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[部屋を出て行った、ユウキとヨシアキの後ろ姿を見送って]
……行っちゃいましたねぇ……。
何で呼び出されたんでしょか?
何か悪いことしたのかな??
…なんやろねぇ?
同性同士の恋愛行為は風紀に反するからとかやろか?
[彼らが火星探索調査隊として宇宙へ送り出される事になったと知るのは、多分もう少し先のお話。]
事務局の人も、手紙なんて知らないって言ってたみたいだし。
そもそも。この手紙って、ホントに学校から来たのかなぁ……。
[ピラピラと、手紙を弄びながら独りごち]
[赤い染みのついた名簿。
そのタイトルには改ざんされた形跡。
訂正される前のそれは、第2期調査隊員候補生名簿。
職員室から何者かが持ち出したものだったりとかしたりするかもね。]
いこいこ♪
まだこのガッコ、見てないとこ多いんや。
[菊ちゃんと連れ立ってテクテク廊下を。]
…なぁ、菊ちゃん。
菊ちゃんは、なしてこのガッコに転校してきたん?
[並んで歩きながら他愛のない話。]
[ワカバにホームズ帽子を被せて傍らを歩く]
名探偵コンビですよー。うふー。
[ワカバの問いには]
えと。引っ越して来たんですよ。
そしたら近くに面白そうな学校があるから、どうせ編入するならここへー!って。
そかそかー。
越してきてガッコあったから来たんかー。
ウチと逆やなー。
[ふと、空を向いて憬れるような視線。]
ウチなぁ、夢ぇあってん。
その為に無理やり引っ越してこのガッコ来たんよ。
地球って、もう狭いやろ?
あちこち場所とりあって、喰いモンも燃料もとりあって。
せやからなぁ、空の向こうに…
[窓の向こう、飛行機雲。]
火星ィあるやろ?
あそこ、な?
頑張れば人住めるようになるかもしれへんねん。
赤い赤い大地を、緑の若葉で一杯にしてな?
ウチの故郷はもう狭くてどーしよーもあらへんから…
けどな?
そこ独り占めにしようとしてる奴らがおるんや。
なんや【JINRO】とか云うたかな?
そいつらが火星ィ独り占めんしてナ?
ウチの故郷の調査隊も、何回も行ってんけど…そのたんび機材ぬっ壊されておじゃんや。
…せやから。
[人差し指の先、とまるてんとう虫。]
そうなんだ……。夢かぁ。素敵だなー。
やっぱあれですか?宇宙飛行士になりたいの?
[ワカバの視線を追いかけて、飛行機雲を眺める。続く彼女の言葉には首を傾げて]
火星かぁ……。随分前に、調査団が入ったんですよね。
えっと。
故郷って、どこ、ですか?
【JINRO】……聞いた事あるような。
独り占めは良くないですよねっ。
みんなで仲良く分け合わないと。お菓子もそうです。
[ぐっと握りこぶし]
南パライソや。
太平洋の海のど真ん中。
宇宙船飛ばすにゃ最適な国やで。
[秘密やで、と口元に人差し指を立てる仕草。]
…ま、観光と宇宙船基地しかあらへんのやけど。
だからナ、そゆのんは死活問題やねん。
なんとかして火星分けてもらわなあかん。
…調査隊、また行くらしいしナ。
…なによ、紅葉ちゃん?
だいじょーぶ、悪いようにはしないよー。
うまい事口説いて協力させたいからね、うん。
ま、半分くらいはホント…なんだけど。
なんと!?郡上八幡さんは、生粋の日本人だと思ってましたが。
うんうん。秘密、秘密ね。
ほえー。調査隊また行くんですか?
今度はどこの国が飛ばすんだろ?
案外うちの学校だったりしてねぇ。あははー。
[まったくもって能天気に、空を仰いでいる]
それにしても、随分詳しいですね郡上八幡さんは。
それに比べて勉強不足だなー私。
何となくこの学校来ちゃった人だから申し訳ない感じ……。
でも!今日からは、私も、郡上八幡さんの夢に協力しますよー。同じ転校生仲間としてもー。
頑張って火星行きましょう!
