でもこの部屋に、電話なんてあったっけ?
[おそるおそると抜き足、差し足。軽く耳元を押さえながらけたたましくなり続ける音の方へと向かう。
地下貯蔵庫の隣にある、暗い物置…]
……
[すう、…はあーっ]
[深呼吸をして、ぐ、っと扉に手をかけた]
でぁー!!
[勢いよく物置の扉を開く。
後々考えると電話のような音より、
本人の声の方が恐ろしいものだっただろうが、
今は気にしていられない]
[ガターンッ!]
[ピタッ]
[物置の扉を開けると同時に、電話の音が止んだ]
え、 あ、あれ?
[パラ、と壁から埃が落ちる音が積もり、しん、とした静けさが広がる。
とたんに、ぶるり、寒気がして自分の両腕を抱える]
……これ…
[物置の中、机の上。ぽつりと置かれていたのは]
てれれれれってってってー
[口ずさんで、はたと止まる]
いかん。これ、レベルアップの曲だった。
[机の上の物に改めて手を伸ばす]
……子供心に他人の家にあるものを
勝手に持っていっていいものか、なんて思ったもんだな。
[今の自分はどうだろう。
ある意味あの勇者のようなものかもしれない]
今度から仕事聞かれたら「勇者です」って答えてみようか。
[*そして、改めて机の上にあるものへ*]