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……あー。
俺も、今、見た。
[重い空気を漂わせる声に返すのは、妙に低く響く声]
俺らが頼まれた『仕事』をやると、誰かがどっかに落ちる……ってこと、だよ、なぁ。
……だから最初に説明しろよなぁ、あの兎っ……。
[今は見えない白の姿に毒づいて、それから]
厄介は厄介だけど、やらねぇわけにもいかんだろうし……ったなぁ……。
[はあ、と。ため息ひとつ落として]
まあ、こーなりゃ、開き直るしかねぇだろ、マジで。
さくさくっと、終わりにするしかねーよ。
うん……? うん、わたしがロッカだよ。
「むつか」だけど「ロッカ」。
[和真の視線が手元の葉書と自分とを往復する。
ギャラリーの名を知る人は増えていても、自分を知る者は殆ど居ないはず。
二つの名を口にされて意外そうに瞳を見開くが、続く言葉を聞けば納得が行く。]
ああ。そっか。オーナーに会ったのね。
って、……そんなこと本当に言ってたの…?
あの、省吾さんが。
[面食らったような表情で、つい語尾が上がる。
記憶が確かならばそんなことを言われたことはなかったので。
和真のお上手か、或いは少年が相手だと言う事で色を付けて宣伝してくれたのかも知れない。そこはどうあれ、撮影も宣伝も個人で行わなければならない身としては、一人でも二人でも声をかけてくれたことは有り難いのだった。]
ふふ。何だか、そう言われるとどんな顔をしていいか分からないけど。
お眼鏡に適ったなら幸い かな。
作品の方もそうだと良いんだけど。
[真正面から素直な笑みを向けられると、少しばかり照れくさい。]
何にせよ"此処"から向こうに帰ってからのことだし…
[そう、すっかり適応しかけていたが、此処は現在ではないのだった。
宣伝は妙だったかなあと思いながら、バッグを閉め直して。]
それじゃあ…みんな、また後で。
気をつけてね。
[気遣うような瞳を全員に向けたのは、また妙なことが起きないとも限らないからだ。
海辺の道に顔を並べた面々が思い思いの方向に歩き出し始めれば、皆に手を振ってから自らもゆっくり歩を進め始めた。]
何かあの様子だと予想外の結果だったみてぇだけどな。
[こちらも、はぁ、と大きな溜息が零れ落ちる]
俺達が落とすと考えると、気が重いけど。
やらにゃ進まねぇもんな。
ほんっと、よくもまぁこんな面倒事に巻き込んでくれたぜ。
[悪態のような言葉を紡いだ後、大きく息を吐いて気分転換。全てを兎のせいにして罪悪感を消すことにした]
ああそうだ。
さっきカレンダーみたらさ、やっぱ日付が10年前だったぜ。
思ったんだけどよ。
ここが10年前なら当時の人とかが居てもおかしくねー気がするんだが。
何か見かけたか?
[気を取り直して話題を変える。先程少し考えたことを祐樹にも聞いてみることにした]
予想外なあ……まあ、なんも考えてなかったっぽいし。
[実際の所は知らないが、見た目は何か考えているようには見えなかったから、さらりと言って]
そこはまるっと同意するわ……ったく、面倒だったらねぇ。
[悪態めいた言葉には、こちらも似たような物言いで返し。
もう一度、息を吐いて気持ちを切り替えた]
そう、か……。
いや、今んとこ誰にも会ってねぇな。
[貢の問いに現状を答え、それから、しばし、思案の素振り]
……まあ、もしいるなら、ワスレモノのヒントでも、もらえるかもしれねぇけどな。
─ 海辺の道 ─
私は…一度、帰ってみます。
此処に和馬がいるってことは、他にも誰かいるかもしれないし。
もしもひとりで居たりしたら不安だと、思うから。
ただ、その…また後で、合流しませんか?
えーと、どこか解りやすい場所…駅前の公園とかで。
何か変わったことがあったかどうか、話し合えた方が良いと思うんです。
[そういうと、風音荘のある方向へと視線を向けて。
それぞれ行く先は別れるだろうから、そう提案をした。
同意を得られずともせめて連絡先を聞こうとして携帯を取り出そう─
そう考えて、あ、と声を上げた。]
しまった…取り上げられてたんだった。
─ 海辺の道 ─
…携帯ないので、その、連絡とかはできません、けど。
皆さん、どうかお気を付けて。
和馬も、怪我したりしないよーにね?
[そう言うと、それぞれ思うところに向かい始めるのに倣い自分も風音荘へと足を向けた。]
─ 海辺の道 → 風音荘 ─
─ 海辺の道 ─
[呆然、と立ち尽くしていたのはどれほどの時間だったか。
がじがじ、と少し乱暴に頭を掻き、改めて周囲を見回して]
……あ。
[海の反対側に、古びた石段を見つけて瞬いた]
………考えててもしゃーねぇ。
行くか。
[しばらく兎が消えたところを見つめながら考えていたが、答えは出ないために頭を掻きながら思考を止めた。改めて進行方向を母屋へと定める]
…お、あそこって確か…。
[目に留まったのは玄関より奥にある、開け放たれた縁側。当時そこは祖父の書斎がある場所だった]
うっは、あるある。
本の数すげー。
[縁側へと向かい、そこから家の中へと入る。入った先で目にしたのは、祖父の書斎に並ぶ薬学の本の山だった]
そういやこの辺のもの、じぃちゃんが死んでから蔵に仕舞っちまったんだよなぁ…。
小せぇ頃は訳分かんなかったし、大学じゃこの辺のは使わないから読んで無かったっけ。
[手に取って中を見ると、昔ながらの薬の精製方法や、薬効についてが書かれていたりする。物によっては古めかしい、手書きで書かれたようなものまであった]
………あれ、この辺りのって本じゃねぇな。
ノート……っつーか、帳面?
[ふと気付くと、本棚の途中から薬学の本ではなく手書きの帳面が並ぶようになっていた。先に進むにつれて、帳面からノートに変化している場所もある]
そっか。
こっちも家に誰も居ねーから確認出来てねぇわ。
…ワスレモノのヒント、か。
あるかもしんねぇな。
ま、会ったら会ったでその時か。
[ヒントについて言われると、少し考えるような間が空く。それも束の間、楽観的な言葉が続いた]
― 街中 ―
…あ、藍子おばあちゃんのお店。
中学生くらいまであったんだよねぇ。
チカノちゃんや、年上のお兄ちゃんお姉ちゃんに連れていって貰って、さ。
[元来た道を辿る途中、ふと一角に立つ素朴な外装の店の前で足を止める。子供の流行をいち早くキャッチして、駄菓子からトレーディングカード、簡単な玩具まで揃えてあった店。現在は息子夫婦が引き継いで、小さな事務所になっているようだけれど。]
そうそう、此処に縄跳び。
ゴムボールでしょ、当たりくじ付きのガムででしょ、そしてうさぎ!
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