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エッちゃんは祭りで何たべるんだ?俺っちがエッちゃんに何かおごってやっても、いいんだぜ!
へへっ、なんてったって、エッちゃんはかわいいからなっ。トクベツってやつだ!
[悪戯ガキんちょないつもの空気しか出せないが、それでも本人的には精一杯ませたようにエツコに言ってやるのだ。
がま口財布もきっと精一杯だろう。]
[エビコと向かう道の向こう
もうすぐ辿り着く神社のあたりの空をなんとなく見上げて]
きつねぐもだなー。そういやばあちゃんは、きつねぐもがなんだって言ってたっけか?
[『きつねぐも』の話はばあちゃんに口うるさく聞かされたりしたものだが……真面目に聞いていないガキんちょだ。はて、ばあちゃんはなんて言っていただろうか**]
[ぱたぱたと駆けて行く。
一度帰って浴衣に着替えてくる、とかすれば、可愛げの一つも出るのだろうけど、そんな風には頭は回らない。
今、頭にあるのは、祭りの空気に触れたいっていう、それだけで]
……あ。
[急ぎ駆けていた歩みがふっと止まる。
理由は、何気に見上げた空にかかる雲のせい]
なんだっけ、あれ……。
[祖父だか祖母だかが言っていた名前は、確か]
……きつねぐも?
[浮かんだそれを復唱する頃には、祭りはもう目の前。
意識はすぐに、空のくもからそちらへに向かう]
[暮れゆく空に浮かぶその雲の名は諦めて、袖の中でちゃりりと小銭を鳴らす。
楽しみだ、でも自分はもう酒さえ飲める歳。
十何年も前の過ちはもう流石にしないし、する訳にはいかない、なんて一人笑う。]
かき氷の食い過ぎで腹下し…
あん時ゃガキだったな。
[その分、祖母の腰はシャンとしていたし、今よりずっと元気だった。
今では随分老け込んで、今日も病院に行く>>15と言っていた、筈だ。
それでも「あんたは楽しんどいで」なんて言えるのだからまだまだ元気な方だ、と思う。]
ばあちゃんも誘えばよかったかなあ。
あー、や、じいちゃんと行くっつってたか。
[まあともかく、そろそろ出店に品が並び始める頃だろうか?]
[俺が子供の頃この村に住んでいた関係で担当者になったようなもんだ
3年前に転勤の辞令が出たが必死で止めたのが作家先生だった
少し前に奥さんが亡くなり酷く落ち込んでいた所で
縁も所縁もない担当者まで変わるならば筆を折ると
普段温和な作家先生が編集長に猛抗議の電話をかけてきた]
(縁ねぇ…)
[俺の父も若い頃は編集者だった
家に居る時間は短く働きづめだった父]
(今の俺も待遇は大して変わらんけどな
違うのは家庭がない位か)
[出版社は違えども若かりし作家先生の最初の担当者が俺の父だった
俺は遅くに出来た子だったから父は大変喜び
作家先生に名付け親になってもらったとかで
結構親密な関係にあったらしい
その後父は転勤になってしまったが
時折作家先生を訪ねて村を訪れていたようだ]
[今の出版社に就職して
偶然作家先生の担当になったのは縁が呼んだのだろうか]
[作家先生の家から祭り会場までは下り坂が続く
途中に子供の頃通っていたドウゼン先生の診療所があり
先生が窓から空を眺めていたので軽く挨拶をして]
先生、お久しぶりです
相変わらず難しい顔をしてますね
[先生の見ている先を振り返ると少し赤くなった雲が流れている]
(あれはきつねぐもだっけか…)
[あれが狐雲だよ。
そんな言葉を聞いたがあんな形だったろうか。
昔に一度見ただけなので思い出せない。
]
……。
綺麗な夕焼け。
[雲とは全く無関係な感想が口をついて出る]
[祭りに向かう人の群れの中、一瞬だけ、荷物を持ったまま来た事を後悔したけど]
今から引き返すのもなあ……。
[そんな思いがあるから、そのまま、屋台の並ぶ通りに飛び込んで]
えーっと、ラムネ屋さんはー……。
[最初に探すのは、祭りの時の個人的定番]
[しかし気になるのは、雲よりも祭りの出店。
いつしか意識は空よりも下の方へと]
引っ越す前はお祭りなんて見たことないから
ずっと楽しみだったんだよねー♪
[自然と笑みがこぼれる]
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