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[クレストの伝言を聞いたのはいつだったか。
だが、いつにせよ、投票の名前は変わらなかった。
話している人たちを見る。話を聞く。
投票が終わり、それを開けるのは誰の役割か、そしてどうやって殺されるのか。
尋ねることは、今はなかった**]
[投票を終えて部屋に戻る。
部屋まで、二階まではアイノと一緒にいただろうか。
彼女が望むならついていく、手を離されるまでは。
朝になれば、誰かが、死ぬ。
一人で部屋に入っても、怖いとは感じない。
釘の打ち付けられた窓の外、遠く収穫祭の迫った空気は、ここまで届いてこなかった]
[死んだ体にすがりつく人の姿。
そのまま足を進めて、クレストの肩に手を伸ばす。
ぽん、と触れるように]
クレストさん、
……悲しいですか。
[問いは静かに、呟くように]
人狼が、憎い?
[二つ目の問いは、尋ねると、少し口元が、笑った]
[昨日も今日も、彼は冷静だった。
騒ぐ事もなく、人に注意するだけだ。
クレストの口が動いた。なと動いているのかは、人とさほど対話しない彼には、難しい。
簡単な首肯ではなかった返事に、興味をなくしたような視線が、クレストを抜けてマティアスへと移った]
ドロテアさんみたいに、何かかけてあげなくちゃね。
クレストさんにも、においがついちゃいますよ。
――人狼を殺す気がないんなら、そのまま抱きしめて、「自分がやった」って嘘をついても良いとは思うけど。
[マティアスからクレストへ、再び視線が戻った後、笑う口が言うのはそんな事。
ウルスラに言葉を聴かれていても、気にする事はなかった]
―回想―
[アイノの話も聞こえてはいたけれど。
その時に、何かを問い質すことはなく]
僕は居間に行きます。
[人が集まってきているなか、そんな風に居間へといく。
ヴァルテリに、通りざま、どの部屋にアイノがいるのかと尋ねはした]
― 遊戯室 ―
[聞けても聞けなくても、遊戯室に辿り着くのは程なく。
寝かされたアイノの傍に足を進めて]
ねぇ、アイノ。
…死んだら夢は覚めたかな。
ごめんね、僕が――人狼、なんだ。
[小さく落とす嘘を一つ]
[座って何かを呟こうとしているようなクレストの様子も気になった。
だけれど、そちらには向かう事をしない。
ヴァルテリの答え、ウルスラへと視線は向かう。
彼女はナイフを振り上げて。
慌てて、その手に、手を伸ばした。
捕まえようと。
でも、できなくても、きっとこの程度なら避けられるようにも思えて]
[割り込むつもりだったけれど、周りを認識すればできなかった。
自分がやる事は、一つだ]
――アイノは人狼だったよ。
[それが意味する事は、つまり]
[彼女の手を掴む、クレストが彼女に飛び掛る。
そして自分の声に振り向いた、体勢を崩した彼女の手を、彼は、離した。
ナイフは握ったままだろうけれど、それに気にした様子もない]
――君はアイノが人間だったというの。
なら、僕の、敵だね。
[直接的なことばを、投げる。笑って。
自分が、判別されているとは知らぬまま]
ウルスラさんの方こそおかしなことを言うね。
僕が見た彼女は、人狼だったけど。
――嘘、ついてるんじゃないの?
[張り上げられた声に、口元が少し、笑った]
そんなもの持って、物騒だよ。
それとも、殺すつもりかな。
今、ヴァルテリさんも殺せなかったのに。
僕が殺せるわけないじゃない。ここが心臓だよ。無理でしょう?
[ニルスの静止の声を聞くけれど、止まる気などさらさらない彼は、
ウルスラに、さあどうぞ、とばかり、自分の心臓の位置を指差して]
僕が人狼かって?
違うよ、でもそうだね。
僕から見て君が嘘をついているように、
君から見て僕が嘘をついているんだろうね。
――君か僕のどちらかが、人狼、っていうことじゃない?
