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血を以て血を…―――
[向けられる顔にアルマウェルに顔を向け、空を仰ぐ彼の横顔を見上げる。確信か仮定か定まらぬアルマウェルの言葉をなぞり、彼とは逆に項垂れるように俯いた]
…………
貴方の仰る 苦痛 が何を指すのか。
僕にはわからないですけど…
見据える先が違わぬ事を願います。
[寒さに身体の先端が痛み出すころ今度はアルマウェルに顔を向け、彼の顔を見上げる。眉の下がるのは前髪に隠れども、面持ちまでは隠せない]
[灯が去れば、また足を動かして。
そっと、行列を追う。
供儀となる少女の貌を――生きている時の貌を、せめて目に焼き付けておきたい。たぶん、そういうことだ。
開けた場所に、行列はたどり着いただろうか。
あくまでも遠巻きにそれを眺めながら、視線が探すのは捧げられた少女のすがた**]
好きでいるんだろうさ。
何もなけりゃ、もっと旨い餌がある場所に
とっとと逃げちまってるんじゃないのかい。
これだけ寒い場所では、少しの油断が
命取りになるからね。
多少の打算はあっても、それだけじゃとても、ね。
だからこそ、互いに助け合って信じる心が
必要になって来るんだけど……。
[短く言葉を切って、あの事について語る]
どうやら狼遣いってのは
人の心も利用するものらしくてね。
[雪を手に。解けるそれをぎゅぅと握り締めて想うことは]
……。どうしろと、おっしゃるのかしらね。私にはとんと理解及ばぬ出来事よ。
より生きたいと想う者が生きるだけではありませぬか。
ドロテア様はそうお思いではなかっただけ。
気遣う必要がどうしておありに?
本当に難しいこと。わからない…。
[ぼんやり、オーロラを眺め、たいまつを眺め。口にあがる言葉は聞きとがめられぬように呟いたつもり]
[ビャルネの吐息が、目の前を流れる。
涙に視界が歪んだわけではない、と自らに確かめて
浅く俯き…はじまったのか、との声にたぶんなと添え]
…目をそらすな、と何かが言う。
…他に見るべきがある、と他方で言う。
気がかりなのは、変わらん。
ドロテアの望みを思えば――見送れんよ。
[やがて去り行くヘイノの背には、またなとだけ告げた]
[ふらり出歩けばビャルネ達の姿が遠くに見えようも、彼の家の前だと知れば何とはなしに近づくことはなく。
ヘイノが群れから離れるには暫し目を留めるもそれだけ。
目が合うようなら片手の一つも振るだろう。]
――何も、進まないな。
隠したまま引き出すなんざ出来ないだろうが
……其れ以前の問題だ。
[やれやれ、と息を吐き、贄の娘を想うも刹那。
足だけを前に進めながら、赤い空を見た]
―自宅前―
[ウルスラがトゥーリッキに告げた最後の言葉にちらりと視線をそちらに向ける。]
……人の心も利用、か……
なるほどのぅ……
[ポツリ、呟き。
トゥーリッキの頷きにはうなずきを返し。
じゃらりと杖を抱えなおす。]
わしらはわしらのやるべきことをやるだけだろうて。
それが――ドロテアへの手向けともなろう。
[静かに言葉をつむぎ。]
[そして――ふう、と白い吐息をこぼしてから、二人を見やる。]
長老は口にしておらなんだが……狼使いに味方するものも、一人おるようじゃの……
[伝聞のような、あやふやな言葉が冷たい空気に溶けた。]
……もし、違うものであるならば。
どちらが正かを決めなければならない。
だが、それだけの話だ。
[顔を正面に向き直らせる、と、レイヨを向いて]
しかし。嗚呼。そうだな。違わなければいい。
現となった兆が、跡にならないように。
[感情の吐露を避けるような、迂遠な語り口は、普段と変わらず。ただ、ぽつりと]
私欲を含めるとすれば、尚……
いや。詮無い事か。
[小さく零しては、首を振った]
…――…
――やはり、…――、
[ぽつり くぐもった声で独り語散らせ
森から離れ小屋並ぶ集落へと足を向ける。
ざりざり、ざくり、特徴的な音がなる]
[ドロテアの表情はどうでしたでしょうか。この目では見えません。伏し目がちの瞳は、見えるものを見ぬようにする為かどうかは知らぬこと]
……。私、おかしいのかしら?
赤い空も、こんなに綺麗。私なら、歓迎だわ。
[痴れ者のようにとぼけた言葉、今度は風にも流れましょう。ふと視界の先にトナカイを見、そのまま赤い空をうっとりと眺めやりながら]
…ああ。有難うだ。
[――相棒の、旨い餌。
夏には事欠かぬものの、冬は覚めれば無く…飢える。
凍えぬよう目覚めぬよう人肌で温め続ける蛇遣いは、
獣医の言葉に感謝しながら、遠い雪解けを想った。]
…この地には、それがある。あたしも知ってる。
利用――ひとの心を?
[ひとつ瞬いて、ウルスラが明かす話を傾聴する]
するものらしい、というのは…誰とした話だろう。
聞かせてくれるといいが――先生。
互いに疑い合うように仕向けるとかね。
そういうのを狙ってるらしくてさ。
全く面倒な連中だよ。
……だね。
無駄にするわけには、いかないね。
[犠牲となる娘を思い、ビャルネの呟きに言葉短く頷く]
狼遣いに、味方?本当なのかい?
だとしたら、どうして長老は……
それに触れなかったんだろうかね。
――凶兆の徴と知らなければ綺麗なのかもな。
それこそ、ヨソの人間や子供なら。
[流れて来たイェンニの声には唐突に声をかけ。]
この状況で"歓迎"ってのは些か想うこともあるが。
[此処へ来て長くは経たない相手の意図ははかりかね。
他方で聞こえた特徴的な足音――否、杖の音だろうか。
鳴らない杖を持つのはマティアスだろうとあたりつけ。]
あら。ごきげんよう…かしら?
貴男も悼まれるお方?
[唐突な声かけには流石に目も僅か見開きます]
赤は、好きですの。長老様は赤は凶兆とかおっしゃいますが。
綺麗という言葉に罪はありませんでしょ。
まるで血のよう。赤はキライではないの。
[ドロテアはこれからその赤を流すのでしょうか。期待の声だけは悟られませぬよう]
もしかしたら……
寒い分、人の温かみが欲しくなるのかもしれないね。
[冗談のように少し笑みながら語る。
話の続きを促されて、それに答える]
それは、カウコとした話さ。
偽物のまじない師が、無実の人間を狼遣いだと
告発する可能性とかね。
まじない師は狼遣いが誰かを知ることができるけど
そこを逆に……って話さ。
しかし、ビャルネの話が本当だとしたら……
ますます、おかしなことになりそうだね。
[細められる視線の先にある行列を*見つめて*]
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