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― 26日 ―
[夕暮れ時に店を閉めて、ふらりと外に出る。
手には大きな包み。
だが、目的の人へと近づく前に、
潜む何かの気配を感じて]
―――…。
そっと足を別へと向けた*]
[長い指が、白い骨の表面を撫でる。
ふっくらと丸い楕円の、大きな骨。]
今日は君のここを置いてこようか。
生まれなかった子の代わりに、花を添えて。
[片手で持つには大きな骨盤を
丁寧に包んで、脇へ置く。
昨日、綺麗に積んでおいた肋骨は
もう、誰かが見つけただろうか。
新聞を確認する気にはなれなかった。]
ハナシロ、出かけてくるから留守番頼むよ。
タケさんが来てくれたら、よろしく言っておいて。
それと今日か明日、写真が届くかもしれないからね。
槻花寫眞館に引き延ばしを頼んでおいたのが、
そろそろ出来る頃だと思うよ。
[3年前に"行ってしまった"彼女の写真。
白黒ではなく、鮮やかな色の写真が欲しかったから。]
じゃあ、行ってくる…
[店を出ようとして、ふと立ち止まる。
思い出したようにつまみ上げたそれは、
布で出来た小さな人形。
最初に空き地に行った時に、拾ったもの。
胸にある四つ葉のクローバーの真ん中は糸が解れて、
鈴かなにか付いていたのだろうけど、今は何もない。
所々に付いた黒っぽい染みと、
微かな消毒薬の匂いに首を傾げつつ、
その人形を、『落とし物』の箱に入れておいた]
[出かけた足で、先ずは弁当屋へ。
残念ながら、看板娘は配達中だったが。]
ああ、店長さん。
今日は海苔弁2つと唐揚げ弁当と、
じゃあ、そのカレーオムライス弁当ももらおうかな。
いえ、最近タケさんがうちで食べていくんですよ。
食べなかったら、晩ご飯にでも…
[数の多さを言い訳しつつ、代金を払う。
そうして、はらりはらりと降り出した雪の中、
どこかへ弁当を*届けに行った*]
[ふらりと出かけた帰り道、
小雪の降る中を、空き地へ立ち寄る。
空き地の周りには、真新しい植木達。
有刺鉄線に結ばれた、いくつかの白い紙。]
……流れが変わっている、かな。
まだ、―――もう少し…
[暫し、思案の顔。]
…あの子みたいに出来るか分からないけど、
試してみようか。
[おもむろに、有刺鉄線へ指先を伸ばす。
ぷつり、鉄の棘に刺さった指先に、
まあるく膨らむ朱の雫]
あの世と、この世が、近くなるように。
生贄、の、真似事。
[ちいさく振った指先から、赤い珠が弧を描き、
空き地へ、有刺鉄線へ、白い紙へと降りかかる。]
さて、と。
[真似事の真似事がどれほど効果あるのか、
特に深く考える様子もなく。
指先を軽く吸ってから、自分の店へ足を向けた。]
ああ、それ。
偶に、必要になるから。
[マニキュアが必要になる状況の説明は特にせず、
当たり前、の顔で、さらりと言う。
が、プレーチェが言った言葉には、目を丸くした。]
お花を供えに……?
君のおばあさまがそう言ったのかい?
なにか、お供えされるようなことでもしたかな。
[おどけたような笑みは、ほんの少しぎこちなく。]
かんしき…?
[プレーチェが差し出した写真を見た瞬間、
軽い目眩を覚える。]
―――不思議な、写真だね。
現像に、失敗した?
[まさかそんな、と胸の裡でなにかを否定しつつ]
……ああ、じゃあ、
君がそう言うなら、あそこにお供えしておこうか。
お墓じゃないけど、大切なものがある、から。
[店の奥から踏み台を取ってきて、
花冠を手に、棚の上へ手を伸ばす。
その手が、人形の前の袋に触れた。]
[棚の上から押し出された袋は、
ゆっくりと棚から落ちていき―――
床の上で弾んだ袋の口から、
白い、白い歯が、ぱらりと床に散る。]
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