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──すみません、一皿下さい。
おいくらですか?
[福引き屋に背を向けると、目に入ったのは、筋向かいのたこ焼きの夜店。]
あははっ、五百万円ですね。
[しれっと「五百万円だよ」という小母さんの言い種に、思わず笑ってしまう。]
はい、どうも。
──あれ。
[高価な(?)たこ焼きを受け取って、向きを変える。
いか焼き屋とお面売りの間に、いかにも福々しい顔をした福引き屋の姿はなかった。**]
[婦人会の仕事といえば、地味な雑用で。手の空いた時間はそれぞれ思い思いに、といっても大抵他愛のない世間話や噂話]
へえ。
[適当な相槌を打ちながら、持ち寄った屋台の品をつまむ。昨今は見たこともないような異国の品も増えていた]
さっき、イカがすごく美味しそうに見えて。
ほら、福引屋さんが…福引屋さん、ありましたよね?
[首を傾げる姿を笑われて、苦笑を返した]
入れたいものが、見つかるといい。
[そう添えてくるりと後ろを向いた。
おとなげなく、もういっかい、と
粘るらしき作家の声は、たこ焼きに
気をとられた若者も背で聞いたろう*。]
[『──ふむ、そろそろかな?』
作家も、若者の気に止まったのと
同じ福引屋のつぶやきを耳にした。
シツジノ学習帳17冊セットが
当たったのはそのすぐあとで、]
[作家が同じ界隈を通りがかったとき、
いか焼き屋とお面売りの間の屋台が
別人が営む"ヨーヨー釣り"に
なっているのへ気がつくのは…更にあと。]
「入れたいものが、見つかるといい」、か。
[手にしたものが冷めぬうちに、と出店の並びの途切れた一角、石灯籠の下に腰をかける。
膝の上には、履いたGパンより少しだけ濃い色をしたデニム地の筆入れ
─作家に“半分こ”してもらった鉛筆が入っている─を乗せて。]
……熱っ
あげるつもりが逆にもらっちゃったなぁ。
[残りのたこ焼きを急いで食べ終わると、ウエストバッグから、折り畳まれた紙を取り出した。]
暗いな。
[立ち上がると、灯籠の並ぶ方へ歩く─途中にゴミ箱があったのは幸いだった─。
明かりの下、紙を開くと、]
──いか焼き屋さん、福引き屋さん、お面屋さん。
[その紙は写真のコピーらしく、図の遠景には出店が三軒並んでいる。
テントの屋根には、なにを取り扱っているかが太い文字で記されていた。]
──あれ、福引き屋さんは……?
[先ほど、くじを引いた一角に戻った時、いか焼き屋とお面屋の間にあったのは、ヨーヨー釣りの店だった。**]
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