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[かっ こう。かっ こう。
歩行者信号が青になる。電停から歩道へ。
緩く歩を出す作家は、先刻を思い起こす。
――『 あれって本当なんですか? 』
灯籠貼りのご婦人がたのなか、語尾を上げる
そのひとは作家の目には少し垢抜けて見えた。]
[口々に呈されるうわさ話を
ひとしきり聴きおえたあと、
作家がそのひとへ言ったのはこうだ。]
――『 本当かどうか…
確かめてしまうのは、
野暮なたぐいのお話かもしれませんね。』
[そのひとは作家の目には少し垢抜けて見えた。
言い換えると、
野暮をするようには見えなかった。
問うた『本当』は口下手な取材者への
ささいな助け舟だったかもしれないが、]
お祭は明日かぁ。
灯りがともったら、また様子は変わるんだろうな。
[何かのコピーらしい紙切れを手に、鳥居の向こう側をキョロキョロと見回している。
昼間とは違ったTシャツにGパン。近くに寄れば、仄かに石鹸の香りがするかもしれない。]
[赤から濃紺に変わってゆく空の下、白く鳥居が浮かぶ。]
少し中を見てみよっかな。
[ポケットの中に、小銭があるのを確かめると、明日の祭の舞台に向かって歩き出した。]
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