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―回想―
[死にたくないと残して隣の車両へ走っていく椎名を、落ち着かせてくると追いかけて行った小鳥遊の背を見送る。
きっとあの先生に任せておけば大丈夫だろう。
しかし何故彼は死にたくないだなんて…そんな疑問がどうしても浮かんでしまう。
そんな時、近藤が倒れ、三枝がそれを抱き起こす。
何が起こったのか理解出来なかったが、三枝の呼びかけに近藤が答える気配は…ない。
さっきまであんなに雄弁に色々喋っていた人が何の前触れもなくいきなり倒れるものなのだろうか?]
こ…近藤…さ……?
[不意に汽車に収容されたばかりの時に鬼火に囲まれて倒れてしまった女生徒の姿と近藤の姿が重なった気がして、手で口を覆う。
バクバクと心臓が煩い。
もしかして、もしかして、もしかして…これが鬼に捕まる、という事?
ちが…違うよね?これは…ゲー…『近藤さんは、もう…亡くなっているよ』須藤の声に思考が止まる]
やだっ…やだやだやだっ……!
[歯が噛み合わなくなり、自然と息も荒くなる。
口元を押さえていた手は情けないくらいに震えてしまっている。
見知らぬ女生徒の死よりも、面識のある近藤の死はとても現実的だった。
もうこれはゲームなんだと自分自身を誤魔化せなくなる程に]
これは、現実で……鬼に捕まると、死んじゃ……
[全てを言い終わる前に、先程椎名を追いかけて行った小鳥遊が戻ってきた。
出て行った時と変わらないのんびりとした声音がこの状況の中では凄く違和感があって、でも何故か安心出来て。
救いを求めるように彼女の方へと視線を向けて…そして固まる。
アノ血ハ ナァニ?
彼女自身が怪我をした様子はない。状況が全く理解出来なくて、ただ唖然と小鳥遊を見ていると、のんびりとした口調とは酷く似合わない不穏な言葉が紡がれ]
こ、ころ…殺、す…?
[もう限界だった。皆と一緒にいて安心なはずなのに何故か怖くて、でも一人になるのは怖くて。
無言で立ち上がると誰の顔も見ずに一番奥の優先席の隅を陣取ると、そこで膝を抱えてたまごのように蹲りカタカタと震える。
本当は土足で座席に足なんて乗せてはいけないが、そんな事に構ってる余裕はなかった]
―回想終了―
[皆から離れた優先座席を陣取っていたが、聴覚がやけに鋭敏になっていて、皆が話している事はしっかりと聞き取れていた。
長澤も見える人だという事、二人の見える人が櫻木を視て、彼女は鬼ではないと言った事、そして自分が視て貰いたいと思っていた村瀬が聞こえる人だという事]
鬼…鬼…鬼を探さなきゃ。
じゃないとまた近藤さん達、みたいに…。
[顔を上げると、気合を入れる為にピシャリと頬を叩く。
成瀬と長澤にだけはどうしても死んで欲しくない。3人で帰りたい。
なら、自分達に手が及ぶ前に鬼を見つけなくては。
そう決意すると、勇気を出して皆の輪の中に戻る。
この中の誰かが鬼だ…そう思うとまた足が震えそうになったが、それを無視して適当に空いていた席に座り込んだ]
長い間隅っこで現実逃避してて、すみませんでした。
えっと……ロッカ先輩が聞こえるとかいう人だったんですね。
昨日は視て貰いたいだなんて言ってすみませんでした。
力の内容はよく分からないですけど…先輩一人しかいないって事は先輩はきっと信じていい人な気がします。先輩が信じていい人じゃなかったら怖かったので嬉しいです。
見える人はシンヤ先輩…とヨシアキですか。
……シンヤ先輩は神秘的なイメージですので何となくそれっぽい気がしますがヨシアキは……ふふっ。
ごめん、笑ったりして。
いやなんかヨシアキが見える人だなんて普段と比べるとギャップが凄いって言うか。
[恐怖のあまり感覚が麻痺しているのだろうか。
何だか簡単に軽口がきけてしまった]
それからナオ先輩とバク先輩…疑ってすみませんでした。
ロッカ先輩の力の事よくわかんないですけど、ロッカ先輩が鬼じゃないっていうならきっとそう…なんですよね?
