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−鳥居の前・公衆電話の付近−
え。……あぁ、うん、そうなんやぁ
[受話器から「良い子にしてるのよ」とそれだけ聞こえ、頷く前に電話は切れる。
両親と離れて暮らし、親戚に預けられている春名双季(はるなふたき)は毎年祭りの日を楽しみにしていた。唯一両親に会える日だから。
今年は仕事の都合で、来れなくなってしまったらしいのだけど。]
……寂しい、なぁ
[鳥居の向こうでは賑やかに祭りの準備が行われている。まるで鳥居がひとつの壁となり、自分が切り離されているような感覚に陥った。]
[小夜の手を引き、神社の裏。
学校で何があったとか、そういった他愛のない話をして笑いあう。しばらくすれば着替える為にと、一度別れた。
またねと手を振り笑うも姿が見えなくなると、ふと神社に向き直る]
……?
[何か声が聞こえたような気がした。
気がしただけ、かもしれないけど。]
[どのくらいそうしていただろう。
今は空に薄らと赤が差してくる頃だろうか。
もうすぐ祭りの時間だ。]
そろそろ帰らんと、約束過ぎてしまうわ。
急ごかな。
ちょっとなんや、虫がよう鳴いてて……
[気味悪いし。
そう言いかけて口を閉じた。
声がかかれば軽く挨拶を交わして、家へと急いだだろう。]
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