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[彷徨う僧を示し見遣って首を動かすと、
フェルト帽の四ツ房が重たげに揺れる。]
さし当たって、
"食糧"の分配が滞るほうが問題だな。
[端的に、本音と建前を並べて提示した。]
… 助勢を頼めるか?
[揺れるエリッキの返答待たぬ侭に、さくり。
霜柱を踏んで、弔いする僧へ徐に歩を向ける。
斧の頭はやがて、不意打ちに風切る音を立て*]
[桟橋を引き摺る金属に壊しながら、
赤い川に浮く指の一本を拾い上げポケットに入れた。既に僧によって胴とは分かたれた女の脚の一本に、ツバのみを引っ掛ける。
――そして血の匂う獣臭い毛皮とを引っつかんで男は機嫌よく一度塒へ戻った]
研究者にとって、
資料というのは大事で貴重なものだからね。
[広さだけはある朽ちた作業場、船の墓場のようなその場所の一角に飾られたいくつもの“資料”に囲まれ眠るのが男の常のこと。満足げに資料を飾れば、指の一本にふと眉根を寄せる]
ああ、しかし、そうか。
これの持ち主は―――、生きている。
それは、いけない。
[片手には昔この村がまだ今より幾分良かった時に作った僧杖
今は朽ちて、飾りのあった面影
鈴は錆びて、揺れるたびに、細い輪を削る]
私が弔わなければ、誰が弔う?
この身に、鳥達を取り込んで、私は皆を救う為に、同化する。
[罪悪感と、己の価値観を崩す魔物、そして己を支える為の狂信]
……
[足を止めて、振り返る]
貴方は死の理を守るモノか?
ならば静かに通してもらいたい
ならば貴方が尽きた時、弔ってあげます
一緒に天に召しませう
[ケラと笑う]
[気狂いの男は、笑みを隠しながら、眼の前の凶行を見物していた。済ました顔や、猛々しい僧、自らが犯した学者の姿が無気力そうな男とやりとりするのもすべて、楽しげに。
赤毛の男や、何か喚きながら凶器を振り回してた男、彼らが、その命を消す様も、眼を爛々としてみている。舌なめずりちゅるりと。]
ほうほう、分配するのですか。美しい行為ですね。
[斧の男の言葉にはそう答えつつ、赤毛の男が海に浮かび、魔物と呼ばれる男。それらの肉が行った海を惜しそうにみやりながら、女の肉はぺろりと舐めた。]
[浜辺に至れば、水に浮く赤毛の男の亡骸。
沈む鎖ごと引き摺って、浜にその躯を転がした]
おや、君、魔物に引き摺られたのかね。
……取り込むは、後悔すると言っていたか。
しかし、わたしは好奇心が旺盛でね。
[手にある錆びついた鑿は、屍より肉を抉る。ひとつは己のポケットに運び、ひとつは己の口に運ぶ。屍より抉る血肉の味は]
……やはり、甘くはないものだ。
[不意打ちを避けもせず、僧は足を止めただけ。
――――彼の右肩へ、斧は半ばまで喰い込む。
静かに振り返る相手の挙動に合わせて
ぐと斧を抜き取ると…飛沫くいろが霧めいた。]
守るもの ではないね。
死のことわりと言うならば、
…そういう名を負ってきたので。
[ほんの数日前だった禊の水の、
赤黒さを…彼の脚衣に見つけられない。]
禊は、もうやめてしまったのかね?
[斧の男に話しかけられ、そちらに首を巡らせた。]
…“魔物”は死んだんじゃないのか?
[男たちが落ちた海のあたりを指をさすが、
斧の男の視線の先、女の死体を食む僧侶をみ、]
…さぁ、な。
[“彼”を魔物と評してしまえば、皆“魔物”ではないか等と。]
ん?…助勢?
[聞き返した時には、既に僧侶の元へと男は歩みよっていて。]
ああ、分け前をいただけるなら…?
[懐に手を入れつつ、近づく前に、斧が風を切った。]
穢れていないのに禊は必要なし
これは私が取り込んでしまった鳥の代わりにする功徳。
[斧はか細い肩の骨を切り砕く
男はゆっくり座るように跪いた]
私が死んだら、誰が魂を天に還す、肉を大地に還す。
貴様は、それを分かって、殺すか。
[自分の死を前にしても腑に落ちない表情]
なぜ、殺すか。
食いもしないのに殺すか。
意味もなく殺すのは、お前もアレか。
[曲解した言葉に、己を奮い立たせるように、釣り糸を伸ばすが、そのまま力尽きたように倒れた
瞳は信じられないと言わんばかりに見開いて]
おや?
[次にその視界に映るのは、
斧が一閃、僧の肩にくい込む場面。
そこから、きらめくように血が吹き出す。]
―…慣れていらっしゃる。
[人を殺める行為に、躊躇いが見えぬ者へ、それまでとは違う声色で、目を細めた。]
[ゆっくりと倒れ伏す僧侶を少し離れた場所から見ていた。]
…助勢はいらなかったな。
[手馴れている…知らず気狂い男と同じ感想が浮かび、傍に近づくのは躊躇われ、足は止まった。]
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