バク君、どうしたんだい。
[部屋に戻らぬままのバクへ、警戒しながら近寄った。
ンガムラやアンとは違い、少年は殺人者の存在に気づいている。墓下部屋への誘導は使えない。
相手が武器を持っていないことだけ確かめて]
時間切れ……「突然死」だよ。
[言うや否や、ナイフを振るった]
!?
[手応えはあった、だが突然顔に浴びせられた液体に視界を塞がれる]
ちっ……!
[それがインクだと把握する前に、背中を突き刺す鋭い痛み]
な……ん……
[数歩よろけた後、おっさんは倒れ込んだ**]
[『夜』ターンの広間――]
俺が勝手なコトしなければ……杏ちゃんの言うように襲撃なしにして4人の最終日にしてればンガムラの兄ちゃんは助かってたはずなんだ……
勝手に襲撃の設定をしなければ―――
無関係なんかじゃねえ……関わっちまってる……刺し違えてでもなんとかしねえと……
[思考は冷静ではない。しかし、神経は研ぎ澄ます。
そして―――]
[人影は警戒しながらこちらに近づいてくる。]
……そういやおっさん、ナイフ持ってたな。
ペケレさんの忠告きちんと聞いとくべきだったなあ。「成人男性まで殺した人とどう戦うの」、か。
突然死だよなあ。
勝てる気……しねえけどっ……
[自分よりも大きな体格。そして手に握っているナイフは自分を狙ったものだとわかるだろう。
咄嗟にポケットに手を入れ――――]
―― 夜・自室 ――
[別荘の探索で服も頬もあちこち薄汚れている。
携帯電話を操作する手は少し震えていた]
勝ち負けとかどうでもいいと思ってた数時間前に帰りたいわ。
[奥歯を噛み締めて、『バク』を選ぶ]
[ナイフが振るわれるその瞬間、ゾウサクの顔にインクをぶちまけた]
……っつつつつ!!!!
[ナイフは見事に腹へと突き刺さっている。
が。想いの力、火事場のど根性は――]
杏ちゃんはきっと……もっと痛かったは……ず…だ!!!
[血をごぶりと滴らせながら自分の腹のナイフを抜く!
残る力を振り絞り―――インクで視界を塞がれているゾウサクへと]
……少しでも……刺されえええええええ!!
[自分の倒れる力だけを使い、その背中にナイフを突き立てようとする。
――しかしそこで意識は途切れた。
ナイフがどれ程まで刺さったのか、それともかすっただけなのかなどという事も、見届けることができないまま―――
掠れた声で、『杏ちゃん……』と最期につぶやいて*]
[少女は目を覚ます。
そこへ駆けてくるペケレに、寝ぼけたように声を掛けた。]
…おはよう。で、イマリは?
[確かおっさんに襲いかかろうとした途端、ぶちまけられたインクと瓶が目の前に飛んできて。記憶はそこで途切れていた。痛むおでこをなぜると生乾きのインクが顔に広がっていく。リアルタイムで無惨な姿になりながら、やがてイマリも姿をあらわしただろうか。幾つか言葉を交わすうちに、少女はようやく自分が人狼ゲームに参加していたことを理解するのだった。]
重大発表!!
[突然、右手を高く挙げて叫んだ。正座もしていたかもしれない]
人狼ゲームご苦労。
宴も酣ではあるが…これから宝探しゲームを開催する。
[そう宣って、
少女はおっさんの遺言(独り言)を説明するのだった。]
ゆえに警察を呼ぶ前に、まずネギヤを脅迫して、それから…**
[『宝探し』の単語に、しばらく唸っていたが、やっと言葉を思い出して手をぽんっと叩く]
たからっしゅ!
……って、おっちゃん!?
生贄って何…!?
[やっと気づいて駆け寄った*]
ダイイングメッセージとはおっさんも洒落たではないか。
だが、生け贄がかくもおっさんとは、私は寡聞にして聞かぬな。
[鍵を取り出すおっさんを片目に、
すたすたと倒れたバクの元に歩み寄って跪くと、
そのほおを、ぱしんと思い切りひっぱたいた。]
イサクは少年であるべきだろう?
…まあ、それはそれ。それはボンレスハムでもよいではないか。
日本史の…今にも歴史になりそうな教師が言っていた。
武士は腹切りをしてもそうは簡単に死ねないのだそうだ。
少年…。対価を得て帰ろうか。
[囁くような声。
やがて呻き声をあげた少年を見て、少女は微笑む。**]
[部屋に閉じこもる夜の時間が明ける。扉を開けると、ペケレが駆けていき、そして]
…違う。ケーサツ。
[部屋に戻る。携帯の電源を入れる]
もしもし…。
チカノン…?
[力の入らない足で、広間に向かうと目に入ったのは右手を高々と挙げた人物]
チカノーンっ…!
[遺体を飛び越え、喜びの突っ張り<26>連発]
……つーか……
[意識が少しずつはっきりとしてきた。
『痛い』が頭の大半を占めてはいるが、思考をめぐらせると……]
……ポケット、に、入るサイズの鞘入り、ナイフって……そんなに、刃、でかくねえじゃ、ん……?
