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[トゥーリッキに声をかけられ、
そちらに視線を送る]
ああ、トナカイも大事な村の民であり、
財産でもあるわけからね。
トナカイたちもそうだが、
私を信頼して預けてくれた人たちも
裏切るわけにもいかないのさ。
そういうトゥーリッキはどうしてたんだい?
例の事件で何か調べているのかい?
…――ドロテア…
[湖の方。
短い答えにひとつ、小さく礼を言い
彼の歩む方向へと顔を向ける。
焔の灯りを見る事は出来ないが
ただ
ざわめきを
風の動きを 感じようと]
―自宅―
[小屋の外から話し声が聞こえてきて、
ふむ、と僅かに考えてからよいせ、と立ち上がり。]
ちょいと外をみてこようかのぅ。
お主は暫しそこで暖まってるとよいじゃろうて。
[雪まみれだったヘイノに気遣うように声をかけて。
壁にかけていた杖を手に取り。
じゃらり、鳴らしながら扉へと手をかけて小屋の外へと出る。]
―自宅前―
[トゥーリッキとウルスラの姿を見れば眸を細め。]
かようなところで何立ち話をしておるんじゃ。
……お主らも凍えたいのかのぅ……
[物好きばかりだというように呟いた。]
[部屋は静か。ただ水の蒸発する音だけが聞こえる。
ゆったりと返されるビャネルの声に、
いつもの尖った声纏う"仮面"は自然と降ろされる。]
言われてみると確かに一理あるかも。
認められたい、ねえ。
でもだからと言って誇示欲がないとは…、
どうしてか私は外せないのよねえ。
[そして一口熱い茶を啜ると]
もし、よ。
誰かが操るものを見つけたとして。
その命奪えるのなら。
――ビャルネは、自らの手を汚せる?
[問いは物音に会話が中断される前]
…そうですね。
[視線を感じて顔で無く視線だけを向けると、アルマウェルの瞳に浮かぶ憂いの色。瞬きに交わす眼差しは途切れ、列を見たまま眼鏡の奥で眼差しを細めた]
見つけないと…
―席を立つ前―
[ジジ…――
炎が薪を食らう音が鈍く聞こえる。
ヘイノの声にふむ、と呟き。]
そうさの……お主はお主の勘を大事にするとよかろうて。
矢面に立たぬまま、人が右往左往して喜ぶ悪趣味が居ないとは限らぬからのぅ……
[問われた言葉に、しばしの沈黙がおちる]
――…それでわしが助かるのなら……
それもまた、辞さぬだろうな……
わしは、死にたくないからのぅ。
[狼使いを殺しておしまいになるのなら、と付け加え。
そして、応えは待たず、物音につられて、席を立った。]
そう、ドロテアだ。
[眼帯の男に、小さくうなづいて。
足元の雪を音をたてて踏み分けながら、灯へ――行列へとゆっくりと近づいていく]
裏切るわけには――か。
ああ。そんな言葉の端に安心してしまうな。
[まだ芯までは冷えない身。洟を啜る頻度は低い。
蛇遣いはウルスラと、小屋を出てきたビャルネへと
どこか遠い国の香りがする俗な会釈を一つ向けた。]
言っただろう、先生。ひとを感じてまわっていると。
調べるというほどには理詰めの頭をしてないのでね。
…戸口を騒がせてすまんな、白髪頭。
今は寒さより…あの火が気がかりでならんよ。
[ビャルネの言葉に苦笑交じりで答えて]
まあ、そりゃ暖かい方がいいけどさ。
話しかけられたからつい、って奴さ。
気になることもいろいろあるしね。
[パチリと火の爆ぜる音。
ドロテアを連れた列が進むことも今は知らぬまま。]
……――寒い。
[呟くほどに、凍えてもいないのに。
気まぐれに鏡のある方向に目をやるも、見にいかず、ただ零したものは嫌気のない苦笑。
やがて立ち上がり、帽子と上着を着込むと外へと。]
出来る事…
あるとすれば見届ける事くらいでしょうか。
[アルマウェルに語られぬものを車椅子に座す求道者もまた紡ぎはせず、考えだけを言葉にする。言う割りに見届けに向かう素振りはなく、冷えた手に息を吹きかけた]
―― 席を立つ前 ――
[爆ぜる音、蒸発する音。
なんて静かだろうと思う。]
あはは、私の勘ってあんまり当たらないし、
逆に右往左往させて見せて、
裏掻くのもありかなって思うけれど…。
うん、ありがとう。
[否定を重ねない言葉に感謝し、]
……苦痛の元凶を、見つけん。
粛正を行わん。
さもなければ……苦痛は更なる苦痛を招き。
絶望をも招かんとするだろう。
[出来る事、というレイヨの考えに続けるように、その顔を見据えてから、空を仰ぎ、呟く。はためくように在るオーロラを見]
贄たる娘のように。
或いは、相反するように。
血を以て血を制する事になろうか。
[続けた言葉は、確信のようでも、仮定のようでもあり]
なれば。悲しいかな。
だが、恐らくは、止むを得ないのだろう。
[光がはっきりと見えるようになった処で、足を止めた。
生贄の娘はどこにいるのだろうと考えながら、行列をじっと見つめている]
―― 席を立つ前 ――
[自らの答えを待たない、彼の答えに]
――残酷者ね。
だけど私と…一緒だわ。
[背中に落とす言葉は、
狩るもの狩られるもの、立場は同じとて、
違う意味を持つものとして。]
[トゥーリッキの言葉にも、
何でもないことのように答えて]
人と人とは信頼で成り立っているものさ。
獣にしたって、信頼してない人間に懐くことはない。
その相棒だって、そうだろう?
寒いのが苦手なのに、こんなところにいるんだから。
ああ、そんなこと言ってたっけね。
私はどうにもあの事が頭を離れなくてさ。
―自宅前―
[トゥーリッキが示す松明の列へと視線を向ける。
二人の言葉にわずかに吐息をこぼし。]
ああ――はじまった、のか……
[ここからでは行列の詳細は見えない。
ただ、あの中に贄の娘がいることだけはわかる。]
たしかに、部屋でぬくぬくと過ごしていてはわからぬものだのぅ……
[じゃらり、杖を揺らしながら二人のほうへと近づいていく。
小屋を出る直前に聞こえた、ヘイノの言葉には、軽く肩をすくめただけ。
生きるということが残酷なことでもあるのは、この地に暮らしているものにとっては馴染みだろう。]
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