それから……
[自分が隅っこにいた時に聞いていた皆の会話を思い起こしつつ]
えっと…近藤…さんが、鬼に捕まってしまった理由は?って話でしたっけ?
リーダー格っぽくて頼もしい感じがしたからじゃないでしょうか?
先程もいいましたが、近藤さんは鬼が不利になりそうな策を練って下さっていた印象がありますし。
近藤さんがいたら、鬼はキツイと思ったんじゃないでしょうか。
あと今後2人の見て貰う人にはどうして欲しいか、ですよね?
あたしはさっきみたいに視た人を投票用紙に書き込むっていうのがいいんじゃないかなと。
何となくですけど、視る前に皆で決めちゃったりするとその視る対象次第で鬼がどう動くかのヒント…じゃないですけど何かそんなような感じになっちゃわないかなって心配です。
何言ってるか分からなかったらごめんなさい…!
[ここまで話すと、一旦一呼吸を置いて]
シンヤ先輩に質問なんですけど、シンヤ先輩は近藤さんに対して、力の有無を伏せる事で鬼の逃げ道を…って言ってましたよね?
あたしにはもし鬼側が出てくるならさっき出て来れなくても嘘をつくために出るかもしれないって何となく思ってたので、シンヤ先輩が何でそんな風に思ったのかなって不思議でした。
寧ろシンヤ先輩一人じゃなくて、さっきの時点でヨシアキが名乗り出ちゃったら、シンヤ先輩が近藤さんのようになってたかもしれないですし、シンヤ先輩にはさっきの状態はおいしい状態だったんじゃないかなぁと思いました。
シンヤ先輩にはさっきの状態は…おいしくなかったですか?
[両手をぎゅっと握り締めながら問う。
人生の中でまさかこんな風に人を疑う問いかけをする日がくるなんて思ってなかった]
あと…その、あたしが受身って声がチラホラと聞こえてて…その件に関しては否定出来ません。
治したいなとは思うんですけど、多分これからもこんな感じ…です。はい。
言い訳しちゃうと、あたしが喋る時には何かもう素敵な案が出ちゃってるっていうか…。
って、言い訳ダメダメッ!
あたしも何か提案出来そうな事があれば出来るように頑張ります。…たいです。
[先程とは打って変わり、気まずそうな感じで口をモゴモゴさせながら、軽く頭を下げ]
[頭を下げてる途中で小鳥遊の声が聞こえて、頭を上げてそちらを見る。
よく見たら顔の血が綺麗になってる…なんて事はどうでもいい]
希望が出すのが遅かったのは本当に申し訳なかったです。皆さんにご迷惑をおかけしました。
多分今回もさっきと同じようになっちゃうと思いますので、現状での希望を考えてから少し休む事にしますね。
…と言っても、さっきからあまり時間が経ってないのでそこまで皆の印象が変わってないかもしれませんが…。まぁとりあえずの希望という事で。
ロッカ先輩には、近藤さんやケン先輩程大丈夫かなって気持ちが沸きませんでした。
鬼っていうと人をかどわかしそうなイメージを持ってるんですが、ロッカ先輩が一番それっぽく見えました。だから怖かったです。
ですが、鬼側じゃなければ頼もしいし…なので希望しました。
[いつの間に席を立っていたのだろうか。
気がつけばレコーダーの前に座り込んで何度も聞き返していた]
えーっと…考えを纏めるのが大分遅くなりました。
あたしから見て、リウ、ユウキ先生、モミジ先生、ケン先輩、コハル先輩が候補…?になるんですよね?
