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ねえ、その水割りちょうだいよ。
ええと、何だっけ。ウルフ? ジンジャー? レス? キャットテイル?
[いくつもいくつも名前を並べ立てる。
その中に彼の呼び名がひとつでもあったのか、ないのかも知らないままに、催促の手が伸びる**]
/*
かうこ だから 買う子→売る夫 で ウルフ
ジンジャー+レス+キャットテイル→「しょうがないにゃあ」ってよむんだよ!
――ほんの少し前――
[頬に触れる指先。少し伸びた爪のかたい感触。
綺麗と言われたって、そうあってほしいと願ったものじゃないから、どうにも的外れに思った。]
努力なく綺麗、ね。
綺麗になろうと思っているわけじゃないんだけれど。
そういう風に言うと、嫉妬する?
[視線を逸らす前のこと。
つつかれた指に自分の指も添えて、絡めて降ろさせる。
なんてことない、ただの女だ。
背けてしまえば、刹那の欲も薄れた。
もう思考回路は、11月3日のことばかり。]
――現在――
ウルフ。ウルフか。わかった。思い出したよ。
そういえばそんな名前だったっけね。
[口から出まかせ数撃ちゃ当たる、なわけもないが、欠片も思い出せてなどいない男の名前をさもはっきりと記憶にあるかのように頷く。
薄めに薄められた水割りはまともな味すらなくなっているが、それで構わなかった。あまり味の違いなどわからない。
けれど煙を飲むとは言い得て妙かもしれない。苦みか、渋み。味がするとも言い切れない、鼻から抜けるだけの、とらえどころのない味わいが喉を落ちていく。]
うん、美味い。非生誕祝いにうってつけだ。
[それは、茶会は嫌いだといった男へ傾けるためのグラス。]
[染み付いたような脂のにおい。
目の前の水割りと似て非なるそれに、くんと鼻をひくつかせる。
頁を捲る音が聞こえはじめたら、盃を交わしに行こうとはしない。]
ねえ、甘いもん欲しい。
砂糖ないの、砂糖。
[呆れるような溜め息をお供に、白砂糖がカウンターに。
定位置はそこだろうと、暗に示す。]
話わかる。
そういうのって大事だと思うな。
[ちん、とグラス同士の合わさる音。
カウンターに無理やり手を伸ばして砂糖が小山に盛られた皿を取れば、祝い酒のアテも充分だ。
舐めて湿した指に、白砂糖。口元に運んで、しゃりしゃりと食感を楽しんでいる**]
じゃ、ないの。
さっきそうだって言ったのに。変な人。
[おそらくお前に言われたくないランキング第一位だと思われるが、天高く己放り上げる棚。]
なんでもない日なんて、本当はないと思うんだけどね。
ウルフの誕生日はいつ?
[セルフォンを見たり頭を掻いていたりするウルフに、白砂糖のお裾分けを差し出しながら問う。]
[どこかで羽音みたいなものを聞いた気がした。
軽くぐるりと周りを見たけれど、飛ぶようなものはない。
ならば外だろうが、生憎窓際は女の定席だ。]
鴉かな。
いいよね、黒くて。
[羽音が聞こえるような大きめの鳥を鴉くらいしか知らないとも言う。]
ふうん。
[忘れた、という言葉。別段興味はないとばかり受け流す。
話題がほしいだけだ。口を動かしているのは楽しい。]
甘いものは嫌い?
[そうでなくても砂糖をそのまま口にする人間はそういないかもしれないが。
美味しいのにな、とまた舐める。]
そう。じゃあ次は卵だ。
ゆで卵くらいなら出るんじゃない?
ボクあんまり固ゆですぎるの好きじゃないから、程々にしてね、マスター。
[ね、とカウンターの向こうのマスターに、笑みを向けた。
反応はどうだったか。卵が出るも出ないもどちらでもいいのだが、ゆで卵には砂糖より塩のほうが好きだ。]
ははは、鴉に馬鹿にされるの?
なら、ウルフは鴉よりも下の存在なんだ、はははは!
[べったりとカウンターに伏せるウルフに、いっそ心地良いくらいの大笑い**]
お、悪い人だ。
[完全に見た目と雰囲気だけで決めつけて、堂々指をさす。
悪い人を悪いと言えないようでは変人は難しい。]
倒れるようなのって例えばどんなだろ。
あれ? あの、火がつくようなのとか?
[火がつくなら見てみたい。
ライターを誰か持っていないだろうか、脂の染みた本の虫ならあるいは、けれど振り返ればいつの間にかその席はもぬけの殻。]
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