だったらえぇのになー。
[一緒に空を仰いで。]
もし、うちらでいけるんやったら、一緒いってくれる?
菊ちゃんみたいな素直で可愛ぇ子と…一緒に夢ぇ追えたらえぇなぁ思うねん。
[それは菊子と若葉が連れ立って部屋を出る数分前の事。クルミは若葉と芳秋の痴話喧嘩を横目で見つつ]
結城センセー、それを言うなら「痴話喧嘩は水星人も食わない」ですよ。
[ちゃっかり訂正なんぞを入れていた。]
ふ〜ん、でもおかしいですよね。わたしが特選(以下略)を戴いた時には、見回り係の話も通じていたんですけども…。
[結城が携えた戦利品の赤福をしげしげと眺める。何処か釈然としないものがクルミの心の中を渦巻いていた。]
事務局長、物忘れでも始まったのかしら?
[指に付いた餡子を舐め取っていると、若葉を誑し込んでいた(?)芳秋と結城が放送によって呼び出され部屋を出て行く。
そして転校生同士ということで意気投合したらしい若葉と菊子も部屋から出て行くのを見送り]
そして誰も居なくなった…。なんて。
[季節はずれの天道虫に興味がなかったのか。クルミは一人残された部屋で古いファイルを取り出し、眺め始めた。]
へぇ、随分面白い記事…。
[クルミが取り出したのは新聞記事を切り取りファイルした物だった。
その内容は火星探査宇宙船「かなた」と「こなた」の打ち上げから始まり、こなたから送られてくるデータ、そしてかたなとこなた以降、火星探査は尽く失敗している記事までずらりと並べられていた。]
ニッポンの宇宙船だけ探査に成功しているって変な話よね。何か裏でも有るのかしら? ニッポンだけが火星人に賄賂を贈っているとか。
[まさかね。
そう呟きペラペラと捲るページの下、埋もれるように書かれていた【JINRO】の文字に、果してクルミは気付いただろうか?]
[残り一個の赤福を頬張っていると、前触れなく実行委員室のドアが開いた。]
えーと…事務局の人ですか?
[静かに入ってきた、見たことの無い人物に、クルミは目をぱちくりさせて尋ねる。]
[クルミの問いに、相手も不思議そうな顔をして尋ねてくる。
事務局とは何ぞや? と。]
事務局って…あれでしょう? ほら、見回り係…
[言った途端に相手の表情が曇る。ふとクルミの脳裏に先ほどの結城の言葉が蘇ってきた。]
『見回り係の名簿なんて存じ上げませんが?
手紙?何のことでしょう』
あの、おじさんはこの手紙に見覚えは…?
[近くに置いていた通知書を手渡す。
一瞬の間。
中年の男は首を横に振りただ一言こう言った。]
『学園ではこういう物は一切出していないですよ?』
[その後、訪問者は一言二言クルミに告げ、部屋を後にした。]
…一体何がどうなっているの?
[訳がわからないといわんばかりにソファへと座り込んだ視線の先には、確かに事務局から手渡された名簿が目に入った。]
事務局も無い、見回り係りなんて端から存在しない。だったらこの名簿は一体なに…?
[血糊で汚れてはいたが、まだ十分読めるようだ。クルミはその名簿を手に取りまじまじと眺めた。]
あれ? この名簿、この部分が何か…変。
[一部明らかに手を加えたような跡を見つけ、何とかもとの文字を見ようとするが、うまく見えない。]
んもう、肝心な所が解んなきゃ意味が無いじゃない…。
[机に投げるように手放すと、その拍子にそばに置いてあるお茶が名簿に掛かった。
あっと思ったのも束の間、怪我の巧妙か改竄部分が浮き剥がれ、元の文字が浮かび上がってきた。]
あ。マイナスがプラスになる事もあるのね。えーと…なんて書いてあるんだろう?
