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[男は窓の外を見るヌイにつられるようにそちらを見やり、しかし角度のせいでよく見えず]
ふむ。まだ強く吹雪いてるのか。
何だろう。奇妙な場所だ。
[真剣な面持ちで言うのをくすりと笑って]
ならば、そうかもしれないな。
せめてもう天気が休まるのを待とう。
噛んだ。
せめてもう少し天気が休まるのを待とう。
そう言いたかった。
残念だ。この滑舌の悪さが。
[悲しそうに頭をふったあと、上着を手にとって]
それにしても寝すぎた。井戸で顔を洗ってくる。
ふむ。もう少し囲炉裏の傍に寄ると良い。
膝掛けは美味しい料理をつくってくれたお姉さんにあげてしまってね。
[寒いと呟いたヨシアキに気づいて、冗談めかしてすまないなと謝る。
*そして薬屋は顔を洗いに行った*]
ウオオオオ!ウオアアア!ウエエエエン!
[雄たけびが聞こえる。薬屋が吹雪の中、井戸のところで涙をぽろぽろと零し、手をしもやけで真っ赤に染め上げ、がたがたと筋肉を震わせながら顔を洗っている*ようだ*]
[男が震えながらの無我の境地の洗顔をしていると乃木が話しかけてきたことに気づいた。
半ば無意識に頷く。が、よく考えれば内容がよくわからない。]
……何を伝える?
[それは届かなかっただろうか。
歩き出す乃木を追うように管理棟へ向かう。
乃木たちが何事か話をしているようだった]
[乃木の目礼に会釈を返し、ゆるりと皆に近寄った。
続く話を聞く。乃木の言った言葉の意味を冷え切った脳で噛み砕いていく]
"道が通り次第"。そこまでの雪か。
……それが良い方なら、悪い方は?
[乃木の説明に、ああ、と意を得たとばかりに呟いた。
思い当たる地形が確かにある。そのまま流れるように乃木の説明が続いていく。連絡。鳩。羽根。]
参るな。
あまり子供たちには話したくない話だ……。
[搾り出すように言って]
ご苦労様だ。感謝する。
幾つか質問、良いだろうか。昨日から思っていたことだ。
あまりに漠とした質問かもしれない。
その上、一度同じようなことを聞いている。
乃木。私は君が終始何かに酷く注意を払っているように思う。
最初は私たちよそ者への警戒かと。考えているうちにわからなくなった。特に怪訝に思ったのは――。
[管理棟の壊れかけた入り口を指差し]
あれだった。そのときは何か聞くのが恐ろしかった。
いまは少し聞く必要があるように思う。
――乃木、いったいここには何が?
何か君が畏れることが?
[そこまで言って、恥じ入るように少し目線を逸らす]
考えすぎだろうか。
疲れていて変なことを言ってるかもしれない。
何だろう。ここにきて以来、時折不思議な感覚が私を襲うのだ。そのせいかもしれない。
[乃木を見つめて、その声を黙して聞いた。
出てきた話を聞くうちに、再び恥ずかしくなって、一瞬目を瞑る。
何を言えば良いか迷い、]
そうか。
立ち入ったことを聞いてしまった。
"人狼"。何だろう。いるのだろうか。何なのだろう。
……すまなかった。普段はこんなことを聞いたりしないのだが。
[やはり疲れているらしい、と。丁寧に一礼して、深く詫びた]
[ヌイからバケツを受け取って]
ありがとう。では行くとしようか。ヌイ。
体力が残っていれば何往復かしたいところだな。
[こくり頷いて、外へと*出て行く*]
[ちなみに薬屋はヌイと帰ってきたあと、昨日と同じ部屋の隅っこに凭れて幸せそうに寝ている。
すぐ傍には自分の分の雑炊を平らげたあとの*空の器とか*]
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