189 あおいろ幻歌
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学生 ハツネは、メモを貼った。(内容)[メモ/履歴]
2016/07/18(月) 00:43:49
(>>0:53続き)
[幻覚を見たのだという結論は簡単にやってきたが、
初音はヴァイオリンケースと学生鞄を持ち直し、通学路に立つ。
むっとした熱気に包まれながら迷い、考え、
やがて、足を海のほうへ向けた。
海の見える丘の上には灯台と展望台があり、ベンチがある。>>0:30
幻覚に何かを告げられたような気がして、
このまま帰宅する気にはなれなかった。*]
(1) 2016/07/18(月) 00:45:44
[展望台へ向かう途中、川べりの児童公園の脇を通っただろうか。
顔見知りに出会えば挨拶や、短く立ち話をしたかもしれない。
美容室の前を通りかかれば、
並んだ鉢植えの朝顔の花に少し目を留めたかもしれない。
今はすっかり萎れてしまっていたにしても。
初音は丘を目指し、坂道を上がっていく。
異変が起きたのは、ベンチに座った人影と、
その膝の上で丸くなった猫>>0:30、>>0:31が見えるころか。
時計の鐘の音が13回。>>#1
そして、歌声。]
(2) 2016/07/18(月) 01:13:24
[どこから聞こえてくるのかと、首を巡らせたその、
瞬間。
周囲に濃いあおいろが迫ってきた。>>#1
まるで、波のように。
また幻覚かと固まっていると、
いつ現れたのか、目の前には直立した兎がいて。>>#2
早口で並べられた『鍵』、『螺子』、
「探してる」、「手を貸してほしい」、「君らも帰れないかも」
という単語に驚く暇もなく、
兎は「よくわかんないや!」と言い残して去ろうとする。]
ちょ、と、待って……
[初音は追いかけようと手を伸ばす。
が、大きく宙を跳ねた兎は、もうどこにも見えない。]
(3) 2016/07/18(月) 01:24:51
学生 ハツネが接続メモを更新しました。(07/18 01:49)
[兎を見失った初音は、ヴァイオリンケースを胸の前で抱え直し、
きょろきょろと周囲を見渡す。
展望台へ向かう遊歩道は町より高くなっているので、
景色がよく見えた。
とはいえ、初音は滅多にここへ来ない。
町のようすが変わっているのか、それとも元のままなのか、]
……わか、らない……
[海辺の町なのは同じだし、目立つ建物がないところも同じ。
だが……
故郷ではなく、
高校生活のために越してきただけの初音は、
町に興味がなかった。]
(15) 2016/07/18(月) 14:12:21[丘の中腹?]
[ヴァイオリンの恩師が隠棲するまで、名前すら知らなかった町なのだ。
そのことに改めて気づくと、初音は酷く不安に襲われた。
青い波。
校門前で、そしてついさっき見たあの波が幻覚ならば、]
兎も……?
[考えながら、遊歩道の片側の手すりにすがろうとして、
初音は立ち竦む。
ついさっきまで、あちこちでペンキの禿げた手すりは古かった。
それが新しくなっている。]
嘘……
[ヴァイオリンケースと学生鞄をぎゅっと抱きしめると、
初音は後ずさった。]
(16) 2016/07/18(月) 14:16:14[丘の中腹?]
[展望台のほうへ視線を向ける。
ベンチに座った人影と、その膝の上で丸くなった猫が
いた>>2ことを思い出して。
そののんびりとした姿は、遠目にも初音を安心させるものだったから。
人影は年配の男性のようだった。
ベンチから立ち上がり、足元を見つめて歩き回っている。
まるで、何かを探しているように。>>7
猫はその傍らの地面に座り、尾を振っている。>>6
初音は彼らに声をかけようと、
坂になった遊歩道を上がり切り、展望台に足を踏み入れた。]
(17) 2016/07/18(月) 14:39:20[丘の中腹?]
学生 ハツネが接続メモを更新しました。(07/18 14:40)
[異常に気づいた。
植え込みの緑に色とりどりの花が混じっている。>>6
朝顔だ。>>#3]
……そんな、
だって、さっきまでは……?
[助けを求めて近づいた場所に罠が張られていたような感覚。
それとも、これも幻覚なのだろうか?
灯台の影は短く、濃いように思える。
初音は何かを探しているらしい老人と、
彼の足元の猫を交互に見やり、逡巡した。
この場から逃げ出すべきか、それとも声をかけるべきか、と。
不思議な歌声は続いている。>>#1]
(18) 2016/07/18(月) 14:56:37[展望台]
[今も続く歌声はどこから聞こえてくるのか。
近いようでもあり、遠いようでもあり。>>#3
しばらく耳を澄ましていた初音は、
この歌声こそが不安をかきたてるのではないかと思った。
ときおり不協和音の混じったメロディは、高く、低く。
聞く者を落ちつかない気分にさせる。
あのアブラゼミの合唱のごとく、
不愉快で、不規則な音の羅列に歌声を付けたかのよう。
ヴァイオリンケースと学生鞄を片手に提げ直し、
初音はおそるおそる老人>>7と猫>>6に近づいた。]
あのう……
何か探し物ですか?
[背中を向けていたのは、初めて見る顔だったろうか。
それとも、どこかで出会ったことのある相手か?**]
(19) 2016/07/18(月) 15:15:11[展望台]
学生 ハツネが接続メモを更新しました。(07/18 15:17)
[猫が先に反応した。
近づく初音を値踏みするかのような姿勢になる。>>26
白黒のブチ猫だと思っていたが、後ろ肢と尻尾の一部の毛が茶色い。
三毛猫のようだった。
飼い主のほうはもっとのんびりした反応で。
曲げていた腰をゆっくり伸ばして初音に向き直ると、
「おんや、あそこの高校の子かね」>>26
制服で見分けられたらしい。
ほっとした初音は何度も頷いた。]
はい…!
