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彼の声は…
[届いたのでしょうかと呟きは尻すぼみに語尾をあげず、続いた言葉にカウコを見て瞬く。脳裏を過ぎるのは長老の言葉―――暴虐を阻む者]
貴方は…―――、………
本当なら貴方こそ生きるべきです。
僕は誰も護れない。
いかすにも誰かの死が前提なんです。
[カウコへの怯えより勝る感情が、普段は荒げぬ声を僅かに大きくさせる。―――血を分けて―――眼鏡の奥で見開いた瞳が、揺れた]
…お礼なんてしません。
言いません。
[ふて腐れたような物言いは珍しく溢れる想いを隠さず、感情のままに犬歯が食い千切る指。パタタ…流れる血は想いと同じく溢れるから、彼の望む量には足りただろう]
貴方なんて…
―――死ねなければいい。
[パタリ―――カウコと珍しく人の名を呼ばわりに差し出す血と共に、恨みがましい呟きが零れ落ちていく。爆ぜる薪の音、気をつけてとも言えず彼を見送ったのは無理に茶を勧め*引き留めた後*]
―――…、………
[カウコが去って後も焔を見つめて、思索に沈み揺らめく色を見ずとも写していた。車椅子に座して考えていたのは経験のない人の殺め方かも知れず、揺らめく焔が面持ちの影を濃くする]
いかす術は…―――
[胸元にしまう丸薬の容器を服の上から摩り、車椅子の背にそっと忍ばせたのは草木を刈る用の使い慣れた小さなナイフ。手に馴染み見慣れたはずのナイフは、別物のように写り眼差しを細める]
…しないでなくのはたくさんだ。
[見えぬ方が聞こえるものもあろうかと、マティアスの言葉を思い返し曇った眼鏡ははずしたまま。キィキィキィキィ…―――車椅子に座す求道者はウルスラの家を目指して、道中にアルマウェルと探し人の姿を捉える。
滲む視界でなければ逆に彼らは愛を囁きあって見えたのかも知れないが、今はそれがどんない遠くとも仲睦まじい二人でない事を見て取れた。まだ会話は聞こえずも、瞳を凝らすより彼らに近づいていく間に―――アマルウェルの振り下ろすナイフ]
………あ…ぁ―――
[急いで向かうより静止を叫ぶより誰かの名を紡ぐより、ただ掠れたうめきにも似る音が洩れる。ウルスラの倒れていく姿を、血を浴びる紅いアルマウェルの姿を見開いた滲む視界に写して呆然と…]
………アルマウェル…
[眼鏡をかける事もつるに歯を立てる事すら忘れ、血に濡れる彼を見上げる。幾つも幾つも―――繰り返される言葉の意味を汲めず、向けられる感情の読み取れない滲む笑みに眼差しを細め、下がる眉は前髪に隠れど面持ちは隠せず]
どうして…―――
[震える口が掠れた声で問いにならぬ問いを零し、眼鏡をはずそうとしてやっと眼鏡をかけていないのに気づく。眼鏡を取り出しかけなおせば、輪郭を取り戻す夜に眼鏡すら血に濡れる紅いアルマウェルが鮮明に見えた]
…………
[キィ…―――倒れるウルスラの傍へ寄り、身を乗り出し手を伸ばす。瞳が開いていれば眼鏡をずらし光失う瞳を覗き瞼を閉じさせ、額に触れようと]
僕は彼女を殺そうと思いました。
…こわかったから確かめたかったんです。
…―――
[訥々と語るも謝罪を呑み、まだ温かいウルスラに触れる手は、ビャルネに触れた時よりいっそうに躊躇い震える。アルマウェルの存在を気にはするも、胸元から容器を取り出した]
為さねばならぬ事は…
血を以て血を漱ぐ事なんでしょうか。
貴方の仰る終結は何で終焉がなんなのか…
僕にはわかりません。
貴方は死を見て何を感じられるんでしょう。
