れたくない人だった気がする。忘れてはいけない人だった気がする。あぁせめて、顔だけでもわかればいいのに。カナメは何も答えない。教えてくれない。]
俺の答えは何処にある。
俺の夢は何処にいる。
[キッチンへひょっこりと顔を出す]
ペケレ、おはよー。
[先ほどまで墓碑前で寝ていた女性に声をかけてから、初めて見た少女の顔をまじまじ見つめる]
プレーチェ。
ひつじ。
[自分を示し、抱えるぬいぐるみを掲げ、ミナツへ*自己紹介した*]
――自室――
[蓋が開いた冷凍睡眠装置。先ほどまでまどろみと覚醒の狭間を彷徨っていた少年は上体を起き上がらせたが、それ以上動こうとしない。]
・・・うるさい。俺は眠いんだ・・・
・・・どうして、起こした。
そんな長話はどうでもいい。もう一度眠る。
・・・ッ!わかった、わかったから大声を響かせるな。
起きればいいんだろう・・・くっ・・・。
[渋りながらも、声に促されるままに装置を離れる。足取りは重い。]
長話はもういい。聞いていたさ。
[ぴしゃり、と声を遮る。]
「レン」、「レン」とうるさいな・・・変な感覚だ。
それは、本当に俺の名前なのか?本当に俺のものか?
・・・とはいえ、他の名前なんて思い浮かばないな。
わかったわかった。「レン」でいいよ・・・。
そういうことにしておく。
[気に入らない、耳障りな声だがその言葉に耳を傾け]
・・・そうだな。確かにそうだ。
ぼうっとしてるのを覚ましに、体を慣らしに行こうか。
こんな体中がギシギシ言うような不愉快な感覚とは早く縁を切りたいからな・・・。
[壁に手をつき、ぎこちない動きで部屋を出た*]
ミナツ……?
さっきディスプレイに無かった名前よね……?
どっから出てきたのかしら。
ダーリン、私の脳に何か送り込んだ?
[真顔で首を傾げる]
じゃあ……[失人 バク]?
[慎重に名前を上げる]
[ふわり、失人は飛び降りる。世界をみて回る為に。行き先など決まっていないけど。それでも、新しい何かと出会いたいから]
行くぞ、カナメ。俺の夢を探しに。
[見えぬ何かに声をかければ、それはついてくるだろうか?]
ひーい、ふーう、みーい、よーお、
いーつ、むーう、なーな やー――
[ブランケットをまとい子供は、
危うい足取りで階段を数えつつ踏んで、上へ着けば更に進む。
階下のとは少し趣を違えた扉。
そこに掛かっていたプレート、記されたその文字も読まずに、入った。施錠などはされていない]
これはなんですか、カナメ。
[なかの広さはそれなりか。
色とりどりに明滅し始めた壁の一部へ寄って触れる。
すると立体映像が、室の中央に結ばれた]
―墓碑群―
[そこは、先ほどまでとは違う世界だった。ここの空気は、冷たく痛い。悲しみの中に、浸かったような感覚。]
あぁ、この場所は涙の色をしている。
[ぽつり、呟いて。近くの扉に寄りかかって、ぼぅっと、この世界を眺める事にした。悲しみの色を覚える為に。]
[高い建物の群れ、電飾、その上に飛行船。
そして大勢の人間たち。
街の俯瞰か、さながら精巧なジオラマのように]
これはなんですか、カナメ。
[耳を傾けるルリ]
…キロク?
むかしの、映像ですか。
このひとたちもいまここに? あえますか?
[これが実体のない虚像である事はわかった。
人差し指が人々を指すと、像がかき消える。
カナメの声は聞き取れないほど遠ざかり]
[しばし佇んだ後、少女の興味は移る。
またその壁へ手が触れると、
別の映像が現れ次々と切り替わる。
操作方法などわからない、
映されるものをただ見るだけだった。
夢中になるうち、
ブランケットが足元へ滑り落ちて*]
ん? 何か……良い匂いがするな。
この匂いは……カレーかね?
