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−鳥居前−
[神社から離れ、腕に括られた鈴を鳴らしながら境内を歩く。
去年、また2人の男性が行方不明となった。
次は自分ではないか?と考え怯える者も少なくないだろう。その不安を隠すように、忘れるように今年も祭りの準備は忙しく行われている。
鳥居を潜れば、先まで感じなかった視線>>1。そういえば彼は、杏奈の親族だったか。
そう考えながら何もないかのように、首を傾げてみせた。
……霊力のある彼ならば、双季を纏うように飛んでいる黒い蝶にも、気付くかもしれない。それは普通の人には、見えないものだ。見える可能性があるのは、霊力のある者かそれに関わる者だけ。]
……此処におって、此処におらんから。
[走る子供の腕はするり、と双季をすり抜けた。]
だけど、せやなぁ……
うちも、蝶やなくて、ちゃんと……
人に届く声で鳴くことができるのなら。
……違ったんかもしれんな。
[風に揺れるスカートから舞うは鱗粉。
それは近くにいるのなら、ヘイケにも見えただろうか。]
[彼らに背を向け、蝶と共に歩き出す。
声がかかっても、足を止めることはなかっただろう。
鳥居を潜り、神社の裏へ。その先へ。
遂には崖のあるほうへと、鈴を鳴らしながら。
崖に腰をおろし、遠くを見る。
風が吹く度に鱗粉は舞い、それはまた何かを誘うように、風に乗って流れていく。
鈴がちりん、とか細くないた。]
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