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旧暦6月。その地方は毎日がお祭りだ。
――『 六月燈 』。
一帯の神社が、持ち回りで縁日を立てる。
平日も休日も関係ない。
お社の大小も関係ない。
昨夜はあちら、今宵はこちら。
何しろ毎晩やるのだから、
よその夏祭りと比べたら派手さはない。
毎夜、毎晩、灯籠並べて、浴衣着て、
梅雨明けのからりとした夕風に涼む。
そんな祭りも終わりは割と賑やかで、
花火は上がるし観光客もやってくる。
城山の麓、照国神社の六月燈。
繁華街にほど近い大きな参道へ並ぶのは、
淡い数千の灯籠と、百を超える屋台の列。
旅情に酔うひとも、
郷愁に浸るひとも、
祭りの終わりをしっとりと惜しむ。
喧騒とは無縁の賑やかさ。
そして、
其の雑踏には「思い出屋」がいるという――
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噂では、どんな風に「思い出」が手に入るかも、
対価がいかほどかさえもはっきりとしていない。
ある者の話ではトランクケースいっぱいの札束、
別の者の話ではぶたさん貯金箱いっぱいの小銭。
さらに別の者の話では、金では駄目だと
つっぱねられたなどと雲を掴むような話。
ただ、共通しているのは
縁日の『その』一画に、思い出を売っている
思い出屋がいるらしい、なる漠然とした話だけだった。
…だから、精一杯を、ありったけをかき集め
ひそかな期待を胸に六月燈へやってくるのは、
気付
――――自らきずけなかった思い出を欲するひと。
築
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[思い出屋村のストーリーライン]
プロローグ:本編の前日にあたります。
一日目:照国神社の六月燈がはじまります。
二日目以降:テキ屋のネギヤが思い出を買ったようです。
思い出屋の実在を知った各人は……
エピローグ:六月燈が終わる夜です。後日譚も是非に。
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[宿に着いた作家は、玄関先へ
荷物を置いて大きく伸びをする。
空港から市内までの道のりは慣れぬ景色を
眺めながらでも幾分か遠いように感じて、
シャトルバスの中では居眠りをしていた。
こわばった身体をほぐしながら
見上げる南国の空はひどく青い。]
[作家が宿の女将の丁寧な出迎えに
やや愛想なく受け答えをしている折、
―― ずん。と低く空気が響いた。
振り返ると、海を挟んだ対岸の火山から
真っ白な噴煙が昇りはじめるのが見える。]
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