[ふと漂ってきた匂いに、一旦止まって辺りを見回し。匂いのする方へと歩いていっては、一つの扉の前で立ち止まる。
こん、こん、と二度ノックをしてから扉を開け]
[身長と同じくらいの高さの出入口。頭をぶつけないよう、慎重に中に入り]
やあ、今日は、お嬢さんがた。
美味しそうな匂いがしたものでね。
余っていれば少し貰ってもいいかな?
[室内の面々を見てから問い]
と……失礼、挨拶が遅れたが。
私はライデンという者だ。
[初めて見る顔には名乗り、宜しく頼もう、と挨拶する。
胸の下辺りに腕を横にあて、丁寧に*一礼を*]
うん、覚えた。この世界は、藍色だ。
[ぽつり、ぽつり。一人で呟いて。]
次は何処へ行こうか。
新しい世界を、見に行きたい。
[寄りかかっていた扉から離れ、また歩き出して。]
[ こつ こつ こつ 螺旋階段を昇る靴音は、硬い。]
[2階の通路に出ると、吹抜けから階下を見下ろせる。
ビオトープ…美しく均整の取れた箱庭が其処にあった。]
禁じられた進化――――
…付き合わされて、気の毒と言うべきでしょうかね?
[呟きには困惑が滲む。
メタセコイアの枝間を駆け抜ける影は、リスか小猿か。]
[ライデンから得られた答えは別の形をした疑問だったが、
眠たげな眼をした存在はそれなりに感銘を受けたらしく…
推し量るのは苦手と言う彼へ、ゆるりと被りを振った。]
素直で謙虚な方は、
慎重でもおありだと思いますよ…ライデン。
[ささやかに呼び名を改めて、気怠げな歩を石畳へ乗せた。]
…ああ。
「今、ひとりの時間だ」とお感じのときは…
何か合図でもいただけるとよいのですがね。
無理でしょうかね。
否、ご機嫌よう…
[別れ際の台詞は、戯言にしても*他愛無さすぎて*]
――――カナメさんに宜しく。
―― 回想 終了 ――
[キッチンの戸棚からクロスを見つけ、座らせたぬいぐるみの首に巻く。
その隣に腰掛けて、小鉢の前にプレーチェ、普通の皿の前にひつじ]
いただきます?
[倣う言葉も動きもぎこちない。
一匙カレーを食べ、数秒後にパカーっと口を開いて動きを止めた]
[ノックの音に顔を向けるとライデンの姿が見えた]
また会おう。
[仰々しい男の仕草に返すのは、先ほど別れ際に聞いたセリフ。
真似て頭を下げると、さらりと髪が*揺れた*]
[壁づたいにゆっくり、ゆっくりと歩く。ぎこちない感覚が遠くに去ることはなくて。]
くっ、思うように動かないってのはこんなにも妙なものなんだな。
……なぁ、やっぱりもう一度眠ってもいいか?
[途端、頭の中に大音響で響く声。]
ッ、わかったわかった!起きてるよ・・・。
しかし・・・どこまで続いてるんだ、コレは。
同じドアばかり続くと気持ちが悪い。
……へぇ?人が眠る部屋、ね。
俺も眠りたいものなんだが……わかってるさ、言ってみただけさ。
[一歩、一歩。壁を頼りにゆっくりと歩みを進めて行き―――ふと、足を止める。
目の前にある扉は開いた形跡があって。今までの扉とは毛色の違う扉。手を触れてみる。伝わるのはどの扉とも違った温度。]
……誰かがいる、のか?
お前が言っていた「他の起きた人間」とやらか?
