情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了
[1] [2] [3] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
…………
[無力がゆえに…―――長老の言葉と共に向けられる視線を受け、眼鏡の奥で僅かに見開いた瞳が揺れた。物言いたげに開いた口が幽かに震えて、結局は何も紡がずに引き結ぶ。
車椅子に座す求道者はただ、供犠の娘を見た。彼女は―――幽かな弧を描いたように見えた口元、面持ちは写し取れず歪んでいくから項垂れるように俯いた]
だから…
こんなに大勢いたんですね。
だから…―――
[荒げる事のない言葉は続かず途切れて、膝掛けを握り締める。ラウリの言葉に俯き垂れた前髪が揺れ、ゆるりと顔をあげ自身もまた改めて、集う者たちを見た]
[遅れてきたイェンニに目礼を置き眼鏡を手に思案に沈むも、彼女のどの言葉にか顔を向ける。声をかけるでもなく、束の間は滲んだ視界が彼女を捉えていた]
………
…説得に応じては貰えないのでしょうか。
[苦渋の決断を下した長老に対してか、供犠の娘に対してか、あるいは狼を操るらしき者たちへ対してか。狼の遠吠えは集まる誰の言葉を待たずも応えているようで、向かう先すら曖昧な声は小さい。
カウコの言葉が一度は途切れようとも、続きを想像する事は難しくない。菓子の包みを抱く供犠の娘の声、カウコやヘイノのドロテアを増やしてはならなぬと言う声―――音も息もない溜息が零れてしまうのに唇を噛んだ]
長老のお話は伺いました。
でも僕にはまだわからないです。
[ビシャルが場を辞そうと動くのに、滲む視界はまた集められた者たちを見回した。マティアスのように視界の無い訳でもなく、トゥーリッキのように見ぬ事を選ぶでもなく]
…今でなくとも構いません。
皆さんのお話を伺いたいです。
[供犠の娘が身を呈して護ってくれる時を想えば、今すぐにでも聴きたくもあり、語られるのを待つ間すらも惜しむ口振り。事情を知るであろう者も知らぬ者も含めてとは、決して強くはない口調であれ言外にも滲んだ]
こうして集まる大勢の前でお聴きせずも…
[滲む視界は強く意見を述べず控える態のイェンをちらとなぞるも、彼女に限らず大勢の前で零される意見と個人的な会話は誰しも多少の差異はあるだろう。一度、言葉を切り間を置くように、眼鏡をかけなおした]
個人的にもお話できればと思います。
気が向かれたら小屋へ来て貰えると嬉しいです。
大したおもてなしは出来ませんけど…
皆さんにとって、足を運んでまで…
僕が話すに足るか定かではありませんが…―――
[トゥーリッキの声に言葉を切り、立ち上がり寄せてくれる歩の分だけ視線はあがる。キィ…―――座す車椅子ごと向き直ると、眼差しと共に礼を述べるように軋んだ音を立てた]
僕は吼え続けるおおかみより人がこわいです。
見据えるべきを誤るかも知れない己も含めて。
僕は僕の出来る事をしているだけです。
決して多くはありませんけどね。
[車椅子に座そうと土地や草木に対する幾らかの知識はあり、細々とした暮らしは立っている。招き見て貰えばと多くは語らず、残る者たちに目礼を置き場を辞す事を示した。
キィキィキィキィ…―――トゥーリッキが持ち上げてくれるカーテンに冷気が流れ込むも、マティアスの声に車椅子は止まる。向ける眼鏡の奥の眼差しが和らぐのを、彼が見る事はないけれど]
粗茶くらいはお出しします。
温もりは和らげてくれますから。
