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[ドクリ]
[不意に跳ねた心臓の音がやけに大きく響いた]
[何故なのか未だ、解らない]
[それは目覚め始める獣の血]
[供儀とされた愛しい妹の喉元が
酷く酷く柔らかそうに見えて
そんな自分の意識に驚いて頭を振る]
[咥内で赤い舌が上顎を舐めた]
[未だ、気付かない 気付けない]
[胸元は心臓の辺りを抑えるようにして
ふる、と、桔梗色の髪を揺らして頭を振る]
星詠みの結果―――だ、そうですわ。
でも、…そう。
ニルス様もおっしゃってましてけれど
今までも満月なんて何度もありましたし…
[だから、と。
去る妹の背を見る睫毛は細かく震えた]
[満月が 近づいてくる]
[身体がひどく熱く寝苦しい。
隣で規則正しい寝息を立てる妹の
シロイ肌が、白い、白くて、]
[ぐるぐると目が回る]
[目を閉じても眩暈が脳を揺らす]
…嗚呼、
[制御しきれぬ血の目覚めに
声にならぬ吐息が漏れた**]
…いけません。
私は…――なんて、ことを
[裡で想う言葉が他に伝播しているとはまだ気付かない。
眠る妹へと伸ばしかけた手を、
逆の手で ぎゅ、と握る。
そのまま、自身の身を抱き締めて小さく震えた]
[喉が 乾いてていく]
[満月が――どこかの何かを狂わせる]
[寝台の上で俯いた顔を上げると
いつも眩しげに細められた眸は真っ赤に染まっていた]
[まだ眠るらしき妹を部屋に置いたまま廊下へ出る
顔には薄い隈が眠れなかったことを示していた
階段を下りていくと居間の方からざわめき聞こえ
顔を覗かせ果物が並ぶ様子に表情を和らげた]
ニルス様、ユノラフ様お早うございます。
お茶でしたら、
わたくしがお淹れ致しましょうか?
満足頂けるかは判りませんが。
[クレストの姿とレイヨの姿も見えれば
同じように、挨拶を向ける]
― 昨夜の事 ―
[ぞわり]
[全身の毛が逆立つのが判る
それは月の重力に惹かれているかのように
赤い眸の下、赤い舌で一度くちびるを湿らせて
見下ろした手の爪は伸び、鋭く光る]
[どうすれば今魔物となれるのか
血が 教えてくれる――…]
嗚呼、ドロテア、………
[小さく落とす呟きは震え掠れ 怯えるよう]
[ぐ と 自身の肩に爪を減り込ませた
痛みに顔を歪めるのはひとときのこと
全身を覆う獣の欲望が薄れて行くのを感じ
ほうぅ、と、長く長く息を吐いた]
いや、だわ…
[それからずっと 一瞬も眠る事無く
寝台の脇で 眠る供儀を横目に見た侭]
[湧き上がる血の欲望を抑えるように
自身の身体を両手で、抱きしめていた]
[ぞわりと背を這いあがる衝動に身を捩りつつ
丸くなって耐えている時 笑む気配を感じた
だがそれが何であるか女に知れる由は無く。
きっと血が 抗う自身を笑って居るのだと
そう思うと――また、欲望は膨れ上がって]
…っふ……、
[まるで泣き声のような哀れな声を漏らす直後
獣の唸り声のような低いそれが重なった]
…し、ぬ?
わたくしが?
[不意に聞こえた声に赤い眸を開く
喉が乾きすぎて カラカラの掠れた声は
高い声と低い声 二重のユニゾンのようだった]
死ぬのは、いやですわ。
[二重の声が 喉を震わさず出ている事に気付く
そして相手の声がまた鼓膜震わせて無い事にも]
死なない――死なない。
生きたい………
[零すのは 血と自分どちらもの本能の欲]
…――、っっ
[聞こえた言葉に、はっと顔を上げる]
[守ってあげる]
[なんと甘美な響きかと うっとりと表情を溶かす]
――わたくし、は、
人にとって良くない存在かも、しれませんわ?
[それ、でも?
低い声重ならず 高い声だけが問うのは
細い細い糸のような 告白にも似て]
[調理場は居間のすぐ隣。
湯を沸かして大きなポットに茶葉を入れ
少しぬるい紅茶をカップに入れた。
人を持て成す事もあったのだろう、
幾らか種類が揃えられた茶葉の缶は
やけに日常めいていて 少し目を伏せる]
大きな鍋や一通りの道具はありますわね。
レイヨ様は、お料理はお得意ですか?
[父と2人で暮らしていたように記憶している
お茶を淹れながらそんな雑談めいた言葉を交わし
盆に並べたカップは運ぶのを手伝ってもらいつつ
居間へと戻る足どりは 少しだけ軽くなった]
[聞こえる言葉が じんわりと染み込んでいく
自分の肩につきたてた長く硬い爪が
薄く開いたくちびるの内側で長く伸びた牙が
鏡に映る自分の赤い赤い眸が
気を抜けば熱で弾けとびそうな身体が
喉が渇いたと
空腹だと 訴えるのに]
わたくし、を?
嗚呼、それは――とても、
[うれしい。]
[言葉は 音無く心の裡で 広がった]
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