ご存じなんですね、よかった……
(28) 2016/07/18(月) 17:47:58[展望台]
[「兎に探しものを頼まれたもんでの」>>27という老人の言葉に、
初音は驚く。]
じゃあ、あの兎は……
[幻覚じゃなかったんだ、と言いかけて飲み込んだ。]
おじいさんもご覧になったんですね。
わたしも同じです。
でも、『鍵』と『螺子』>>#2って?
それに、見つからないと、ここが海に沈んじゃうって……
どういうことでしょう。
あの兎…人形には見えなかったけれど…
何かの仕掛け?
なぜわたしたちに?
(29) 2016/07/18(月) 18:02:11[展望台]
[相手の柔和な笑顔>>27にいくぶん安心しながら、
初音は質問を続けた。]
……音楽が聞こえませんか?
さっきは鐘の音もしました。
[猫は警戒を解いたのか、傍らで「なぁう」と鳴く。>>27
ふと初音は灯台を見る。
真っ白な壁面>>0:30に小さな違和感をおぼえた。
いつだったか、役所か公民館で説明パネルを見た気がする。
町のシンボル的な建物で、長年潮風にさらされて傷みが激しいと。
補修工事のため一般からも募金を集めている、と……。
目の前の灯台は、何十年も前の建物とは到底思えないほど、
新しく>>5、誇らしげに佇んでいるように見えた。**]
(30) 2016/07/18(月) 18:25:37[展望台]
学生 ハツネは、メモを貼った。(内容)[メモ/履歴]
2016/07/18(月) 18:27:28
─ 展望台 ─
[年配者らしい、微笑みながらの穏やかな対応に、>>38
不安ではちきれそうだった初音の心も少し落ちついた。]
はい、青い……波のような青い色が迫ってきて、
それが消えたら、兎が。
[背筋を伸ばして立つ兎の姿は非現実的で、アニメか人形劇の登場人物のそれ。
「邪気は無かった」>>38と言われれば、そうかもしれないと思うけれども……。
「ここは「現実」ではないのかもしれんのぅ」>>38と、
おっとりした口調で紡がれる老人の言葉に、]
そうですね、
不思議……としか……
[初音は同意する。
白い灯台を見やりながら。]
(40) 2016/07/18(月) 21:31:51[展望台]
[音楽が聞こえていないという相手に、>>39
初音はふと気づいて、あっと小さく声を上げる。]
わたし、澤初音と言います。
3年生です。
[名乗って、一礼した。
人間同士のやりとりに退屈したのか、
傍らでゆらゆら尾を揺らしていた猫が動いた。
その場を離れ、とてとてと歩き始める。
特に何かを警戒しているふうではなかった。
初音はその小さな背中を、なぜか頼もしく感じて。
追いかけようと足を出した。**]
(41) 2016/07/18(月) 21:45:20[展望台]
学生 ハツネは、メモを貼った。(内容)[メモ/履歴]
2016/07/18(月) 21:47:20
学生 ハツネが接続メモを更新しました。(07/18 21:47)
[自己紹介を交わすと、初音にも微笑む余裕ができた。]
ウミさん、ですか。>>42
よろしくお願いします。
[猫の名前を教えられ、]
ミモリちゃん?
[呼ぶが、猫はそのまま、灯台の下にある海岸へ降りていくようす。>>43
追いかけようと数歩進めば、
ウミからは「気を付けてな」>>42と声だけかけられた。
どうやら、彼はこのまま展望台に留まるつもりらしい。
老人をひとりで残しておくのも気になるが、
初音はもう1度軽く頭を下げると、歩き出した猫を追いかけた。
海岸へつながる道は下り坂と急な階段で、
ウミの足には負担なのかもしれないと思い直して。**]
(46) 2016/07/18(月) 22:27:45[展望台]
学生 ハツネは、メモを貼った。(内容)[メモ/履歴]
2016/07/18(月) 22:29:47
─ 展望台→海岸 ─
[灯台の裏手からつながる海岸への道は、
下り坂と幅の狭い急な階段につながっていた。
むきだしの鉄棒のような手すりが付けられているけれども、
喜んで通るのは猫か、やんちゃな小学生男子くらいと思われ、
初音はウミが来なかった理由を察した。
ヴァイオリンケースを片腕でしっかり抱え、
もう片方の手で手すりと学生鞄を握りしめながら、
初音は慎重に海岸へ降りた。
潮風が気持ちいい。
大きく息を吸い込みながら、今来た道を見上げる。
周囲の繁みからは朝顔の花と蔓が、
まるで何かをつかもうとするかのように伸びていた。]
(48) 2016/07/18(月) 23:04:48[展望台→海岸]
─ 海岸 ─
[波音のせいか、歌声>>#3はもう聞こえなかった。
尻尾をぴんと立てた猫は、
コンクリートの防波堤の上をすたすたと歩いていく。>>51
猫の斜め後ろを歩きながら、初音は思う。
この海岸を歩いたことはあっただろうか、と。
チェックしたスマホの表示は意味をなさず。>>49
ウミが語ったように、ここは過去の世界>>38なのかもしれない。
どういう理由でかはわからないが、
あの兎>>#2に呼ばれたような気がしていた。
探しものを手伝わせるために。]
でも、何を……?
[考え込む初音の足はいつしか止まっていた。]
(55) 2016/07/19(火) 00:00:06[海岸]
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