93 じんろうさまのかみかくし村 〜まよいみち〜
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下宿人 チカノ
『犬じゃないよ、狼だよ』って3回言われたけど
［道すがらお守りの絵柄を見つめながら、巫女さんの顔を思い浮かべる］
どう見てもブタじゃない？
［養蚕工場の横を通り、ヒマワリの迷路に辿り着く］
【赤】 記者 グリタ
妖精が降りたとも聞くが――まぁ、いずれは呼ばれるだろう。
[くすくすと聴こえてくる笑い声に、並ぶ名前を眺めていた顔を上げると少し黙り]
…来年も向日葵が咲くといいがな。
[指先を見下ろし、すり合わせる。
僅かに残る金色の粉がこぼれ落ち、消えた]
下宿人 チカノ
つぎは、私？
［半袖のツーピースの腰の辺りで、ポシェットの紐をぎゅっと握る。
中には例の手紙が入っているが、開くのが憚られた］
下宿人 チカノ
お祭ってひとりじゃ寂しいな……
［開業医に勧められたので祭に来てみたが、知り合いがいるわけでもない。
焼きトウモロコシを頬張りながら人ごみを進んで行く］
下宿人 チカノ
この村でちゃんとやっていけるのかな私……
［不安が増大して涙が浮かんでくる。
顔を上げると、遠くに若先生と学生が話しこむ姿が見えて小さく手を*振ってみた*］
若旦那 ゼンジ
つぎは、あなた？
［通りかかったひまわり畑。
不安げに紡ぐ少女の独り言を拾い］
来年もひまわりを見たいなら――
［微かに笑みを浮かべ、ひとり詠う。］
少なくてもあたしは見せてあげる*
学生 ヨシアキ
こないと次はあなた…。
何処に行けばいいというのだ。
[ところてんを片手に屋台を冷やかす。
催し物の書かれた板が目に入り、足を止める]
ほう、謡い。
【赤】 若旦那 ゼンジ
妖精が？
［響く、柔い低音に初めて知る態で驚いてみせ］
でもそうね。いずれ呼ばれるでしょうね。
かみさまに。
でも、来年も向日葵は咲くわ。
少なくてもあたしか貴方、どちらかが居る限りは。
［からんと足許で鳴る、乾いた下駄の音。
零れ落ちた花粉が、ほのかに立ち上った。］
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