ふぅん……入るのは自由と。聞いてもいないことまで説明ご苦労なことだね。
[聞きたいことだけ聞いたのならばもう、お節介な声などに興味はなく。ただ、その先に進む為だけに扉を開いた。]
[扉を開いた向こうに広がる景色は今まで通ってきた道とはあまりにも違いすぎて、ほんの一瞬目をぱちくりとさせる。]
……なんだ、これは。
ビオトープと言うのか……意味の説明はいらない、自分で感じる。
綺麗だって?ぱっと目に映る感じでは確かにそうだな……でも、俺はなんか嫌だよ。上手く言えない。押し込められたような変な感じだ。この感覚はなんと言うんだ――『窮屈』、とでも言うのか……?
[ふと地面を見る。幾つかのあまり古くない足跡達。
足跡の進む方向を見やり、壁がないことを確認してため息を漏らし。]
ふぅん。あっちの方向、か……。
[壁から手を離し。よろよろと歩みを進めて行く。
人の手の加えられていないように『見える』地面を、足跡だけを頼りに進む]
[しばらく歩くと視界が開けた先に大きな――白い壁。]
……ぼ、ひ……?
此処はそういう名前なのか。
人間の眠る場所?ここでも眠っているのか。
さっきの部屋といい、此処といい、誰もが眠っているのに、俺は眠ろうとすると怒鳴られるとはね……。
ええ、送る事ができれば送りましょう。
また会う時を、……カナメに?
[最後の言葉に向けた疑問符は、
相手には恐らく、届かずに]
君、彼と知り合いなのかね?
[テンマが去ってから、「声」に問いかける。
「そうともいえるし、そうでないともいえますね」
抽象的な返事に、むうと眉を寄せ]
自分も私が俳優のようだと思う?
それは……何、三枚目なら似合う?
――全く、手厳しいね。
[誤魔化すような冗談には、やれやれと]
― 回想終了 ―
[返される挨拶と礼に、人差し指を立てて何度か横に振り、ふ、と笑って]
そういう時は「また会ったね」と言うのだよ。
やあ、また会ったね、プレーチェ。
[相手の名前とおぼしきものを*口にし*]
…ん?
[手足はまだ冷たく、感覚は未だ重い。]
いいにおい…。
[何処からともなく漂うスパイシーな香りに、消化器官が先に反応したらしい。
…きゅうと小さく腹の虫。]
おなかすいた。
[まだ半分夢の中に居るかのようなおぼつかない足取りで、香りの源泉を探しにふらり。]
…や、平気。
[まだ動けるはずが無い、と耳元でキンキン騒ぐ声。
ぼんやりと返すと、人の気配のするドアを開ける。
キッチンには数人の姿。]
メシ、貰える?
…腹減っててさ。
また会ったね。
[ライデンの指の振り>>184まで真似てから言った。
ペケレがバケツプリンを食べ始める>>186のを見ると、自分も小皿によそって席へ戻る]
甘いもの。
[ユウキの袖をくいくいと引っ張った]
プレーチェの。
[一口だけ食べた>>173小鉢と、手付かずのもう一皿、ペケレの用意する山盛りカレーの3つを順に指差した]
わっ…!
[どさ。
まっすぐ人影を見据えて進む中、細い蔦のような植物に足を取られて前のめりに転んでしまう。]
…った……畜生…情けないな…。
[顔を上げて起き上がった時にはもう、人影は視界から消えていて。]
今の俺の足じゃあもう…見つけられないか。
はぁ。本気で体を慣らさないとな…人一人追えないどころか満足に動けないなんて情けなさ過ぎる。
…笑うな、カナメ。
言われなくたってそのつもりだ。中に戻る…この足場は今の俺には辛い。
[慎重に立ち上がり、バランスをとって。歩いてきた道を戻り始めた]
プレーチェさんが、休める場所を
見つけて下さったので…うとうとしてきます。
ルリさんは、ごはんの時間のようですよ。
[階下の、煮炊きの香り。
自身にとっては食欲は無縁で――本能に急かされるように
食堂へ向かう白衣の青年の姿を思い出しながらルリを促す。]
>>194
[渋い顔でペケレを見ていたが、やがてカナメの助言をそのまま口にした]
いらない。
[ふるふると首を振って固辞。
プリンを黙々と食べている]
……。
あいたた……
私とした事が、うっかりまた眠りにつくところだった。
[ずるずるとその場に座り込み、後頭部を押さえつつ]
……アン?
