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〔地を覆う、幻想的な白。
其れは進む道に敷き詰められ、続いている。
まるで杏奈という姫を迎える為に敷かれた、
"居城"までの絨毯の様だ。〕
……ふふ。
〔文学部の部長は、表出している性格と反し。
内面はそんな夢見がち少女。
自分だけの絨毯を踏みしめ、我が物顔に胸を張る。〕
灯りが足りなくてよ、セバスチャン。
もっと足元を照らして頂戴。
本当に気の効かない執事だこと。
〔そんな雰囲気に酔ってか、一人芝居。
しゃくしゃくと踏みしめ、おほほ、と笑う。〕
……。
〔笑いの数秒後。芝居を止め立ち尽くしては、〕
……バッカみたい。
〔現実に戻る言の葉を一枚、雪道へ降らす。
その程度の分別はついた、夢の様だ。〕
……ついたら、ゆっくりしよう。
続き、読まなくちゃ。
〔しゃくしゃくと歩みを再開し。
呟きながら鞄の中へ伸びていく、手。〕
楽しみ…。
〔ほぅ、と息を吐き。
瞳は再び、夢見がちな色で染まっていく。
鞄から這い出た手が所持するのは一冊の本。〕
あっはっは。
バレンタインプレゼントとは言ったが、チョコレートだとは一言も言ってないぞーぅ?
…行っちゃったな。
[予想通りの反応を見せる息子にそんな言葉を投げ。
荷物を手に、後を追った。]
ま、あれはちょっとしたサプライズでな。
本物のプレゼントはこっちだ。ほれ。
[コートの内ポケットから小箱二つを取り出し、座り込んだままの息子に手渡す。]
万年筆と機械式腕時計だ。社会人になったら使え。
んじゃ、ちょいと仕事行って来るわ。またな。
[鞄と紙袋を手に、管理棟とは違う方へと歩き出した。]
[適当に彷徨い、見つけた家屋の扉を手当たり次第にノックしていく。]
ふーゆきせんせー、隠れても無駄でーすぞーぅ?
年貢の納めどきというやつですなーぁ?
[人の気配が誰だろうとあまり気にしていないよう。
もしかしたら、読書中の誰かを邪魔することがあるかもしれない。**]
[鍵を開けて家の中に入る。頬被りとサングラスを取り、荷物を置いて家の中をゆっくりと練り歩く]
聞いていた通りの場所ですね。
綺麗で静かな村。いかにも、精霊たちが好みそうな……
[微笑み、傷の残る柱を手で撫でながら独白。やがて畳の上に大の字に寝転んで眸を伏せた時、外からノックの音と男の声が響く。顔を顰めて体を固くし、嵐が去るのを待った]
はあ。どうやらここにいても安息の時は訪れなさそうです。
……名残惜しいですが、明日の朝にでも発ちましょうか。
[家屋に途中、時折立ち止まっては村の風景にカメラを向ける]
んー…いまいち。
…?
[遠くに見えた雪に浮かぶ黒点に気づく。目を凝らし、それが傘だと気がつくとそちらにレンズを向ける]
白と黒。
雪、降ってないのに…。
[呟くと白くなった息が寒さを知らせる]
あ。これがさっきの?
[足早に歩を進めると、まだ花の咲く気配もない花水木に出会う。シャッターを切るが顔をしかめ]
これじゃ管理人室にあった写真の方がマシね。
[自嘲気味に溜息をつき、今度こそ部屋にたどり着いた]
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