[紅いオーロラに似るアルマウェルへ訥々と返す間も、自らも殺そうとしたウルスラから視線をそらさない。飛び散り溢れた血の勢いは失せど、胸元から溢れる血は周囲の雪を赤黒く染めて広がっていく]
―――…ウルスラ…
[どこか正体を失って見えるアルマウェルの傍ら、それでも早く確かめようと丸薬を舌に乗せる―――塞がりきらない指先のカウコへ差し出した血の味が混じる。カクリとすぐに深い深い死の淵へと眠りに落ち、項垂れるように頭もさがった]
―――…、………
…………
[アルマウェルの傍ら車椅子に座すまま、半ば仮死状態で動かぬ時は長くはないが決して短くもない。咳き込み見開いた瞳からはぱたぱた涙が零れ、肩で息をしながらウルスラの遺体を見た]
違う………、…―――
彼女は狼使いじゃなかったんだ…
村の終焉を僕も望みません。
事の終結を願っています。
でも狼使いを殺せばすべて終わるんでしょうか。
狼は村を襲わずかえるんでしょうか。
[明けぬ夜に靡く紅い、禍々しくも美しくも見えるオーロラとよく似たアルマウェルへ、向き直る。伏せられる目、幽かな震えを含む声が語る―――死]
………残念…
きっと狼使いを見つけても残念です。
[見上げる紅いアルマウェルの背後には、靡く紅いオーロラ。彼の問いに自らの過去を振り返れども、曖昧模糊とした記憶を掴めず小さく首を振った。
―――覚えている―――ウルスラの血に濡れた空を仰ぐ横顔を見て、彼の言葉に耳を傾ける。向けられる顔を見上げていたのは、下がる眉の他を前髪では隠せない面持ち]
………忘れる事がないのなら…
産声も営みも覚えておいででしょう。
[吐き捨てるように紡がれた言葉を受け、眼鏡の奥の眼差しを細め訥々と零す言葉。村を救いたいと言うアルマウェルが、氾濫する死に呑み込まれてしまわぬ事を願うように。
ウルスラの後に関しては少し考えて、ヘイノに助けを請う事を添える。使者の面持ちを取り戻す彼へは、自らの眼鏡に触れて指摘し去り行く紅い背を見送った]
………人を呼んできます。
[ウルスラへかける囁きは、ひとり残す事を詫びる響き。キィキィキィキィ…――――車椅子の跡はヘイノの家へと伸びて、香りを頼りに訪ねた折と同じく入り口を見る]
…レイヨです。
遺体の埋葬に手を貸して頂けませんか。
出来れば貴方のお話も…―――
[返らぬ答えでなく何を感じてか、言葉は途切れ視線は足元へ落ちる。まだ新しい足跡がトゥーリッキのものとはわからずも、踏み固められた家の前まで続いていた]
…………失礼します。
…―――、………
[ヘイノの身に何が起きたのか、差し入れられた芋と鱒の塩煮の器は空になっていただろうか。名を記された札は並んでいたか、血の湛えられていたであろう器は床に転がり、赤黒い色を広げていた。
覚えある色と臭いに彼も誰かに殺されたのだろうかと考えるも、倒れた当人に外傷はない。火の消えてどれくらい経つのか、部屋はもう冷たくなり始め]
いったい何が…
[キィ…―――ヘイノの傍へ寄り、開いているなら瞼をおろして額に触れる手。まじない師かも知れないと考えた人物の死を前に、行動の手順を覚えていても状況の把握が間に合わず、混乱して躊躇い小さく跳ねた]
………ヘイノ…―――
[時を置かず丸薬を舌に乗せる手は、目覚めの不確かさに震える。かたちを違えど身を削るまじないがヘイノを蝕んだのか定かではなく、ただ訪ねた折に彼へ投げた言葉の責を取れずも眠りに沈む]
―――、………
…………
………狼使いは、貴方じゃない…
[ゼ、と肩で息をしながら倒れるヘイノを見て、歪む面持ちは目覚めに流した涙と相俟って泣き顔に似る。眠りに落ちる時のように項垂れ、住居者の遺体と部屋にある時]