[何を和らげるかも曖昧な言葉は、マティアスと同時に招きに応じてくれたトゥーリッキにも向けるもの。キィキィキィキィ…―――持ち上げられたカーテンを潜る前には、礼を籠めた瞬きを添えた。
膝掛けの上から触れる手に項垂れるような仕草で浅く頷き、肩越しに振り返ったおりていくカーテンの奥に一瞬だけ供犠の娘を見た。村のはずれ付近の住まいたる小屋は老朽化が進み廃墟に近いが、車椅子に座す求道者は修繕を施す事も誰かに依頼する事もないが、招く事を臆する様子もない]
出来ぬ事とて…想いはしますけどね。
弁えられているなら幸いです。
寒い中ご足労をありがとうございます。
[トゥーリッキとマティアスの会話に口を挟まずも耳を傾け、再開される続きに広がる夜の冷たさに眼差しを細める。遠吠えは止まず人の気配も温もりも減る屋外ではテントより大きく、進む道のりに招いた人でなく寒さを気遣う眼差しは蛇の気配を探る]
…僕も貴方も群れのひとりですね。
[キィキィキィキィ…―――やがて崩れかけた小屋の前で車椅子の音が止まり、到着を示すように顔を向ける。立て付けの悪い扉を開いて招き入れれば、慣れた所作で言葉の通りに短い夏の間に知る者も少ない森の隅で摘んだ茶を淹れはじめた。
トゥーリッキに木彫りのカップを差し出して、自らも茶を啜る。お連れさんのお名前を伺ってもいいですか?―――湯気に曇る眼鏡越しに最初にかけたのはそんな言葉]
[見ずもトゥーリッキの鼻先が立てる音は聴いていたから、招いておきながらも口も開かずに。室内には茶の他にも幾らかの草木の根や葉や土の幽かな香り、すり潰しかけの木の根と機材が乗る机は脚が一本だけ短く、カップを置くとカタリと鳴った]
仮に…貴方がまじないをできたら助言を欲しますか?
時と場合と、人によるとは思います。
[道々に問われた言葉へと答えたのは、悴む指先が解れて先に曖昧に零したものが幾ばくかでも和らいだと感じてから。思索の先にある言葉を訥々と零しながら、曇る眼鏡を外して膝掛けで拭う]
仮に僕がまじないをできるなら…
何と助言を頂けるんでしょうね。
― 小屋 ―
…僕は………
疑わしき者を排斥するより、少しでも…
信じる者の助けになりたいです。
[日差しの下で育った茶を飲んでから零す、同じ群れに属するか判じる事のない言葉は、トゥーリッキを疑う音を含めない。白蛇の名に対する言及には眼鏡をかけず滲んだ眼差しがお連れさんを暫く見て、機会があればと和らいだ声が添え置いた]
………
違うのに似ているのは面白いですね。
[助言について述べるトゥーリッキの言葉に耳を傾け、言葉の途切れるのを待ってから温められた呼気と共に零した感想。面持ちは少しだけ和らいで眼鏡をかけ直すけれど、揶揄する素振りがある訳もなくて]
僕は貴方が出来る方と仰れば同じ事を言います。
誰にも告げず在ればいいと想う。
僕の場合は助言ではなく懇願に近いでしょうか。
[自重せぬ声音が語る告白、手を伸ばし飲み干す茶は溜息と共に。問わぬ事を語られぬトゥーリッキの口元ではなく、鮮明な視界が見ていたのは―――…]
変わりませんよ、僕は。
………
[奪われたくないと願うものは、トゥーリッキの指に絡む自らの髪ではない。抱擁に応えずも拒まず離れゆく身に伸ばす手は、顎のラインから白蛇の巻く首筋をたどる]
差し上げるはきっと、奪われるには足らないから。
貴方に奪わせてしまわないといいと…
杞憂かも知れませんが、そんな事を想います。
たぶん…性格、悪いんです僕。
[持て成し湯を足して足止めした客人へ、僅かに含めた囁きは確信犯たる。キィキィキィキィ―――去るトゥーリッキを見送るため、扉まで車椅子で添う間に零した囁き]
温かく過ごして下さい。
