[迷路のような生垣に沿って歩いていると、垣の切れ目から、ちらりと先ほどの男の姿が覗いた]
何か植えている?
さっきの花のお詫びのつもりかしら。
[居た堪れない気持ちになって眼を伏せる。再び目を開いた時には男の姿は掻き消えていた]
[男が蹲っていた場所に歩み寄り、しゃがみ込んでまだ柔らかい盛り土にそっと触れる]
………次にあの人が来る頃には立派な木に育っているのでしょうね。
その時は……わたしはおばさんか、おばあさんか…。
[ふと見上げた空がぼんやりと明るくなってきている]
あの子はとうとう見かけなかったわね。
『次に会う時は同い年だね』なんて言っていたのに。
[瞼が重い。林檎の木にもたれるように顔を寄せて、深い息をついた]
もう扉を閉めてベッドに戻らないといけないのに…私も諦めが悪いのね。
[そっと身を起こすと、ふらりと*歩き出した*]