………どんなお詫びをすればいいんですか。
他にも誰か亡くなったんですね…
眠りの先でほんの少しだけ気配を感じました。
貴方はメモに記した彼の他にも誰かを…
暴かれたんでしょうか。
寒空の下に置き去りにしてきたんです。
………彼女は狼使いではありませんでした。
[黙祷にも似る瞑目だけを置き場を辞す理由を、語るともなく訥々と零すのは死の淵へ眠る故か。キィキィキィキィ…―――部屋を出る時には肩越しにヘイノを振り返り、見えやすいように開くよりは何をか遮断するように扉を閉めた]
…―――
[人手を求める間ヘイノの家の後に盲目のマティアスや屈強とは言い難いラウリも訪ねたが、どちらも留守であった。彼らが森の傍で会話せずも互いに近くある事も知らず、ひとり戻ればトゥーリッキの視線と言葉―――藪睨みに怯むより前髪に隠れる眉を顰めた]
………はい…
[本来なら人手すら連れて来れぬ侘びを紡ぐのだろうが、ヘイノの姿が脳裏を過ぎりただ同道に肯定を示した。少しでも手伝えればと橇引くロープを求めた差し出しに預かるものはあったか―――息あがるトゥーリッキではなく、横たえられたウルスラを見て息を吐く]
…………
[トゥーリッキが読みあげるトナカイの症状は、ウルスラの書き残したものだろう。項垂れ膝の上で握りこむ拳が震え、歯を食いしばった]
…「やっぱり」何でしょう。
[途切れるトゥーリッキの言葉に、のろのろと顔をあげる。キィ…―――車椅子は軋み、トゥーリッキに向き直った]
………ヘイノが……亡くなってました。
他にも亡くなった方がいるんでしょうか…
[先の言葉への返事も含めヘイノと近しく見えた相手に報せる態で、死者のある場で別の死を紡ぐ。直接的に誰かに殺された様子でない事は、言葉からも知れようか。
眠りの先で感じた気配を想い、語尾はあがらずも零す声は重い。ウルスラを肩越しに振り返り、そこにある死を前に眼鏡の奥の眼差しを*細めた*]
[元の持ち主の既にない受け取った杖にも役割にも慣れないせいで、手伝う間に杖は何度か覚束ない音を立てたかも知れない。預かった杖を膝に倒して乗せたまま、憮然としたトゥーリッキの面持ちを見る間に語られたやっぱりの内容]
…ひとの病が伝染るんですか。
だとしたら癒すべきは…―――
[ヘイノの事を報せてから、トゥーリッキが目を瞠る間に受けた簡潔な回答に零す思索の断片。報せる事実をなぞる声の語尾をあげられれば瞬きだけの頷きが答え、寄せられる眉根を見る]
…………
確かめた訳ではないのでわかりませんが…
殺されたようには見えませんでした。
[文盲の求道者は見えたとてトゥーリッキの読む内容は読めず、だからなのか覗く事もしなかった。ただ記された内容を確かめ険しくなる面持ちを前に、ヘイノの死を目の当たりにした時に感じた事を思い返す]
………彼は病で亡くなったんでしょうか?
彼がまじない師だったなら…
殺したのは僕かも知れないと思いました。
まじないがどれ程に身を削るかわかりませんが…
出来るなら調べて欲しいと言ったんです。
[既に殺される危険のなくなってしまったヘイノに感じていた断片を、誰を調べる事を望んだかは添えず訥々と零す。返されない問いへは問いを重ねる事はなく、思案に沈むでもなく想う様子]
………彼の事を長老に報せに行きます。
[ウルスラの事を報せに向かったアルマウェルが、既に長老へもヘイノの事も報せているかもとは考えたけれど。自らもわからぬ誰かの死を確かめようと口を開き、トゥーリッキはどうするだろうかと視線が問うた]
貴方はどうして病の事をご存知なんですか?