[向ける先は去る人物か首もとの蛇か、曖昧に。去りゆく背の失せてからも冷気が入り込むのも厭わず、暫し保と靡く紅いカーテンを見上げて]
― 小屋前 ―
…………
[トゥーリッキと過ごす時から得たものを、本人に語らず胸裡に仕舞うまま。温まった小屋から熱の逃げていくのも厭わず、閉めぬ扉を背に狼の遠吠えを聴いていた]
ないてる…
[思索の零れる如き呟きは確認めかず、冷えた大気を白く染める事もない。紅いオーロラへ彩られた夜へ顔を向け、既に一度は曇り冷え切った眼鏡の奥の眼差しを細める]
…わらえないな。
………
[緩く首を振る動きに連動して項垂れると、足元へ落とす視線。膝掛けから覗く足先の向こうには、今は溶ける事のない雪と氷に覆われた地面―――車椅子の車輪の跡とトゥーリッキの足跡が残っていた]
ふたり…―――
[長老のテントからの道のりを眼差しだけが逆になぞり、その先にひとりきり捧げられた供犠の娘の口元を想い細める。キィキィキィキィ…―――小屋へ引き返し扉を閉めても、止まぬ狼の遠吠えは*聴こえた*]
― 小屋 ―
[カタカタカタ…―――木の根をすり潰す作業に、一本だけ脚の短い机が立てる音。出来た物を移し変えて、似たような容器の横に並べる]
………
ドロテア…
[供犠の娘が今ごろ何を想い何をしているかは知らずも、彼女と引き換えに与えられた時間は過ぎていく。躊躇いがちに手を伸ばす容器は薄く埃を被り、長い間触れられていなかったもの。
中にあるものを自らに言い聞かせるように容器をなぞるだけで、前髪の奥で眉根が寄る。蓋を開ける事もなく手を離すと、容器には手指の跡が残った]
…………
[やまぬ遠吠えと焔の燃える音に混じり、足音が近づいてくるのに扉に顔を向ける。テントでの発言から誰か来るかもと意識していなければ、遠吠えにまぎれて聞き逃していたかも知れない。
かけられる声もなく扉を叩く音もないのに、トゥーリッキとマティアスの会話を思い出しもする。中の様子を伺っているのかと、扉を見る間]
開いてます。
宜しければどうぞお入り下さい。
………そうかも知れません。
[扉の向こうから届く声を聴けば、先に思い出していた人物。けれど寒い外に立っていた理由を疑うでもなく、なんと挨拶するべきか同じく思案して結局は同意だけ示した]
ひとりです。
道中ですれ違われなかったなら…
テントに戻られたのでもないのでしょうね。
温かいお茶を煎れますから。
火の傍へどうぞ。
[見るからに寒そうな装いのマティアスに火の傍を勧めても、殊更に手を引き助ける事はせず。キィキィキィキィ―――来訪者を迎えるべく、茶を煎れながら誰とは語らずもトゥーリッキの事も添えておく]
…そうですか。
[話題に上るトゥーリッキの時と違い火もあり、先に沸かしたばかりの湯はまだ温かかったから茶の出るまでの時間も短い。キィキィキィ…―――車椅子は壁際のマティアスに近づき、口を開こうとしたところで先に言葉をかけられた]
何でしょう。
僕に答えられる事でしたら。
…お茶です。
[断ってからカップを渡そうと盲目の彼の手を取ると、外気に冷やされ少なくとも表面はつめたい。温める役割は茶に任せ、彼の手にカップを収めて手を放した]
…………
[キィ…―――マティアスが言葉を続けるより先に茶を啜るなら、急かす素振りもなく車椅子を少しだけ引く。トゥーリッキの分と一緒に煎れた自らの分の茶は冷めていたから、眼鏡の曇る事はなかった]
………そうですね。
僕は皆さんにそうお訊ねしました。
[到着前の事まではわからずも、周囲の反応からはその話題が出ていた印象は受けなかった。低い声の紡ぐ確認めく問いに、肯定を返すのは折と同じく静かな口調]
どうしてですか?