[初日にナイフをカッコイイと思った記憶が蘇る。
自分の身に起きた事を把握していくと、不思議と冷静に思考が巡る。]
……ココに来たときのあの臭いが血の臭いってコトは多分、このナイフで……傷、そんな深くは、ねえ………?めちゃくちゃ痛え、けど……
杏ちゃん、と、背高の兄ちゃん……様子……を、動けるヒト、よく、見て……くれねえか……刺された場所、何処だ……
致命的な場所で、なけ、れば……
[見に行こうと体を動かそうとするが、意思通りにはなかなか体は動かず。時間をかけてやっと、上体だけ起き上がれただろう。]
杏ちゃん……!!!背高の兄ちゃん…!
[動けはしないがせめて声をと、今出せる限界の声で呼びかける。
杏を呼ぶ声のほうが明らかに大きいのは、気のせいではないはずだ。]
持ってきた。
ばっくんはとりあえずこれ飲んでみて。
[気になっていた薬包紙の中身を口を固定して流しいれて]
吐き出すんじゃないわよ。
はい、お水。
[コップを渡すと救急箱を開ける。[包丁][ブラジャー][ライター][ライター][刃渡り15センチの軍用ナイフ][血塗れたタオル][刃渡り15センチの両刃ナイフ]等々]
えーと…。
痛い。イマリ痛い…。
[23発くらいは耐えて見せたものの、
残りの数発は思わず身体がのけぞってしまう。手刀一発。]
だが痛みも生きていてこそとは、このことではないか。
[抱きしめ返そうとして手がインクまみれなのに気が付く。
イマリのほおをなぜるふりして、さりげなく無惨な姿にしてやった。]
[救急箱を展開するイマリに]
それホントに救急箱……?工具箱じゃなくて?
そこら、へんの……カーテンやら、クロスやらの布でも切って、包帯にすれば、いいんじゃね?刃物はライターの火で滅菌消毒してから、な……
[少し痛みが鈍くなってきたように感じるのは気合によるものなのだろうか、それともミルキー味の何かのせいだろうか。]
[鋭い痛みから鈍い痛みに変わり余裕が出てきたのか。
腹を押さえながらよろり、と立ち上がる。]
うわっと……
[ぐらんぐらんとしながら足を進める中、救急道具と称した道具箱に足をとられた]
とっ、とっ、とっ……おおおおっ!?
[バランスを大きく崩してふらつき、
倒れているンガムラの足に盛大に引っかかり
大きな音を立てて倒れた。
倒れた瞬間、手は杏の腕のあたりに強く当たって、その体を大きく揺らしたかもしれない。
倒れた衝撃で再び腹部が激痛。また立ち上がれなくなった。]
……うう……
[バクが倒れた衝撃か。
ほんのわずかに、そこから声が漏れる。]
こ、これって……
どういうこと……?
なんで、あたし……
のっぽ。
おまえもか。
おっさんは詰めが甘いな。
どれ。どこをやられたのだ。私に診せてみろ。
[その男もまた呻くような声を挙げた。
歩み寄ってのっぽの身体を跨ぎ、仁王立ちすると。
身体を屈めてその服をひんむきはじめた。]
イマリ くん ぶじか ?
[近くにいるかはわからない娘の名を呼ぶ]
しょうぶは どう なっ た ?
[勝ったか、負けたか。
自分は、騙されたか。
今残る興味は、それくらいだ]
ははは。のっぽ!
ナイフが幅広だったのを悪魔に感謝するといい。
傷口は…
おまえの二本の肋が受けとめたようだ。
肺は傷ついていまい。それだけ喋れるならな。
…運の良いのっぽだ。
[ひんむいたのっぽの胸から夥しい血が流れ落ちている。
しかしそれは、まるで少女の表情のように明るく軽く、それが静脈からの出血だと知らせていた。少女は両手わきわきさせて言う。]
さあ。他に傷がないか調べてやろう。
…おまえは守りすぎなのだ。
逃げる?ばかな奴め。のっぽ…
その傷の対価を得ねば、一生祟らるぞ?
―― 数日後・某集会所 ――
おっちゃん、安らかにお眠り下さい。
[なむなむ、と念じながら、受付で渡された白い封筒の口を開く]
……え?
[御礼状だと思った中には、タロットカードのような何かと、絵柄の説明が書かれた小さな用紙。
村人を示すそのカードを慌てて伏せて、あたりを見渡す]
『それでは時間となりました。
ただ今より――』
「受付にいた男性が室内にやってくると、そう告げた。
室内にいるのは、8人。
壁時計は、12時を報せる――**]
[鍵は開いたのか、お宝は見つかったのか、
もう意識が薄れているから認識できない。
この手で殺したはずの相手の声がするのは、きっと気のせいだ。
気のせいじゃなければいいなんて、身勝手に願ってはいけない。
チカノの言動を勝手に誤解して、真偽も定かでは無いお宝の言い伝えに欲を出して、しょうがないおっさんだなあと自分を笑う。
視線を感じる。たくさんの猫の置物からの、色とりどりの視線。
赤い目の猫は、早く自分の命を喰らいたくてうずうずしているのだろうか。
俺はサンマじゃねえぞ、なんて見当外れの台詞が、おっさんがこの世で最後に考えたこと**]