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月。日。
――月、――日。
奇妙な感覚に襲われた。書かれた日付が、どうしても読めない。いや、確かに読めてはいるのだ。何月何日と確認する。その瞬間は間違いなく読み、また理解もできている。
だがそれを思い返そうとするとこれができない。何月と書いてあったか。何日と書いてあったか。把握したはずなのに微塵も思い出せない。
もう一度読む。読める。また、思い出そうとする。するとやはり思い出せない。
私は本当にあれを読めているのだろうか。読んだ気になっているだけではないか。不安に思い、ノートに書き写してみようかと思った。そして黒板を見直す。
読めない。見た瞬間は書かれた文字が何であるか、わかっているのに。読もうとするとどうしてもできない。
これでは書き写すのとて不可能だ。私は仕方なく諦める事にした。目的地を忘れた事といい、私はもしかしたら何か病気なのかもしれないな、とぼんやり思う。
……ん。
誰かが迎えに来てくれたら、嬉しいね。
[ルリの言葉に、何か悟ったように頷き。それから慰めに同意し、口元に小さく笑みを浮かべ]
ルリ、といっただろうか。明るい良い子だ。おじさんと呼ばれるのも慣れれば悪くないような気がする。姪がいたらこんな感じなのだろうか?
姪。そういえば先月も伯母に見合いを勧められたばかりだった。そろそろ家庭を持って落ち着くといい。作家などというやくざな商売は――など――耳にたこができるほど聞いた台詞と共に。
自分はまだ独り身でやりたい事があるから、とこれもいつもの台詞で断ったのだったが。
そう、なら良かったよ。
体育の成績は悪くてね。
[ふう、と息を吐いてみせ。立ち上がるリウに]
あ、私も手伝うよ。
[と言って*後を追い*]
[訝しげなソラには、いや、と言って視線を逸らし。庭に出ると岩を運ぶ手伝いをし出したが、そのうちにまた賑やかな声が玄関の方から聞こえてくると]
……?
[一度手を止めて、窺うようにそちらを見やった。ここからでは様子は、*わからないが*]
[ふいにスーツ姿の男、テンマに話しかけられて、やや驚いたように]
あ……はい、今晩は、初めまして。
私は石田冬樹と申します。
[仮にも好敵手認定をされているなどとは露知らず、反射的にか幾分かしこまった調子で挨拶し返し]
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