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……ぁ。
[人の流れの向こうに警官の制服が見えて立ち上がった。
何度も家出少年と思われて派出所の世話になったことがあったから]
ちぇ。
[母親にもらったお金をポケットにしまいこんで歩き出す]
さーみっ。
マフラーが要るかなー。
雪降りそうだし。
[雪が降ることを考えると自然ににーやりと。
ポケットに手を入れたまま、肩をすくめて住宅街へと]
―ケータ宅―
うおおおーまた勝ったー!!
[悪戯一味は揃ってTVゲームに夢中。
対戦ゲームで怒涛の10連勝を記録してばたり伸びた]
オマエらよえーよー!
[ごろんと横になったまま文句を言えば、
オマエが強いんだと言われて脇腹にパンチが入る。
ぐぇ。とカエルが潰れたような声をあげて体を起こして]
そろそろいかね?
[一味を見回してにいいいいと歯を見せた]
―藍住中央公園―
[入り口の近くの茂みの中。
公園のそばの交番が見える場所に身を潜めて。
木切れを数本、石を支えにしながら斜めに地面へ刺し、
空ペットボトルで作ったレールを置く]
あーもうちょい下、右みぎ…おっけ、そこそこ
[地面にはいつくばってその向きを確認して]
ビニール袋からコーラと何か小さな物を取り出す]
こっからが時間勝負だかんな。
[一味は僅かな緊張と、大きな大きな期待を込めた
なんとも言えない表情を浮かべ
射出口用意!
[一味のうち二人がフェンス際の茂みに手をかけた]
発射台用意!
[一人がさっき作った発射台を手で押える
よーっし!いくぜ!
[コーラと一緒に取り出した小さな物の包みを開けて
中身を2粒手に取ってコーラの中に落とす。
急いで細工をしたペットボトルの蓋で栓をして
発射台に飲み口を下にして置いた]
発射!!
[言うと共に栓をはずす。茂みが二人の手で掻き分けられると
そこにはぽっかりとフェンスに開いた穴。
勢いよくコーラを噴出しながら、
ペットボトルはフェンスの穴を抜けて交番へ向かって飛んでいった]
[やがて聞こえる騒ぎの声を背中に受けて
意気揚々と犯行現場を後にして]
『サッカーやろうぜ!』
おー。やろうぜー。
[サッカーボールは秘密基地に置いてある。
それを取りに集団で向かう一味の後ろからは]
マテ…オマエら…今度という今度は……!
ゆるさねえぞ……
[自転車に乗った若い警官が、
ぶつぶつと文句を*言いながら……*]
―自宅―
『あんた、いいからそこに座りなさい』
[母親に嗜めるような口調で言われ、
しょぼんと食卓の椅子に座る]
『これで何度目だと思ってんの』
[普段ならばええと…などと指を折って数える振りをずるのだが
さすがに今はそれは出来る空気ではなくて]
『あのね。お母さんはあんたに悪戯をよせって言ってるんじゃないのよ。
ただね、やるなら………もっとうまく。
嫌な思いをする人がいないようなものをしなさいっ』
[にいいと笑う母親の顔は子どもとそっくりだった]
いってらっしゃーい。
[つまらなそうに口を尖らせ、玄関の扉が閉じるのを見る]
…ちぇ。
[居間へ戻ってごろり。頭の上で腕を組んで]
かーちゃんたち呼ばなくてもいいじゃん…
あのオマワリ…
[それはもう、こっぴどく怒られた。
悪戯一味は全員母親を召喚され、
警官と母親からのダブル説教で反省を通り越してぐったりと]
くっそー。
[このまま怒られたままで済ますものか。
逆襲する方法を考えつつ、小さな体には長時間の説教も重かったようで
ふああと欠伸をすれば寝息を立てて、*くったり*]
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