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[まどろみから覚めた拍子に、制服のスカートから伸びている足がぴくりと動いた]
ここどこ……?
[寝返りをうって見上げた空は、いつか見た母親の喪服を思い出させた]
にぶいろ。
[相手の嗚咽に乗り、伝わる事実。
其れが頭をぐらぐらと揺らし、携帯を落としそうになる。]
……あ、…あの…ぇ…ぅ……
[口から漏れるのは、子供の言い訳の様な。
しどろもどろの、言葉とは呼べない、音。]
……。
[ミナツの声。叫びの様な其れを黙って聞き、]
……ごめん、あたし…
ごめん、なさい……
[反射的に、ぽろりと言葉が口をつく]
[電話の向こうで何かを言おうとしている彼女の声。
何を言おうとしてるのかわからない。
それでも泣き続けていれば、紡がれる謝罪の言葉。]
……ごめん……って…?
[彼女が何故謝るのかわからず、嗚咽を漏らしながらも尋ねる。]
[問われ、何も返せず、固まった]
ごめん、、本当に、ごめ
[応えるべき言葉が、うまく、出ない]
私、その…メールに…
[声は聞き取れないほどに、小さく]
[メールという言葉にはたりと思い当たる。彼女はきっとジュンタの名前を綴ったのだと。
口から責める言葉を紡ぎそうになる。
でも、自分も同じように違う人の名をメールに綴った。責められない…。
自分と同じようにこの人も言われた事をした。その結果。そう思えば責められなくて]
ごめん…な…さい…。
また…連絡します。
[そう言って彼女の返事を待つ事なくぷつりと通話を切る。
これ以上、彼女の声を聞いていれば責めてしまいそうだからそうすることしかできなかった。**]
[此方の言い訳の様な其れに、返る後輩の声。
それは、強く責める声ではなかったけれど。
…どんな言葉よりも、強く心を締め付けて]
――、あ、
[待って、とも云えず。
やがて声も何もしない、無機質な音が]
<ぷーっ、ぷーっ、ぷーっ……>
[鳴り響き、ミナツの声の代わり、となり]
――。
[それをただ、受け入れるように、
携帯を耳につけて、微動だにしない。]
馬鹿だな………俺が望んだ結果なのに。
[二人の電話を聞きつつ、ふわり漂う。]
………イマリんとこ、いってみるかな………
[彼女に想いを馳せれば、俺は彼女の元へと]
―コンビニ―
[そこにいるのは、ズイハラさんとイマリ。どうやら二人共無事らしい。俺は安堵した。ズイハラさんに一礼して]
おーいイマリ、元気かぁ?
なーに泣いちゃってるわけ?
馬鹿だなぁお前、何泣いちゃってるわけ?
[言葉はきっと届かないけれど。それでも]
馬鹿だなぁお前。寂しいんかよ?
ズイハラさん、困ってんぞ?
寂しい時は電話しろって言ったべ?
寂しい時は、遊びに来てやるって言ったべ?
ほら、来てやったぞ?ありがたく思えよな
[電話中のイマリを黙って待ち、漏れ聞こえる会話に目を伏せた。]
…イマリちゃん。
[結局何も言えず、幼子にするようにお団子頭をそっとなでてみる。]
[やがて、その音も止んでしまう。
自動的に携帯が状態をOFFにしたようだった。
完全に、あちらとは途切れてしまった。]
――。
[それでも携帯を握り締め。
まるで、向こうからの声を聞いている様に。
一つだけ、ゆるゆると首を縦に振ると]
――、
[静かに、頬を一筋の涙が流れた]
[頭を撫でられても、暫くは気付けない様に。
ただ、すぅ、と零れる涙に、
瞳は遠くを見つめて、いた。]
――、あ
[だが、不意に、お団子に触れる手に気付けば、
素っ頓狂な声と共にそちらへ視線を上げ]
…ズイハラ、さ
[涙声と共に。ぐしゃ、と顔を、歪めた]
よしよし、ズイハラさんに面倒かけんなよな。
………お前のせいじゃないから。
ズイハラさんに、思い出をやってくれ。
せめて、幸せな思い出を。
[ふっと二人から離れて、様子を眺めている]
[ただ、頷いて。
泣きそうな肩をワイシャツの腕が包む。
すがりつかれる事も構わないと。]
[されどその身のぬくもりは、既に淡く薄い。]
がんばれーズイハラさーん!
[スナック菓子を食べながら観戦しようとした。しかし食べられなかった。それ以前に袋すら開けられなかった。]
[何も、見えていなかった。
見て居たのは、居なくなった人の気持ち、だけ。
何処か、居なくなった母に罪悪感があったのか。
…一番大切な残されたものの気持ちを…。
今になり、身に染みて痛感する。]
――、ズイ、は
[彼に包まれれば、強く、縋りついた。
側に誰も居なければ。こうする相手が居なければ。
ひょっとすると、一人、
発狂じみた状態になったかもしれない。]
ずい、っ…
[しかし、其の身に触れ。止まる。
呼んだ名が、途中で凍り。喉の奥へと、還る。]
――、…?
[恐る恐ると言う具合に顔をゆっくりあげ。
すがりついている、彼の顔を。]
…ズイハラさん、なん、で
[涙目のまま、見上げる。]
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