[ペケレの声に反応してか。ユウキの方を見上げるように見て、ぽつりと]
[やっと辿り着いた通路を歩く中で漂ってくる、何か、食べ物の匂い。
その名前が頭に浮かぶことはなかったが。]
…腹が減ったな。
[無意識にぽつりと呟いた言葉に、初めて空腹であることを自覚する。
引き寄せられるように、匂いのする方向へと向かう。
そして、ある一室の前に辿り着く。
明らかな、中に誰かがいる気配。]
…バク?
違うような気がするけど、君がそう呼びたいならそれでもいいよ。
[まだどこか遠くに居るような様子で、食卓で配膳を待つ。]
あぁ、ありがと。
[大盛りのカレーをのろのろと口に運んだ。
血の気の薄かった顔に少し赤みが差したかも。]
…きみは、要らないの?
あぁ、そうか…辛いより甘いが好き?
[少女の様子に気がついて、くすりと笑った。]
…アン、かな?
[またも呼ばれた違う名に、しばらくスプーンを咥えて思考。]
なん、だっけ。
[耳元でささやく言葉はキィキィとうるさく、要領を得ない。]
[ユウキ>>201とペケレ>>203に、こくこく頷く]
プリン。
[最後の一口を食べ終えると、器の底に残るカラメルを舐めた。
しかし顔がはまりかけたので一度でやめた]
[立体映像は、――――過日の街を映し出している。
何かの祭り。賑やかな、少し浮かれた人々の表情。
束の間…ルリと共に眺めた其れから視線を戻すと、
少女のちいさな白い手に、ずっと持ち歩いていた
鍵をそっと握らせる。包み込む、酷く冷たい手。]
……" 鍵 "です。 …どうぞお好きに
[たったそれだけ口にして、影は離れ…部屋を出る。
白く軽い――その「骨片」は、鍵の形をしていない。
DNAが開く扉は、所在も繋がる先も*今は知れず*]
な、なんだ…?!
[ガターン、という音に思わず扉を開いた。]
おい……大丈夫か?今の音は……
[扉を開くと大勢の人間達が目に入り。一瞬、戸惑う。]
……人……だよな?
[次に目に入るのは音の主だと連想される倒れた椅子と、痛そうに後頭部を抑える男。]
……そこの……おと、こ?
大丈夫か?すごい音がしたんだが…。
…どれ、大丈夫かね?
[スプーンを置いて、ライデンのところへ。]
たいした事無いと思うけど、頭打つと結構厄介だからね。
あまり痛むなら、冷やした方がいい。
後から段々痛くなったり吐き気やめまいが出たりしたら、必ず言って。
うっかり手遅れになってからじゃ不味いからさ。
[やけにてきぱきと処置。]
ああそうそう。
私はペケレよ。よろしくね。
[ユウキに告げた後、
誰とも無く呟く]
みんなカナメに聞けば答えてくれる──のかしらね。
なんであたくしたちがここにいるの?
なんでダーリンがみんなにいるの?
──答えてくれないなんて、ほんとに不実な王子様ね。
おはよー。
[飛び込んできたレンに、のん気な挨拶。
座らせていたぬいぐるみを胸に抱える]
プレーチェ。
ひつじ。
[座ったまま自己紹介をして、ぺこりと一礼]
[気がつけばあの樹の下に戻っていて。空の青が赤に染まり、やがて夜の闇に変わるように。ゆっくりと、世界は色を変えていく。失人は、それを感じながらただ佇んでいた。]
カナメはダーリン?
[小首をかしげて問い掛けると、カナメは何か答えた]
ふ〜ん。
[鼻から抜けるような声を出して、床につかない足をぶらぶらさせた]
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