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でも、もういないんだよ。
[言いつのる少女の背をあやすようにたたく。]
ネギヤ君もマシロちゃんも、ギンちゃんも。
みんなみんな、帰っちゃった。
一度向こう側にいった人を引き戻すことは私達には出来ない。
出来るのは、一緒に行くことだけ。
あらあら…顔突っ込んだら顔が汚れちゃうじゃない。
[お椀の中に顔を突っ込む猫少年を少し吃驚した様に見たが、
仕方ないなぁと炊事場の戸棚から付近を取り出した]
[物も言わずに水場で手を冷やしているライデンをちらりと見遣ると
どうしたの?と少し心配したように声をかけたが、
返ってきた言葉にくすりと笑うと]
薬屋もさすがにいつも薬持ち歩いてるわけじゃぁないんだねぇ。
[などと軽口の応酬。
さして気にする様子もなく、布巾を手に猫少年の前へ。
食べ終わったなら顔を拭いてあげようと待ち構えている]
[背をなでる手を少女の手首へと落とした。]
どくどくいってるね。
この音を止めれば、ちーちゃんはお母さんの側に行けるよ。
私も、おじいちゃんもおばあちゃんもいない側に行ける。
[自分がこちら側なのかなど、本当はわからなかったけれど。]
ちーちゃんは、そっちへ行きたいの?
[悲しい顔で首を傾けた。]
[その傷に何かを思い出し、立ち上がる]
船どころか、自転車一台すらないなここは。
[独りごちながら宿舎へ戻り、廊下を進んで行く]
辻村さんいらっしゃいますか。
はーい。
[炊事場を覗き込んでいた首を廻して、どこからか聞こえた自分を呼ぶ声に答える。]
どちらですか?
[のんびりと首を傾げると、廊下の先に教師の姿。]
[炊事場に姿を表したエビコにまだ残っている事を告げようと口を開いたが、言葉は不意にエビコを呼ぶ声に遮られた]
[廊下の先を見遣るエビコの横顔を見ていると、声の主はグンジのようで]
あら、だったらまだあるって伝えてくれない?
[先生もお腹空いたのかねぇ、という言葉にに応えて微笑んだ]
あらあ、食べないんですか?
大きくなれませんよ。
[妙に急いた様子の相手に首を傾げると、その問いに少し考え込む。]
他愛無いことですよ。
恥ずかしくなるくらい他愛無い。
[困ったような顔で頬に手を当てた。]
[エビコの表情を見つめた後、視線を炊事場へと移動させる]
いただきますよ、食事。
[そして食器を受け取ろうと近づく]
そうですか。
他愛もない、――願い?
みんな、ずっと一緒にいれますようにって。
確か、高校卒業の頃に書いたんだったかなぁ。
[少しだけ顔を赤くして、答えると、あ、と訂正した。]
落書きじゃありません。
お願いごとです。
はい、先生。
[グンジに豚汁を入れたお椀を渡す]
[エビコの落書きの話を聞けば]
ああ、あたしも何か書いた覚えがあるわ。
お社の、後ろの柱に。
皆書いたもんだよ。
あたしなんて村を出ていく事が決まってたから、真っ先に
[昔を思い出すとからりと笑った]
そ、それは確かにそうかもしれませんけど……。
[意外にも的確な突っ込みに動揺したあと、あ!と小さく叫ぶ。]
その前のはまともですよ!
「おばあちゃんの足を治してください」ですから。
これは神様にお願いすることでしょう?
[どうだとばかりに胸を張った。]
ありがとう。
[ホズミから椀を受け取り、箸を手にする]
いや、だから、せめて絵馬に書いたらどうなんだ。
そういう風習なのか……?
[首を捻って、テーブル席へ向かう。
座るのは、恰幅のいい影の二つ隣]
[豚汁を食べ終え、ホズミに顔を拭いてもらうと、にこりと笑いかける。ややしんみりした雰囲気に、いつものように首を傾げて]
…みんな、とも、だち?
[ぐるりとみんなの顔を見渡す]
そ、そう言う風習です……。
[動揺を隠し、強引に肯定した。
とりあえず落ち着く為に豚汁をすする。
熱い汁をすすって、ふうと一息ついた。]
でも、どうして急にそんなことを?
先生も何か書きたくなったんですか?
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