そして今のところ、見える人だと嘘をついているのは補佐…ですか。名前からしてその人なのかなって。
後はシンヤ先輩にお尋ねした部分も気にかかっててそう思っています。
なので…その、この5人の中に2人の鬼がいる…と思っています。
その内のリウとユウキ先生はちょっと疑いにくかったです。
簡単に言うと、リウはさっきの視て貰いたい希望とその理由。
ユウキ先生は…何て言うんでしょう。違和感のない感じ…?特に気になる点がないというか…。
で、残るはモミジ先生、ケン先輩、コハル先輩になります。
ケン先輩の事大丈夫そうって言ってた舌の根も乾かない内に申し訳ないですが、よくよく聞き直したらコハル先輩のお願いするかもしれないって流れと、ケン先輩の優先順位が下がったっていう流れにちょっとおや?っと思った次第です。
いえ、勿論そう思うに至ったコハル先輩の考えは納得出来るんですけど。
ただ、ケン先輩が大丈夫そうかなーって思った理由に、コハル先輩からの希望を貰うかもしれないのに。っていうのがあったので、もしこの二人が鬼だったとしたら…なんて事が過ぎったり。
ただ、この二人が鬼だったとした場合は…ちょっと仲良くしすぎなのかなぁとも…。
結果論にはなりますが、ナオ先輩が鬼じゃなかったのでコハル先輩が鬼ならフォロー入れる必要あったかなとも思うし、
ケン先輩のお話聞いてて、鬼じゃなさそうだなぁと思うんですけど…!
私の視て貰いたい先希望はコハル先輩でお願いします。
モミジ先生は、やっぱりケン先輩を気にし過ぎてる感がありました。
先生が何故気にしていたかの理由は分かっているつもりですが、ケン先輩が鬼だったとして誰も伏せて希望には賛同していなかった中で、何の情報もない状態で目立つというリスクを背負ってまでそれを主張する意味があるのかなって考えは浮かばなかったのかなぁって。
あとこれはちょっと気になったので質問です。
聞こえない人に関してなのですが、
折角の脅しなのに、何故今ではなくさっきコハル先輩に答えてしまったんですか?
ご自分でも言ってよかったのかしらとは仰っていましたけど。
隣へ避難して貰いたい人にはモミジ先生を希望します。
あ…頭パンクしそう…!
何かもうグダグダになってるかもしれませんが、これがあたしの限界です…!
とりあえずの希望として聞いておいて頂けたらと思います。
多分、あたしが少し休んでる間にもまた流れ…っていうんですか?そういうのが動くと思うので、それ次第でまた変わるかもしれません、とだけ。
変わる場合はまた皆さんにご迷惑をおかけしてしまうかもしれませんが…。うぅ、本当にごめんなさい。
[普段使わない頭を使ったツケが睡魔として襲ってきたようだ。フラフラと立ち上がると、今度は適当な席ではなく長澤の隣に腰掛け、さっきして貰ったように彼の手を握り]
…おやすみ。
[そう言って目を閉じた**]
―回想―
[こんな状況だと言うのに爆睡してしまっていたようだ]
肩貸してくれてありがと。へへっ、よく寝れた!
[長澤の肩から頭をどかせると、んーっと伸びをしてから、自分が仮眠を取っている間に話された事を知る為にレコーダーの側に行った]
―回想終了―
[レコーダーを操作しながら、成瀬に向かって]
最初の質問と、一番最新のあたしに対しての印象?に対して纏めて答えを返すね。
まず、視て貰いたい先と、隣行きはリウの持ってる印象であってる。
あたしが人を大丈夫って思うのは何て言うんだろ…鬼ならこんなのしなさそうって印象を持った人になるのね。
で、さっき希望した時、ロッカ先輩にはそれを感じなかったの。
沢山話してて、おかしな事も全然言ってないけど、鬼にも出来そうって言うか…。
コミュニケーションを沢山取れるって事は、人の心も掴みやすいんじゃないかなーとも思うし、鬼だったら凄く厄介だと思った。
確かにリウのいう通り、話しててそれで見極めれればよかったんだけど、あたしにはロッカ先輩タイプを見極めれる自信がなかったから視て貰う人に頼りたかったの。
確実に安心できるようになった人って危険な気がしたよっていうのは、ロッカ先輩が何の力も持ってなかった人で鬼じゃないって言われた前提かな?