[目の見えぬ彼に対して声で応えず、沈黙に瞬きだけ添えたのは、意識の半ばを問われた内容に対する思索に向けていたから。冷めた茶を啜る間も、彼を見ていた]
…ありがとうございます。
[開いた口から最初に零れたのは謝辞。カップを机に置くのは見えずも、カタと言う机の揺れる音は彼にも聴こえただろう]
ひとつには、皆さんの反応を確かめさせて貰いました。
もうひとつには、叶うなら―――…僕が代わろうと…
結局のところ叶いませんでしたが。
でも叶わず安心したのも確かなんです。
ひどい話です。
…………
[謝辞に籠められる意は互いに口にはせず、受け取るのは目礼だから彼には見えないのだけれど。見上げるマティアスの耳元で、トゥーリッキの呼ばわる49のプレートが揺れるのに、眼鏡の奥で眼差しを細めた]
―――…
そうなのかも知れません。
[…残酷です、と零す声音は独り言めき、マティアスや群れの者たちを詰る響きはない。曇りもせぬ眼鏡をはずしつるの端に歯を立てながら、滲む視界に彼を捉える]
…僕からもひとつお訊ねしていいですか?
お茶は寒い中で足を運んで下さった分です。
―――…、………
[マティアスの気遣いには幾らか穏やかな声を返すも、肯定を示す頷きと視線こそなくも向けられる顔に、問うと言った割りに長い沈黙。問う内容は定まれど言葉を探す間を置き、眼鏡をかけ直し瞬いた]
差し支えなければ…
その数字の意味を。
[長い沈黙を急かさずも無理に問う気はないから、口を開きかけたところで低い声。語られる間はマティアスの顔ではなく、耳元で揺れる飾りを見ていた。
浮かぶ疑問もあれど問いはひとつと先に断ったからか、告白を添えてくれた彼に更に問う事はしない。彼が語り終えてもすぐには言葉を返さず、眼差しを細め小さな告白を裡に反芻する]
…お呼びする名、今は変更せずおかせて下さい。
お訊ねしておいてすみません。
[マティアスの両耳にかかる重さを想えど、語らずに仕舞い置く。キィキィキィ…――謝辞は紡がず、彼の手の中のカップへ注ぎ足す温かい茶に籠めた。
視線の交わる事はなくも、交わす言葉があれば訥々と語る声。彼が小屋を出る折にはアルマウェルはまだテントにいたか問い、薄着の彼へ膝掛けを*差し出すだろう*]
そうですか…
ありがとうございます。
…………
あの方宛に言伝を届けて頂くのも面白いですかね。
いえ、折には自分で出向きます。
[少なくとも自分がテントを出てからのアルマウェルの所在を知り、思案するらしきは声音にも滲んだか。マティアスがこれから向かう先もわからぬし行く先を問う事はせず、冗談めかぬ口調で嘯いた]
マティアスが少しでも和らいで下されば幸いです。
[名に対する彼の言葉に対する応えを遅ればせながら添える態で、あまり呼ばわらぬ他者の名を紡ぐ。膝掛けを渡した彼を見送る折に向けた眼鏡の奥の眼差しは、謝罪を容れられなかった時と同じように細まり、似た穏やかさを浮かべた]
…………
[キィキィキィ…―――マティアスの去ってから、アルマウェルの報せを受けた後と同じように、暫くの間は焔を見ていた。静かなはずの小屋にも狼の遠吠えは届き、時の流れと共にじりじりと募る焦燥感を冷え切った茶で飲み下した]
………信じられるのは…―――
[キィ…キィキィキィ―――呟きは掠れ、車椅子に座す求道者は来訪者を待つ時を休み扉を開ける。膝掛けの無い分だけ余計に冷気が刺さるけれど、曇る眼鏡をはずさず袖口で拭い、再び不吉な紅いオーロラの靡く夜に出た]
あれは…
[キィキィキィキィ…―――二本の跡を残しながら進む先に、遠く列なす明かりの揺らめきを見る。列が何を意味するものか悟るのに暇はいらず、前髪の奥で眉を顰め口元を引き結んだ]
………どうして…―――
[キィキィキィ…―――誰の何に対してか、掠れた声が車椅子の音に重なる。車輪を操る手が震え、道行の途中で車椅子は止まった]
[キィキィキィキィ…―――目的地たる長老のテントが見える頃には、列は遠のいていた。表に不吉なカーテンとも似る紅いアルマウェルの姿を見て、言葉はかけず注意を向けられれば目礼だけ置き近くまで寄り、遠ざかる列へと顔を向ける]
…いかないんですか?
