[「知らないおじさんからものを貰ってはいけません」。
そんな注意文なら自分がこの子くらいの歳だった時によく聞いた。
「知らない女の子からものを貰ってはいけません」
――とは一度も聞いたことがなかったが、
どちらにしろ要点は“知らない人から何かを貰うな”だから同じことだ。
そんなとりとめないことを考えてしまうくらい、
彼女にとっての知らない相手であるこの子が何故飴玉を?]
(もしかして……私と同じ?
私のことを仲間だと思って……)
[ならばお近づきのしるしとしてこの子にも何か渡さねば]
(お金? 10円玉渡しちゃう?
いやいやいや……)
[とっさに浮かんだ案をすぐに却下する。
しかしすぐに渡せそうなものがそれくらいしかないのも事実]
[視線がそれらふたつだけでなく、
楽器ケースの脇にちょこんと置いた学生鞄もうかがい見るようになるまで、
そう時間はかからなかった。
――が、鞄の方は数秒で見るのをやめた。
再度少女に向き直り、飴玉を指差しながら、]
………、綺麗な色ね。
[そんなことを呟いた。
そんなことしか呟けなかったともいう。
お行儀がいいか悪いかなんて、そんなこと気にしていられる余裕はなかった。
この場に親がいればこの子にいい顔はしなかっただろう、とは、
頭の隅で思考が働いたが。
車内を見回しても、この子の親らしき姿を見つけることはできなかった]
[彼女は己が放った問いに少女からの答えが返るのを待っていた。
待てる限り待つつもりでいた。
途中で電車が駅に止まったとしてもそこは降りるべき駅ではない。
彼女の方に時間はまだあるのだから]
ありがとう。
リンゴ味は好きだよ。
[はしっこをつまんで飴玉(リンゴ味)の入った袋を受け取る]
でも、えぇと……、私。
お返しにあげられるものを持ってなくて。
[それでもいいのという言葉は、少女の様子を見ていれば消えた。
心情は想像するしかなく、当たってるとも限らないが、
ともかく少女がいっしょうけんめいに差し出してくれたのがこの飴玉なのだから]
(ありがとう、お仲間さん)
[ちゃんとした(?)お礼の言葉はひとまず胸中にとどめて―――
それとは別に胸中にはさっきから、
少女を見てどこか懐かしいと思う気持ちがあった。
こんな時間に、親と離れて、電車に乗っている少女という光景。
その、実例が。身近にいたせいか]
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この流れからどうケンとのあれを拾い上げるか方策はかんがえようとしている! る!!
とりあえず実例=妹というのと、
キー曲を情熱大陸にしたいというのをめもめも(選曲理由:バイオリン)