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俺だって、美夏ちゃんのおかげで助かったよ。
さっきアンに会った時なんか………
いや、これは関係ないの話かな。
[軽くふるふると首を振って]
味の保証?んなもんいらねーよー。
女の子の手料理は、味とか二の次。
作ってくれたって事実が大切なのさ?
[あはは、と笑って]
そうだな………食材調達がてら、外に行ってみる?
それとも、二人きりの学校をもちっと満喫してみる?
そだな、学校デートはまたの機会にしますか。
[ひょいっと机から飛び降りて。]
さぁ、仲間探しの冒険へ出発しますか?お姫様?
[くすり笑って、手を差し出した]
―外―
[降り積もる雪は世界を白銀に変えて。吐く息は白く、風は冷たく。白い雪のキャンバスには、二人の足跡のみが描かれていく。それでも繋いだ手は暖かかったから、俺は微笑んでいられたんだと思うんだ。]
さみぃー……息、白いぜー?
雪合戦かぁー。やる?二人しかいねーけど?
[ひょいっと積もった雪を拾って、片手で玉にする。握られた手に力がこもるのを感じたら、優しく握り返すんだ。]
消えないよ、俺は。消えたりしないさ。
まだまだ、美夏ちゃんと一緒にいたいからな?
[にこり、微笑んで]
そうそう、消えない消えない。
世界は二人の為にある……ってのは言い過ぎだけど。
少なくとも、数人の為だけの世界だってのは確かさ。
[美夏ちゃんが投げた雪玉を見つめて]
おー、万引きし放題だな?
アクセサリーとか服とかただじゃん?
[おどけてみせる]
イマリはいるだろうけど……
マシロとズイハラさんとアン。
いまんとこ、俺達以外にいたのはこれだけ?
二人きりにちけぇよなぁ。こんな広い街にこれだけじゃ。
違う世界………か。三途の川だったりして?
[怖そうに、お化けの真似をしてみて]
可愛いネックレスかぁー。
今度買いに行こうか?
クリスマスにプレゼントしてやるよー?
そそ、行方不明なのは俺達!
[あはは、と笑って]
さぁ、ちゃんとクリスマス来るのかな?
でも、来たら買ってやるよ。
博打で稼いだ金で悪いけどな?
[おどけてみせるが、足跡を見れば]
……行ってみる?
あはは、来なかったら来なかったでいいじゃん。
ずっと遊べそうだぜ、この世界で。
………冗談はいいとして、コンビニに行くかぁ。
誰もいなくても、食材調達はできるだろうし。
[そう言って、歩き出してみる]
あ、ああ………話しておいた方がいいかな………?
アンに会ったろう?
あいつ、もうすぐいなくなるって言ってた。
サヨナラだって言ってた。
俺が、サヨナラって言葉嫌いなの知ってて。
サヨナラって、言いやがったんだ。
[くすり、笑ってみせたつもりなんだけど。悲しそうな顔をしていたのかも知れなくて。]
えへへ………案外、そうかもしれねぇよ?
[冗談のように、誤魔化してみたけれど。]
みんな……忘れていくんだよな………
死んだ人の名前も、顔も、声も。
俺は覚えてる。ずっと覚えてる。
引きずって生きていくって意味じゃない。
出会えて良かったよって、ありがとって。
ずっとずっと、覚えてるんだ。
[わざとらしく、空を見上げて。今顔を見られるのは、はずかしいから。見られるかもしれないけれど。]
美夏ちゃんは……代わりとかじゃねぇから。
それだけは、本当だから。
あはは、許されないのは嫌だからな。
代わりになんてできませーん。
[手をひかれて、コンビニまでやって来て。その間に、涙はおさまったと思うから。二人で中に入ったなら]
あれ、ズイハラさん………と、子供………
まさか、隠し子!?
[物陰に二人で隠れて、しばらく観察していたが]
……美夏ちゃん、行こうか?
親子水入らずを邪魔しちゃ悪いし……
[誤解したままこそこそと、その場を立ち去った。]
あー、腹減ったなぁ。美夏ちゃん、飯ー!
[彼女はどんな表情をしていただろうか。それでも、繋いだ手は離さなかったと思うから。たまに無言になりながらも、俺か美夏ちゃんの家に移動したと思う。]
―家―
[簡単な料理を作ってくれるらしい美夏ちゃんはキッチンへ。俺は出来上がるまでリビングで待機していた。テレビをつけても何もやっていないし、ラジオをつけても雑音が流れるだけ。だから、あったCDを適当にかけてみた。]
お、この曲なつかしー。
こーとーしーさーいしょのーゆーきーのーはーなをー…
[流れてくる曲をそのまま口ずさみ、昇る雪を眺める。思い出されるのは、去年の事。ない勇気を振り絞って誘った、対して見たくもない映画。待ち合わせの時間を過ぎても、彼女は来なかった。昼過ぎに待ち合わせる約束をして、気がついた時には既に夜。駅前のベンチで座っていたら、不意に彼女の声が聞こえた気がしたんだ。その時も確か、雪が降っていた。携帯の着メロがメールの到来を知らせて、俺はそれを見た。あいつからの、最後のメールは一言。『サヨナラ』次の日、事故の事を聞いた。彼女が病院で息を引き取ったのは、メールの着信時間だった。]
[ぶんぶん首を振って、嫌な思い出を払拭する。とんとん、キッチンからは小気味いい音がする。そうだ、俺は今それどころではないのだ。何もなくても緊張するシチュエーションに俺は今いるのだ。現実逃避してちゃダメだ!]
やべぇ、誰もいないってやべぇ………
無駄にあがる………
[着メロが鳴る。ウィンターホールだ。]
まぁっしろなーとぉきぃーにぃー……ってね。
イマリの奴、寝てたのか?
[ぴこっと電話に出てみる。]
よーっす。お前、寝てたのか?
こらこら、馬鹿はねぇべ?
本当は寂しかったんじゃねぇのぉー?
[けらけら、明るく笑ってみて]
変な女って………アンか?長い黒髪の?
そうか、あいつを覚えてるのは俺だけか。
[少し寂しかったけれど、すぐにもちなおした。]
ん、多分間違いない。俺の名前、知ってたし。
[はぁ、と深いため息をついて]
今日、学校にもいた。少し話したけど。
やっぱりあいつはアンだよ。
………お化けなんて、信じたくもねーけど。
あぁ、聞いた。死者の願いがどーのだろ?
死者って誰だよ。アンじゃねぇ誰かか?
どうやって探すんだよ。わけわかんねぇっての。
[気を使わせているのがわかっているから、余計に悲しい。]
お前、今日誰かにあったか?
俺は今日、四人見たぜ。
マシロとズイハラさんと美夏ちゃん。
あと子供が一人。
[軽い言葉を紡いでみるものの、やはり少し寂しいから]
なぁ、もしお前の………いや、なんでもねぇ。
[言いたい言葉が言えない自分。成長してない。]
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