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願うことは、悪いことじゃない。
ここは、叶えられなかった願いを叶える場所だからな。
きっと。
[俺もよくは知らないが、と付け加えて]
けどな、そっから先に進めなかったら、意味がないんだ。
……なんでだろーなぁ。
仮初だって、夢だって、気づいたからかね。
いくら成りたくても、結局、本物にゃ、成れやしない。
[本音に近く、遠いことば。
怖いという単語には敢えて触れなかった。
ふ、と息を吐き出す。
視線は、ちかもツキハナも、捉えてはいない]
此処? “家”だろう。
――此岸と彼岸の狭間にあるだけの。
誰、っていうのも、難しいな。
俺は、俺。
君の“あなた”じゃない、とだけは言える。
[手を口元に当てた。煙草は、その手にない]
俺の “お前”も君じゃあ、ないから。
さてね。
君に向けていたのか、彼女に向けていたのか。
得られなかったものの、
……代わりを、求めていたのかもしれない。
[額に落ちる前髪を、くしゃりと掻きあげた]
それでも――
たとえ、仮初でも、夢でも、
俺は、嘘とも偽物とも、思わない。
まあ。
[視線を彷徨わせた挙句、ツキハナを見る]
たとえ、夢幻に過ぎないのだとしても、
スイの言っていたように、
俺にとっても、皆は“家族”なんだろう、な。
[温もりすら、偽りかもしれない。
けれど、その手に、触れた]
[お休み、とは口の中だけで。
目線をベックに返して、出て行く二人を見送る]
それから。
きっと、この想いも。
君を好きになれて――
愛せて、よかったと思う。
[言い辛そうにしながらも、微かに笑んだ]
……ありがとう、ツキハナさん。
[そっと、*背を撫ぜる*]
……俺はなー
[いつもの癖]
なぁんにも、上手くいかなかったんだ。
夢見たって破れてばっかで、厭になった。
でも。
ひとつくらい、叶えたかったんだろうな。
[返る声は聞こえないけれど、否、だから、語る]
それで、此処に来たんだろう。
ただ、好きな奴と一緒にいたかった。
皆に好かれる、父親って奴になりたかった。
家族って奴が欲しくて、
おかえりって言ってくれる、
あたたかい家に帰りたかった。
それから――誰かを救いたかった。
[子供のように笑った]
すげぇな。ほとんど、叶ってら。
でも、なんだろうな。
叶えば叶うほど、空しい気分になるんだ。
よくわかんねえけど、虚ろな感じ。
思い出せなかったからじゃないらしい。
[得体の知れない感覚は口に出来ず、*独白する*]
ただ、さ。 このままじゃ、いけないって思うんだ。
[ちゃりん、と音がした。
卓上には、六文銭が二人分]
足りないのは……
此処にいろってことなのか、
それとも、他に理由でもあんのか。
[首の後ろに手をやり、コキと鳴らす。
欠伸をして、居間を出て行った。
貨幣は置き去りのまま]
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