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マタギが森や山に入るのは当たり前のことだ。
それを人狼の容疑とは恐れ入る。
「自警団の奴ら、まるでわかっちゃいねえし」
大体、だ。人狼が本当だとすれば、容疑者を一所に集めようが被害が収まる訳がない。毎日容疑者を一人ずつ……などと、この中に人狼がいるというのなら、今、この時に全て殺すのが村を守る上では――
「そう、正しい」
バクは、ため息をつく。
「まあ、そう言う意味では自警団は優しかったっていうわけか」
彼らがどんな思いで容疑者をこの場に集め、逃げ出すアンの後ろ姿にどんな言葉を漏らしたのか、バクは知らない。
「だからって、ぶん殴るのは止めないけどな」
ぱし、と拳と掌を打ち合わせる。
それこそ生きてここを出られたらの話だが、と、頭をよぎった言葉は口にしないまま。
だよな。
ゲッカさんの料理最高。
[ゼンジの言葉に、上着の中でしわしわになっている封書への怒りはすっ飛んで、満面の笑みになる。
「ごっはん〜 ごっはん〜」と歌いながら、誘われるまま、片足跳びで食堂へ]
腹減ったー って、あれ、ユウキ先生もいるのか?
[思わずゼンジの後ろに半身隠れる程医者を恐れる迷い子は]
……。先生、後で診てくれる?
いや、階段から落ちて。
[必要なときに大人しく頼る程度には、ユウキという人を信頼している]
じいちゃんはいるって言うけどな、人狼。
まあ俺は見たことないし、熊のが対処できて助かるけど。
あ、そうだ。俺、バクだよ。
じいちゃんと一緒にマタギやってる。
[幸せにふくれた腹を撫でつつ、お茶を待つ間、視線は物珍しそうにンガムラとグリタを行ったり来たり*]
ンガムラ……さん、だっけ。
化粧って、神楽舞のとは違うのか?
ツキハナねーちゃんにもできる?
え、なに!? 出た!?
[自分の言葉に慌てだすツキハナに、びくりとして後ろを振り返ったりするものの、チカノ、ンガムラと言葉を掛けられるたびに声を裏返すから、ただただ瞬き繰り返した]
確かにねーちゃん、洋装も似合いそうだけどな。
帝都の人はもう、みんな洋装なのかな?
[ンガムラと帝都の話をしていたグリタに、首を傾げてみる。
直後、びしりと手刀を繰り出したゲッカが見えて、がたと椅子を鳴らして後じさった]
ない!
ていうかふつーに驚いた!
[マタギ、仕事中、酒のまない!
思わず片言になりつつ、薄く笑うゲッカに勢いよく頭を振る。
羊羹とお茶が出てくる頃には落ち着いて、未だ席にある人を見回すけれど]
あれ……そういえばアンは?
[上着から封書取り出すと中を確認する。
名簿の名前、一人足らない]
それならいい。
自警団の言うとおりに集まる必要もないもんな。
[自警団が何をするかわからない。その不安を振り払うよう、硬く、笑う。
羊羹が無くなれば、意を決してユウキに治療を頼む*]
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