…そうですね。
[視線を感じて顔で無く視線だけを向けると、アルマウェルの瞳に浮かぶ憂いの色。瞬きに交わす眼差しは途切れ、列を見たまま眼鏡の奥で眼差しを細めた]
見つけないと…
出来る事…
あるとすれば見届ける事くらいでしょうか。
[アルマウェルに語られぬものを車椅子に座す求道者もまた紡ぎはせず、考えだけを言葉にする。言う割りに見届けに向かう素振りはなく、冷えた手に息を吹きかけた]
血を以て血を…―――
[向けられる顔にアルマウェルに顔を向け、空を仰ぐ彼の横顔を見上げる。確信か仮定か定まらぬアルマウェルの言葉をなぞり、彼とは逆に項垂れるように俯いた]
…………
貴方の仰る 苦痛 が何を指すのか。
僕にはわからないですけど…
見据える先が違わぬ事を願います。
[寒さに身体の先端が痛み出すころ今度はアルマウェルに顔を向け、彼の顔を見上げる。眉の下がるのは前髪に隠れども、面持ちまでは隠せない]
…どんなかたちにせよ跡は残るでしょう。
もうドロテアは…―――
[紅い空を見上げてから、捧げられる供犠の娘の向かった先に顔を向け、俯き瞬きよりは長く瞼をおろす間。首を振るアルマウェルの気配に顔を再びあげて、噤まれた言葉の先を想い眼差しを細めた]
僕には何が正しいのかもわかりません。
それでも奪わせてしまいたくはないと想います。
[周囲を見回す視線は人の無いのを確かめ、アルマウェルに向き直る。悴む手が眼鏡をずらし、滲む視界に彼を捉えてからかけ直す]
…方策は見つかりましたか?
仮定の話ではありましたけど…
まじないが出来るなら密かにことを進めろと。
そんなありがたい助言を頂きました。
僕もそう思います。
[自らの事に言及しないアルマウェルに問わず、待てど得れるとは限らぬとは言外にも訥々と語る。待機に甘んじる彼を詰る様子はなく、むしろ動かずある事を想うらしき口振り]
…差し支えなければ変調の折にはまたお願いします。
[長老からの報せを運んでくれた彼へ労いのひとつもかけれなかったからか、軋みそうなぎこちなさで小さく頭をさげる。テントまで出向いたアルマウェルへの用件が済むと、また列の去った方を見て眼差しを細めた]
…………
彼女のくれる時が終わってしまったら…―――
[血を以て血を…―――アルマウェルの言葉が過ぎり、言葉を切り前髪に隠れる眉を顰める。彼の吐息の白が解けるのを見届けども、彼の役目を想えば面持ちの和らぐ事はない]
よろしくお願いします。
本当はもうひとつお願いがあったんですが…
申し訳ないので他の方策を考えます。
報せに走られる道中どうかお気をつけて。
―――…、………
[供犠の娘が雪にうずもれ立ち上がるところなのは知らずも、芯から冷え始めた身に膝の上で震える手を握る。アルマウェルの視線と続く言葉に顔を上げると、口を開かず彼を暫くは見ていた]
…貴方のお言葉に甘えさせて頂きます。
まじないに関わる報せに走る折。
出来るだけ早く僕に届けてもらいたいのです。
残りは折にまたお話させて下さい。
[意図も説明も先送りにした願いに、中途半端ですみませんと添える。キィ…―――悴む手を擦り合わせ車椅子が音を立てると、労いに頷いたアルマウェルへ場を辞すべく目礼]
[キィキィキィキィ…―――冷たく溶けない雪の上を進む音が、狼の遠吠えに重なる。ビャルネの小屋を訪ねる道中にまだウルスラとトゥーリッキの姿やすれ違う者があったなら、目礼を添えて通り過ぎただろう。
目指す先には明かりが灯っているから、ビャルネは中にあるのだろうと知る。キィキィキ…扉の前で止まる音に、彼も気づいたかも知れない]
