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あー、そうだな。
気乗りはしねぇけど、やんねぇと。
だいぶ時間経ったし、いけっかな?
[乗り気のしない声を聞いて、力が戻ったかを確かめる。何となくではあるがいけそうな気がしたため、早速念を込めてみることに]
そーいやこれ、てきとーにどっか飛んでくよな。
さっきはセーラー服の子を捉えたらしいが。
……今度は誰に行くんだろ。
[力の向いた先を感じることは出来るが、どこに行くかはさっぱり分からない。自分に飛んで来たりしねーだろーなー、なんて考えながら、意識を集中し始めた]
いやいや、Sかもしんねぇぞ。
自分の手で人を狭間へ追いやることが出来るのを楽しいと思ってしまう場合は…。
[何の話をしてるのかと突っ込まれそうなことを返しつつ。念を込めると再び力は身体から抜けてどこかへと向かって行く。
けれど]
………あ、れ?
何か、さっきと違うような……。
[力は見知らぬ女性へと向かい、その姿を捉えて。直後、霧散する気配が返って来た]
ねーよ。
[何か疑われたので一言で返した。からかわれていると言うのは承知時済み]
菊子?
えーっと。
………あー、お前が会ったっつー高校生くらいの?
[今把握している中で名を知らないのは限られている。聞き覚えが無くて該当するのはその子だけだったため、そんな風に聞き返していた]
[住宅街へと向かう緩い下り坂。駅前に向かうべく歩を進めていた時、異変を感じて一度足を止めた]
………何で?
[不意に視界を過ぎる、制服を来た女性の姿。視界と言うよりは、脳裏に浮かんだと言った方が正しいか。見覚えの無い女性を目にして、瞳が何度か瞬く]
…えーっと?
[自分でも何が起きたのかが分からず、盛大に首を傾げていた。それから次第に眉根が寄っていき、やや険しい表情を顔に浮かべる]
あんの兎、ぶん殴る。
[それは心からの声だった]
祐樹に縁切りされたら俺泣いちゃう…。
[軽口に軽口を重ね、次いで聞いた名前には]
鬼龍院ってー……へぇ、こっちの学校来てんだ、その子。
鬼龍院の家はこの街じゃないって聞いてるけど。
まぁそれは良いとして。
届いてんのに力が霧散したって、どう言うことなんだろうな…。
これじゃ『仕事』にもならねぇじゃねぇか。
あの兎ぶん殴りてぇ。
[過ぎったものは一度横において。ここからどうするかを思案する]
家で見たものだけじゃ足りねぇ、ってことなんかな。
あと俺に関わる場所っつーと……あそこかぁ?
[思いつくのは学友が住んでいた風音荘。遊びに何度も通ったことがある場所]
止まって考えててもしょうがねぇし、行ってみっか。
[目的地を定めると、住宅街を早々に抜ける。駅前まで出てくると、そのまま海辺へと向かう道を歩いて行った。考え事をしているためか、周囲への注意力は散漫。声をかけられれば立ち止まって応じるが、それが無ければそのまま風音荘へと向かうことに*なる*]
愛が無いなぁ。
[呟きを聞いて、返しながらケラケラと笑った。さらっと切り上げられたことには深く突っ込まず、力については同意の言葉を向ける]
そんな感じだったな。
…俺達がこの状態なんだから、他にも何かされた奴が居てもおかしくはないよな。
直接聞いてみんのが良いかも。
なぁ祐樹、その子どこ行くとか聞いたか?
[もし目的地が分かるようだったら、そっちの方へと向かってみる*つもり*]
祐樹の愛は柏餅では買えなかったかっ。
[くぅ、と悔しそうに言ってみたりして。軽口で気分を出来るだけ浮かび上がらせようとするのは無意識のことだったかもしれない]
具合が悪そうだった、か。
それだけじゃ何とも言えねーところだが、否定する要因にもならねぇな。
ん、風音荘なら俺も今行こうとしてたから、様子見てくるわ。
居なかったら駅前広場だな、了解。
[居そうな場所を聞いて、改めて目的地を風音荘に定め、しばらくは移動に専念した]
[海辺への道を進み、その途中で道を逸れて風音荘のある方へ。学生時代に通い慣れた道。10年前は丁度その時期にあたる]
景色変わんねぇー。
っても当たり前か。
[遠目にはもう風音荘が見えて来ている。その入り口付近に人影を見つけると、離れた場所で一度足を止めた]
っと、あれって確か……貘原って言ったっけ。
[まず目に付いたのは、この10年前に飛ばされて最初に会った男子。名前は辛うじて思い出せた。彼がもう1人に話しかけているらしいのを見ると、視線はそちらにも向かう]
…………やっぱ居るよなぁ。
[小さな呟きは不思議そうな雰囲気を含んでいた。僅か首を傾げて後頭部を掻き、離れた場所からしばし見つめて*いた*]
ん? 何か言ったか?
[流れ聞こえたような言葉は、はっきりと捉え切れなくて。呼んだか、とでも言うように祐樹に聞き返した**]
あー。
[何を見たかを聞いて、納得した声を返す]
俺はまだ見てねーんだけど。
そうか、びみょーか。
[自分も見たらそうなのかな、と思いながら言葉を紡いだ]
[風音荘の前に居る2人を眺める最中。不意に背後で声が上がった]
「じぃちゃん! 早く!!」
───……え。
[聞き覚えのあるような、無いような、不思議な感覚を覚え、その場で振り返る。そこに居たのは10年前の自分と、急かされながら歩いてくる祖父の姿があった]
…うっわ、俺、あんな声してたのか。
[当時そんなに身体も大きくなく、声変わりも遅れていて。周囲より少し高い声を発していた。自分の声を客観的に聞くと少し違和感を覚えがちだが、声変わり前だと中でも違和感が大きく感じられる]
「早くって! トモの奴がすっげー熱出してんだよ!!」
「分かった分かった。だがじぃちゃんは年寄りだからな。
急ぐと足を縺れさせて、じぃちゃんが患者になっちまうぞぃ」
[大慌ての自分に対し、祖父の対応はのんびりとしたものだった。祖父は当時70歳、畑仕事をしているためその辺の老人よりは体力があっただろうが、自身の身体を良く知り、無理はしないようにしていた節があった。それが今見ているような対応を作り出していたのだろう]
そーいや……学校休んだトモの様子見に来て、熱が上がったの聞いて慌ててじぃちゃん呼びに行ったんだっけ。
[実際は父親を呼びに行ったのだが、先に話を聞いた祖父が行くと言い出したのだったか。ともあれ薬箱を持って風音荘まで2人でやって来たのを思い出した]
んで、じぃちゃんのお陰で熱も治まって、そんでその時───。
[何かを、思ったのではなかったか。思い出せずに考え込んでいると、過去の自分と祖父は横を通り過ぎながら、すぅっと姿を消した]
……うん、びみょー、だな。
[受けた印象は祐樹と違うかもしれないけれど、声の違和感は確かにびみょーに感じられて。やはり無意識にぽつりと呟いていた]
おー。
客観的に見ると、なんか、な。
あと声がさー…。
[それ以上は何となく言葉を紡ぎ辛かった。当時、声変わりが遅かったことが少しばかり嫌だった自分を思い出したからだ。当然、祐樹はその当時のことを知ってるだろうが]
自分なんだけど別人みたいに見えるっつーか。
あれか、成長ビデオ見せられてるような感じで受け取っとけば良いのかね。
会話とか出来てねーわけだし。
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