人狼物語 執事国


106 滅びの森

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視点: 人


宿屋の娘 江夏 ツキハナ

[はぐれないように、姉の手をしっかりと握って。
また一つ夜を迎えると、吸い寄せられる魂があるのだろうか。]

七五三以来? 
そっかもうそんな前になっちゃうのね。

[日ごと美しさを増す姉。化粧を施してもおぼこな自分。
大人になりたくても近づけないもどかしさが、胸の中でちりりと熱を上げる。

嗚呼、自分も姉のようにおとなだったら。あの人は振り向いてくれるだろうかと。]

(9) 2013/ 4/27(土) 02時40分位[よみ]

宿屋の娘 江夏 ツキハナ


でも、お姉ちゃまには敵わないもの…。

[「赤が映える」
微笑みで更に美しさが増す、姉に懐く思いは嫉妬。
指先でなぞる軌跡に戸惑いが零れ落ちる。
滴る深紅は、それさえも姉の美しさを引き立てるかのようで。]

――ねぇ、お姉ちゃま。
おとこのひとは、赤い色が似あうおんなのひとが、好きになるの?
わたしも、お姉ちゃまみたいに赤い色を流したら。
あの人が振り向いてくれる?

[悔し紛れに訪ねる問いとて、やはりおぼこさは*拭い去れず*]

(10) 2013/ 4/27(土) 02時40分位[よみ]

宿屋の娘 江夏 ツキハナ

[死化粧を施された姿を、どれくらいの時間眺めていたのだろう。

彼が化粧の職を生業としていると聞いた頃から、わたしには胸に小さな夢が広がった。

――彼に紅をひいて欲しい。

たとえ生業の延長でもいい。
ひとときだけ、彼の意識を一身に受けられるのなら。
彼の瞳に見つめられるのなら。

この後どんなことが訪れようとも。
その想い出だけを胸に生きて行けるだろうと。]

(11) 2013/ 4/27(土) 21時20分位[うつろな時間]

宿屋の娘 江夏 ツキハナ

[彼を初めて意識をしたのは、まだ齢6つも行かぬ頃。

姉の後ろに隠れてばかりのわたしに、柔らかく微笑む姿に幼いながらも心惹かれた。

足許もまだおぼつかないわたしに、いつも歩調をあわせてくれた。あやとり、おはじき、紙手鞠。外で遊びたい盛りだろうに、いつもわたしのわがままを優先してくれた。

ままごとで差し出したとても食すものとは思えない草花だって、きちんと食事に見立てて美味しいと頷いてくれた。]

(13) 2013/ 4/27(土) 21時20分位[うつろな時間]

宿屋の娘 江夏 ツキハナ

[後に耳にした大人の話で、
当時は相当大変な時期にもかかわらず、
そんな素振りも見せず、
わたしに気を使ってくれていたと知った時。
なん馬鹿なことを強要したのだろうと、とても恥ずかしくなった。

それでも彼は変わらず、駆け寄るわたしを見ては、柔い声で呼んでくれた。

「ツキハナちゃん」と。]

(14) 2013/ 4/27(土) 21時20分位[うつろな時間]

宿屋の娘 江夏 ツキハナ

[妹のように思われていたことは、
早くから知っていた。

だけど彼を思えば思うほど、
揺らぐ気持ちは溢れ出しそうで。

村から出て行った後も何度も手紙を出そうと筆を取り、
ため息交じりに置いた。

もう、彼だって大人。
素敵な女性を見つけているだろう。そう思って。]

(15) 2013/ 4/27(土) 21時20分位[うつろな時間]

宿屋の娘 江夏 ツキハナ

[あの日、自警団に呼び止められた日。

わたしは密かに人狼へこの身を捧げようと森へ向かっていた。
彼らの噂はかねてから聞いていた。

それならば。
自ら生贄になろうとて悪くはないだろう。

あとひと月かそこらで、わたしの生きる意味は終わる。

ならこの気持ちを懐いたままで。
誰にも穢されぬことなく死しても変わりないと思うから。]

(16) 2013/ 4/27(土) 21時20分位[うつろな時間]

宿屋の娘 江夏 ツキハナ


――それでもやっぱり…

[熱のない頬。感触のない肌。
愛おしい指で触れられているのは、亡骸でしかないけれども。]

ずっと、ずっと。 兼雄さんの事が好きでした。

[言わずには居られない。
たとえ、もうすでに声が*届かなくても*]

(17) 2013/ 4/27(土) 21時20分位[うつろな時間]

宿屋の娘 江夏 ツキハナ

[幼い頬に走る朱い線は何を誘うのか。
姉から差しのべられた指輪をはめた手を、空にかざして――]

わぁ、きれい!

[歓声をあげる声は、幼いままに。]

(18) 2013/ 4/27(土) 21時40分位[よみ]

宿屋の娘 江夏 ツキハナ

ねぇ、おねえちゃま。

[死装束に染まる朱を眺めつつ、幼子は無邪気に語る。]

あっちでかみさまが、*手招きしているよ?*

(19) 2013/ 4/27(土) 21時40分位[よみ]

宿屋の娘 江夏 ツキハナ

[よみのじかん。

これからの道は一人で歩まなければならない。]

だ、大丈夫かしら。

[不安に思う気持ちが、衣擦れと共に落ちていく。
一歩踏み出す足許。揺れる黒髪に差したかんざし。
そこにはかつての思い出と、淡い願いが込められていて*]

(29) 2013/ 4/27(土) 23時20分位[よみ]

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