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[手のひらで壊れ物を扱うような少女の面持ちと否定に]
莫迦ね。この世に不必要なものなんて無いのよ。
きっとあの世にもね。
だから貰っておきなさい。覚えておきなさい。
あなた自身のためにね。
[慰めの感情は出来るだけ入らないように。
そっと肩を叩いた。]
[肩を叩く際、ほんの少しだけ身を寄せた隙、
少女の耳に囁いた言葉は、長老の声の後か。]
ドロテアは無力じゃないから。
それを証明するために、私も――…
あなたを無駄にはしないから。
[それは誓いに似た、*言霊*]
――ふたり、ね。
[贄となろう乙女から身を離し、長の言葉を反芻する。
呟いた数に意味を重ね言葉を噤む。
ふと、冷気が擽る。
遅れ着たイェンニの連れて来た真新しいものに触れ、
鼻を啜る。張り詰めた意図が無数に巡る。
正直この空気が苦手だと思った。]
第二のドロテアを増やしては、いけない。
[情報屋の言葉端を拾い上げ、
自らに言い聞かせるように呟く重さに、
今は誰も気付くことは無く。
そっと目を瞑り、氷に閉ざされた雪の音を聴く。
手渡した白い淡雪のような砂糖菓子は、
無残に奪われる命の、生きた証を舌に残す記憶として。
せめて安らかな終わりを導くための祈りとして*]
[ウルスラの見事な肘打ちに顔を顰めつつも、
散り散りになる場に、長居することも無く。]
じゃぁ、爺…もとい長老、
何かあったらアルマウェル伝いに呼んで頂戴。
私が出られなくともミカちゃんが対応するわ。
[名残惜しそうに火元から立ち上がると、
一瞬だけ不可解な素振りを行った後、テントを後にする。]
[住まいに着くなり火を起こす手許には数冊の本。
砂糖菓子の守りを持たせた隣人にも忘れずの報告。
薄暗い季節。昼夜も訪わない狭間に明かりで*探すものは――*]
[花束]について? [ボウガン]の本?
[ドラゴンレーダー]のしくみ…?
ちょっと! ニルスったら!
貸した本、ちゃんと返しなさいよ!
センセーも言ってたけど緊急事態なのよ!
ったく…いっっっつもいい加減なんだから。
まぁ、今回は"中身"を使わないからいいけどね。
[本から剥がした鞣皮を机へと並べると、
暖はそのままに、再び外へ出る準備を。
贄の乙女が捧げられるより先に奪われる一つの贄は、
まだもう少し先のこと。
不在の旨を隣人に伝えるべく声をかけ、
使者なら言付けを、そうでない者であれば探せと伝える。]
逸れ狼を威嚇しながら歩くから、
すぐ見つかるでしょう。小さな村だし。
それに私も容疑者の一人だし。
情報集めないと仕事にならないわ。
それに――
本当なら、さっさとこっちの身元明かして、
呪術者の首根っこ掴まえて。
ガチンコ勝負したいんだけどね。
そうも言ってらんないでしょうからね。
ドロテアのこともあるし。
[溜息混じりに洩らす本音は、隣人にのみ。
一通り吐き出すと足許凍る最中、
人の気配と何かを探しに。]
―― 森の中 ――
しまった。ひと探しがひとを遠ざけて如何するの、私。
寒い中出てきた意味が無いじゃない!
[物思いに耽り、たどり着いた先は雪積もる森の中。
音は白い世界に包み込まれて気配すら聞こえない。]
ま、いいわ。捜し物もあったし。
少しでも崩せる手がかりが見つかるといいんだけど。
[オーロラの色すら隠す木々の間で、
暫しその時間をやり過ごす*こととした*]
[雪は音を奪い、光源を与える。
それでも時折響く遠吠えに、]
うっさいわね! ひとが考え事してんのに、
少しは気遣おうとか思う気はないのっ?!
今度吼えたら焼肉にしてやるんだからねっ!
[遠吠え以上の大声を出し、制する人影が一つ。
言葉の効力かそれとも他の何かか。
少なくとも森に響く忌々しい獣声はぴたりと止む。]
はぁ、それにしても"あれ"は見つからないわ、
ひととは会えないわ、意図が解んないわ、最悪だわ。
一体狼操って何をしたいのよ、ボンクラ共は…。
[煮詰まったのか。ぼすりと音を立てて地に横たわる。
その横を好奇心の強い小動物が駆け寄り、
無遠慮に服に潜り込んだ。
強い警戒を解かせるものは、身に纏う匂いか
はたまた別の何かか――]
時間稼ぎ、ねえ…。はぁ、合理的かつ的確に、か。
となると、やっぱり目星つけていかなきゃなんだけど…
はぁ…、
[服の中に潜り込んだ客人を招き寄せて手のひらへ。
ぼんやりと見つめては呟きは続く。]
言葉を持たぬこの子達のほうが、
ずっとストレートなのにね。
それは操られている方も同じでしょうけど。
…センセーに聞いてみようかしら? 狼の特性。
アプローチを変えたら少し見えてきそうな気がするのよね。
"こっち"の方では探れないし。
[がばりと起き上がると、森の住人に別れを。
大きなスノーエンジェルを残してひと気のある方へ。]
しかし寒い! 寒すぎるわ!
ひととも話したいけど、何より寒いのよ!
[ずぼずぼと近道をしたのだろう。
積雪に大穴を空けて立ち去った姿に、森付近の人影は見えず。
いや、見てないだけかもしれないが。
そんな視界の先に一つの影。]
――ん? あれって…ビャルネ?
捕獲…できるかしら…?
[寒さに背を丸め、杖を鳴らし歩く姿を発見。
あわよくば暖と会話、二つの利を得ることが出来る。
此処からだと明らかに自宅に戻るより早い。
ごくり。喉が鳴る。
驚かさないように足音を沈めて近付き――]
よっしゃぁ! 暖ゲットっ!!
おやっさん寒いから!
もたもたしない! 早く入って火をつけて!!
[扉に手をかけた瞬間を見計らって、
両手をぶんぶん振りながら背後から急かすように声をかけた。]
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