その前提で話すと…こんな事言っちゃうとあたしの人間性が疑われるかもしれないけど、ロッカ先輩が鬼に目を付けられたとした場合、その間視える人の安全が保障されるんじゃないかなぁなんて。
[言った後で、村瀬に向かって何度も頭を下げてから、彼女に向かって]
シンヤ先輩とモミジ先生にはしてましたけど、コハル先輩には質問してなかった…と思います。
視て欲しいなって希望のとこで言ってたのは、質問じゃなくてただのあたしの妄想の塊でした。
二人が鬼って可能性はあるのかどうか分からないです。
コハル先輩とケン先輩の二人が鬼って事があるのかもって思ってるのと、
モミジ先生が鬼だった場合は、もう一人が誰なのか全く予想がついてない状態です。
なので、コハル先輩を見て頂いて鬼かそうでないかでケン先輩への印象が決まるかもっていうのと、
モミジ先生に隣に行って頂いて、ロッカ先輩が先生を鬼だったと言った場合は、リウとユウキ先生に対してもっと疑り深くなる必要があると考えての希望です。
なので…なんて言うんでしょう。隣に行って貰いたい希望と、視て貰いたい希望が別の目的っていうか…。
うまく伝わらなかったらごめんなさい。
[気にしなくていいよーという言葉にほっと安堵し]
[次いで寺崎の自分に対する印象を聞いて、ん?と眉間に皺を寄せ]
ケン先輩は、あたしの話し方を聞いていてあたしとモミジ先生の間に立たされているような感じがしたんですよね?
それで何故あたしの事を大丈夫だと思って下さったんでしょう?
いえ、そう思って貰えるのは嬉しいんですけど、あたしがケン先輩の立場だったらそんな風に感じたら
あたしとモミジ先生の両方に不安な気持ちを感じるなーと思ったのでちょっと不思議でした。
今はとりあえずこれだけ。
急いで残りも聞きます。
[レコーダに向き合い]
[リアルタイムの寺崎の声を聞いて、はっとし]
あああ…!あたしがさっきケン先輩に聞いた事は綺麗さっぱり忘れてください。
今のを聞いて不思議さがなくなりました!
[小鳥遊の方を向いて]
ええ。先生の仰る印象で合ってます。無理矢理理由を作ってます。
正直、ケン先輩とコハル先輩が鬼あるかもしれないと思いつつも希望時にも言いましたが、仲良くしすぎっていうか、分かりやすい繋がり過ぎる気がしてます。
ですが、今のところリウとユウキ先生を疑える要素がなかったので、あたしの目から見て3人の中に二人いるんじゃないかって思ってます。
そうなると、この分かりやすい繋がりに賭けるしかなかったと言いますか…!
因みにコハル先輩の方をお願いしたのは、二人を見比べると、ケン先輩のが鬼らしくないなぁって思ったからです。
やっぱどうしてもさっきの状態で、鬼があんな動き方をするのかなって思っちゃいまして。
別に殺したくなんてないですよ。ただ隣に行って頂きたいだけです。
それから理由についてはすみませんでした。あの後の先生のお話で印象的なのは、視える人の鬼の可能性考えてる事…ですかね。
鬼がその可能性を植えつけたいと考えてるのと、鬼じゃなくてその可能性を危惧してる。または別の思惑がある…のどちらかは判断つきませんでした。
それから質問の回答有難うございます。了解しました。
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