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ヌイ、頼む。
ワシ何もせんで、頼み事ばっかり、勝手じゃけど。
頼まれんでも、そうするんじゃろうけど。
[セイジを担ぎ上げ、足を速めるヌイ>>51を、遥か遅れて追いかけながら呟く]
セイジを、タカハルを……みなを、助けてくれ。
[天を仰ぐ]
なあ。
ワシらを、ほんまに匿ってくれとるんなら。
神さま。
こんなときばっかり祈って、勝手じゃけど。
ワシより、みなのこと、護ってくれや……!
[まるで、応えるかのように。トランクから飛び立った紫色の蜂たちが、ギンスイの周りを包む。それから、空へと舞い上がった]
……なんだよ、それ。
[零れる呟きは、戸惑いまじり]
縛を超える術は、他にない。
[続くのは、戸惑いを打ち消そうとする言葉]
……『堰』の、先……。
そこに、行くには……。
[ぐらり。
不安定な相互侵蝕が、安定を欠く]
……綺麗、じゃのう。
[天に舞う、色とりどりの蜂たちに、地上からしばし見とれる]
ほんまに、神さまが、力貸してくれとるんんじゃろか。
[ひとつ、息をついて。ヌイとセイジの後を追い、河原へ]
何べんも来たことある河原に、よう知っとるみなの顔。
何で、知らん奴みたいに見えるのがおるんじゃろ。
タカハルの声にも、雑音が入りよる。
さっきのボタン婆ちゃんと、やっぱりおんなじじゃのう。
セイジの、声は、
何でじゃろ。セイジの声とは違うとるのに、よう聞こえる。
ンガムラさんは……
いつもの、ンガムラさんじゃ。
[小さく、笑みを浮かべる]
…はあ、はあっ……セイジくんを……助け……
あ……ヌイさん、セイジくん、あっちに……
[視界にヌイを捕らえて。>>31ヌイが「アン」と呟いたあとに向かうその方向、セイジのいるほうへ。息を切らしてふらふらになりながら、自転車について走る。]
セイジくんのとこ…いかなきゃ…はあっ………もうっ……透けたり眠くならなかったりするのに走ると疲れるなんてどーゆー仕組みなのよこの体ああっ!
[自分に渇を入れるように叫んだその時。]
きゃっ!?
[>>+15どんっ!と誰かにぶつかり派手に転んだ。]
いったあ……何よなんでぶつかるのよぉ…!
……ボタンお婆ちゃん?
『……けど、完全に忘れ去られるよりは、
遠足や運動会の前日だけでも光をあててもらえるほうがまだいいわね。
このところ、あんまり雨降らなくって……
わたしへの祈りも、格段に少なくなってしまって……』
……気持ち?
[きょとん。そのナニカは、移民の男の憤りは解さず]
[それでも声のトーンが落ちた時、手元からセイジが引き抜かれる。]
『ぷーぷー 触れちゃいけないのかしら。』
[頬を膨らませた気配で、
構ってほしそうにセイジを見やる。]
『……そりゃあ、命がけなんて、馬鹿馬鹿しいわ。』
[ヌイの手が、ボタンの頬をなぞると、]
ヌイ坊…?
[初めてヌイの声を認識したように目を瞬く。]
いや、トランクスで作られるのには同情するがなぁ。
ええか? おまえさん、
物を最後まで、だいじにすんのがな、何よりじゃてな。
そこがわからんうちは、まだまだじゃ。
[移民の男の願いとは大幅にずれているだろうが、とりあえず声を叱りつけた。]
『わたしは ただ くやしくて かなしかった だけよ 』
[ふと声がくぐもる。]
『相容れないなら、別にいいわ、
ただ、ここにいては、わたしは なにも できないから…
ねえ、あのひとを 笑わせてあげて?』
[ナニカはヌイだけではなく、通りを、村中を見回す。]
『それなら、引き受けてくれる? 』
……まだ、足りてない、けれど。
いざとなったら……!
[多少、強引にでも。
『堰』を越える。
解放への渇望は、ただ、それにのみ向かい始めて]
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