んー…? 第2期調査隊員候補生名簿…?
調査隊員って何処の調査に行くんだろう? てかうちの学校で、調査隊員募集なんて今までしていたっけ?
[増える謎に困惑しつつ、何か手掛かりになる記事はないかと、再びファイルを捲った。
と、そこでクルミはある一つの興味深い記事を見つける。]
ん? これって…今置かれている状況に非常に良く似ているんだけど…?
[そこに書かれていたのはとある噂話を纏めたもの。【JINRO】と名乗るスパイ集団が火星探査を妨害していることと、宇宙飛行士の卵を無作為に火星へと送り、労働力としているという話。]
見回り係と称して無作為に人を集めていたのも…。火星へと派遣するための…罠?
[そう考えると、何故自分達が集められたのかも納得いくような気がした。]
じゃぁ、この学校にも…いや、見回り係の中にも【JINRO】と名乗るスパイ集団が居るって…こと?
[ファイルから視線を上げ、電光掲示板を見つめる。そこには先程まで確かに名を連ねていたアンや銀水、芳秋、結城の文字はなかった。]
…四人の名前が消えてる。でも見回りは終わりじゃない。と、言う事は…まだスパイは居るってこと?
残された二人の内どちらかが。或いは二人とも…。スパイの可能性があるのかしら?
でも二人ともスパイだったら、何故連れ立って部屋を出て行ったのかしら? 単にわたしを拉致っちゃったら任務終了でしょうに。
ということは、森山さんか若葉さんの内、どちらかがスパイの可能性があるって事になるの…かな?
だとしたらわたしは…
[ぱたりとファイルを閉じ、クルミは立ち上がった。]
あの子を信じる。だから本当の事を教えに行かなきゃ…。
[ファイルを机の上に置き、クルミは実行委員室を後にした。
信頼する"彼女"に会う為に。]
間に合うと良いけど…。
[文化祭で賑わう校内で、クルミが目的の"彼女"と出会えたか否かは、本人だけが*知る未来*]
わわー。えへへ。
[ワカバに抱きつかれて、照れる]
ん?何か、耳の後ろがチクチクするなぁ。
えいえい。
[てんとう虫の這っていく感触に、耳の後ろを掻いてみるが、既にナノマシンは髪の毛の中にもぞもぞ入っていった]
さて。どの辺を見回りましょか。
牧野下さんを誘えば良かったなぁ。
二人じゃ迷子になっちゃうもんね。
[と言いつつ歩いているが、ワカバの足取りには迷いがない様に見える。先に立ってスタスタと歩いていく]
地図読むの上手いですね。
なんか、道知ってるみたいだもん。
同じ転校生仲間なのにこの違い。あははーー。
[しかし。ワカバの手には簡易構内図は握られておらず]
郡上八幡さん?どこ、行くんですか?
何か、人通りが少なくなってきましたよー、この辺。
[ちょっと不安になって問いかけると、『大丈夫。大丈夫』とワカバがにっこり笑うので]
はあ。……まさかね。杞憂、杞憂。
あははー。
[にへら、と笑い返した**]
さ、こっちやで〜♪
[すたすたと菊ちゃん連れて手馴れた様子で廊下を突き進む。]
『根回しももう終わってるし、あとは…
うん、それだけだよね?紅葉ちゃん。』
[骨伝導の通信機で、外部でバックアップ体制を敷いてる相方と連絡を取りつつ、例の場所へと誘導。]
『ちがうよー?協力してもらうだけだもん。
…騙してるうちに…はいるのかな?これって。』
[ワカバの背中をのんびり追いかけながら。ふと、窓の外を見上げる]
良い天気だなぁ……。
[抜けるような空の、その向こうにある赤い星を想像してみるけれども、宇宙の事は、ずっと遠い話に思えた。少なくとも、この日常のすぐ先に続いている現実だとは*思えなかった*]
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