[違う?と首を傾げて問いかけて]
だから、君が人狼なんじゃないかって思うんだけどね。
理由なんて、知らないよ。
今、彼女に触って、そう感じたんだ。
[遊戯室で、と、視線をそちらへとくれて]
――殺したくないのに、
自分は死にたくないとは、たいそうなご身分だね。
[泣くウルスラに、彼は笑う]
ねぇ、人狼さん
ドロテアさんと、マティアスさんは、おいしかった?
[ウルスラが違うという。
そして、クレストにすがる。
目を細めて]
怪我してるでしょう、クレストさん。
手当てしないと。
一度、離したら。
[ウルスラに向ける視線も声も、冷たい]
殺したのは、君でしょう。
[淡々とした言葉を、音にする。
口調の違いも、本人はまったく気にしていなかった。
自覚はあっても]
――君の中では、犯人は僕になるだろうね。
まだるっこしい投票なんてしなくてもいいんじゃない。
僕かウルスラのどちらかを殺せばいいんだ。
手を汚したのは、ヴァルテリさんだけど。
そういうことじゃないよ。
[その言葉だけを付け加える]
僕は彼女を好ましいと思ってた。嫌いじゃなかった、助けてあげたいと思った。
人狼だったけどね。
そう思ってた人が冷静なんておかしいと思ってるのかもしれないけど。
取り乱してどうなるっていうの。
誰に恨みをぶつけることもできないんだから、
冷静でいて、何が悪いって。
そこにアイノは人間だっていう人が居たなら、
その人が人狼でしょ。
――だったら、追い詰めなきゃ。
死んでもらわなくちゃね。
見間違えたのかもしれないとは思わないんだ。
[ニルスの言葉に笑う]
どうしてウルスラさんが人狼だとは思えないの。
か弱い女の人のふりをしているだけかもしれない、とは考えないのかな。
夜のうち、まったく自覚なく人狼になってるのかもしれない、とか。
――ニルスさんは本当に厄介だよね。
[問いかけに、笑いは止まることもなく。
軽い調子で、そうこぼした]
泣けないからだよ。
アイノが殺された。見れば狼だった。狼は殺さなくちゃいけない。泣いたところで結果は変わらない。そして、ウルスラさんが嘘をついている。狼の仲間かもしれない。こんな事実、笑うしかないじゃない。
[真実と嘘とが織り交ざる。すらすらと、言葉は出た]
[そしてナイフを見て、笑った]
――僕を殺すの?
ちゃんと自分の手を汚そうとするのは、好ましいよね、ニルスさんは。
死んであげるつもりもないけど。
ウルスラさんはそういうけど、
自分の手を汚さず、彼女の名前を書いて、殺した人を殺そうとしたのは、あなたでしょう?
君が殺したようなものなのに、よくもまあ、いえたものだよね。
[ニルスが誰を信じようと、彼は興味がなかった。
彼の言葉の向かった先、ウルスラを見る]
いやだな。まだ子供の僕を相手に本気になっちゃって。
――さぁ、夢だとでも思ってるかな。
アイノの気持ちなんてわからないよ。
でも君に殺される気は、さらさらないんだ。
[とは言っても狭い室内、逃げ場所などないに等しい。加えて、身体能力も違う。
一撃くらいならばよけられるかと、走り出すのを見て、遊戯室との境の方へと駆け出す]
自分の手を汚しても良い人に殺されたってつまらないでしょ。
どうせ殺されるんなら
誰も疑いたくなかったり、殺したくなかったりする人にされたいなぁ。
って、思ってるだけなのに。
――…残念だなぁ。
[秘め続けた、独りよがりの絶望は、育ちすぎた。
こちらに向かってくるニルスに笑う。
投げられたものには、もろともしなかったけれど、足に破片はささりもう逃げられそうにはない]
まぁ仕方ないか。
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