…レイヨです。
少しお時間を頂けませんか。
[マディアスが扉の前で思案した挨拶は置かず、外から声をかけて扉を見る。冷えた手に息を吹きかけて、中から声の返るのを待つ]
[じゃらり、ビシャルの引き連れる覚えある音が室内より聴こえ、開かれる扉に彼を見上げて目礼。促されるのに遠のいた明かりの列を振り返り、礼を籠めた頷きを置いて室内へ]
他にも冷えた方がいらしたんですか。
[多くの者が列を見送り外へ出ているのも見かけたから、まさか寒そうだった人物が雪の天使を作っていたとは思わない。室内を見回す間に曇る眼鏡をはずし、袖口で拭いながら滲む視界にビシャルを捉えた]
お訊ねしたい事があってお邪魔しました。
雪まみれですか…それは寒そうです。
[キィキィキィ…―――促されるまま火の傍へと寄り、再び曇らぬように眼鏡を温める。本を読めぬ文盲の求道者はつるに歯を立てず眼鏡をかけ直して、本に囲まれて暮らす書士を見た]
貴方は僕の知らない事も多くご存知でしょうから。
書に限らず役立つ知識をお持ちではないかと。
[悴む手を握り感覚を確かめてから、礼を籠めて頷き茶を受け取る。冷えた足の上に組む両手で包み、茶の味より先に温もりを味わう様子]
…………
知りたいのは貴方ご自身の事です。
[供犠の娘の代わりを問うた折に、言葉でないもので語った相手へかける問い。おろされる腰に視線もおりて、近づいた分だけ互いの顔も見えやすいか]
…いかしたい者はおありですか?
[薪の爆ぜる音が聴こえど互いに口を開かぬ間は、身じろがずただ黙して。向けられる視線はそらさず、容れずも厭わぬ態]
…………
僕は性別で判断はしないので参考になりました。
[言い切られる言葉にはゆっくりと瞬き、一呼吸を置く。カップへ視線を落とすも口はつけずに、茶が思案に揺れた]
村とご自身ならどちらをとは問わずにおかせて下さい。
ありがとうございました。
…………
僕は彼女を生かしたかったです。
…―――嫌いなので。
[過去形で語る相手はひとりしかなく、名を出さずも供犠の娘と知れるだろう。訥々とした語り口で添える理由は、決してそれらしくはなくも嘘も冗談も含まぬ響き]
ご馳走様でした。
おかげで幾らか温まりました。
[キィ…―――カップを渡せば車椅子が音を立て、非礼を詫びるよりは口をつけず味わったものを伝える。芯まで冷え切った身は温まりきらずも、招かれたおかげで随分と感覚を取り戻していた]
納得は頂けずとも詮無いですが…
「なし」と言われると困りそうですね。
[冗談めかぬ訥々とした口調で嘯き、さがる眉は前髪に隠れる。普段から杖を手にするビャルネが立つのを制するより先に、扉へ向かわれるのには更に下がる眉は前髪に隠れても、面持ちまでは隠せない]
…………
貴方まで凍えてしまわない事を願います。
[開かれる扉に流れ込む冷気、刺す冷たさに眼鏡の奥で眼差しを細める。キィキィキィキィ…―――扉を開いてくれたビャルネへ目礼を置き、車椅子の音は彼の宅から遠のいていく]
女王は美しくも時に残酷ですからね。
[夜に靡く紅いカーテンは女王の纏う衣にも見え、別れ際にビャルネへ嘯いた。キィキィキ…―――彼と別れて少し、狼の声がやむのに車椅子の音も止まる]
…………
[ひとりだけ人数を減らし戻り来る者のあるであろう祭壇の方ではなく、紅いオーロラの靡く空を見上げる。白く曇る眼鏡に眼差しを細めるも今ははずす事はなく、冷たい女王へ零す白い溜息は*解けた*]
[1] [2] [3] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了