[ウルスラの小屋を出る前、預かった杖の握りを確かめ暫く飾りを見てから、返す折にトゥーリッキを見上げ投げた問い。じゃ、と杖の飾りは慣れぬ扱いに*歪な音を立てた*]
[拾われぬ言葉の代わりか、呼ばわりに片鱗を聴いたか。ヘイノへ想い巡らせるらしきには、口を挟まず添え置かれた言葉に自らも彼を想う。
ヘイノに対してそれ以上を語らずにも、トゥーリッキの言葉に思い返す一幕もあり。別へ向かうらしきには眼差しだけで答え、同行を求めはしない]
すみません………
[聞きたくない報せを報せた事へ詫びを零せども、トゥーリッキの鼻が立てる音と、呼ばわり―――答えに聴くものへ思索をはせる間もなく、告げられた次の言葉]
…どうしてと問うには少し相手が悪いでしょうか。
言ったはずです。
僕は貴方に奪わせたくはありません。
………かえる心算がないなら…
もう一度だけお茶を振舞えれば幸いです。
わからなくともお話を伺いたいから…
[聞こえる咆哮にトゥーリッキから、冷気の流れ込む外へ向ける顔。何かはわからずも何事かが起こっている気配だけが感じられるから、前髪の奥で眉を顰める。
感じた死の片鱗には狼使いのものもあったと、それが誰かを確かめずとも伝えるべきと思う事。キィ…―――車椅子を進め、肩越しにウルスラを振り返った眼差しは流れ―――トゥーリッキに留まる]
…寝首をかかれても文句は言いません。
それなら安心ですから。
………そうですか。
[耳に入ったものを想い小さく呟いて、いつかと同じように礼を籠めた眼差しを向け扉を潜る。がつん―――蹴り下ろされるティッピングレバーに跳ね上がり、半ば反射的にしがみ付くと、勢い余り回る車輪にカウコへ受け渡した血を流す傷口の残る指を取られた]
………っ
[ぱたた―――傷口が開き、溶けぬ雪の上に赤黒い血が落ち、振り落とされ雪に塗れ転がる。カラカラカラ…―――車輪を回す車椅子へ手を伸ばし、這いずりそれを起こした]
…時間は差し上げました。
足りぬのなら…
それもまた違うけど似ているのかも知れません。
…………
[寄り着て己を踏む足を容れず厭わず、雪の上に再び付してトゥーリッキを見上げる。獰猛な獣のごときいろの眼差しを受け、滲む視界―――飛ばされた折に眼鏡は落ちたらしい―――を細めた]
………そうですね…
[押し殺す声は寒さにも別のものにも震えず、吐き出す息と共に刹那だけ冷たい大気を白く染める。視線で追わず傷口の開いた手だけで地面を探り、眼鏡を見つければかけ直す―――寝転ぶ正面には紅いオーロラ]
…ありがとうございます。
本当に…―――
………困ったものです。
[差し出したものと同時に貰いうけたものを想えども紡がず、車椅子から転げ落ちた求道者はわらわない。冗談めかぬ口調で訥々と夜気に零し、トン、と宥めず労う態で胸元から引き上げる足を叩き、苦しげに息を吐いた]
………はい…
早く行って下さい。
[のろのろと緩慢な動作で身を起こし、指摘を受けた指先を口に含む。紅い、鉄にも似る、ちの味]
いってらっしゃい。
[再会を願う見送りの言葉を添え、トゥーリッキを引き留めはしない。暫くは空けぬ夜の下、車椅子に寄りかかり紅いオーロラを仰いでいたか*]
カウコ…―――
[去ったトゥーリッキの紡いだ名をなぞり、彼の死を未だはっきりとは知らずも、舌の上に広がる血の味に想う事。地を踏まず腕だけでやっと車椅子に戻る折、そこに小さなナイフを見た]
…………
…もう申し訳は立たないんじゃないかな。
[狼を遠ざけるのに難儀すると零したトゥーリッキをいかせ、車椅子に座す求道者は呟く。キィキィキィキィ…―――血の滲む指先は冷えて感覚も鈍いのは幸いか、激しくなる吹雪の中を長老のテントへ向かい進む]
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