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[夜の風が雨の匂いと湿った空気を運んでくる。昼間の太陽の下奪われていた力が、ふつふつと満ちてくる。]
あははははぁー。
ようやく調子が出て来たなぁあー。
昼間は暑くていけないぜぇ。
さあて。
夜遅くまで悪さしてる子は誰かなぁー。
くくく。
[少しずつ深まっていく夜闇の中へそっと思念を広げていく。]
…あ。pt増えてる。まだ二日目続くんだね。
進行を上手く把握できてないですよ。帰宅後パートかな。
そういえば、時代設定を調べてみたわけですよ。
今からおよそ50年前ということは大体1960年(昭和35年)前後になるんだね。
終戦(1945年)から約15年だから、新しい日本という国が復興し始めていた活力のある時代だったのじゃね。
具体的に判りやすい資料を探してみると映画「三丁目の夕日」が丁度その頃の時代を描いた作品だったようだ。
[コハルの声が聞こえると、へなへなと座り込んだ。
鞄を握り締める手の力は依然として抜けない]
コハル〜……。
びっくりさせないでよ。もう、やだなぁ。
アン、帰ってきてたりしないかなと思って。
でも、家ん中、すごい静かだった。
[謝罪の言葉には、大丈夫、と首を振る]
[気が抜けて座り込む少女を見ていると、何故か笑いがにじんでしまう。]
怖がりなのに、一人でこんなとこ歩いてるからだよ。
そうか。アンちゃんの家に行って来たんだ。
静かだったって。それって。
誰も家に居ないってことなのかな?
まず、ひとり。
みぃーつけたぁ。
暗くなってもお家に帰らない悪い子だあな。
くくく。
[外灯もない細い道の闇は、どんどん深くなっていく。]
どうしようか。
今もうここでつかまえちまおうかぁー!?
ぐぐぐふ。あはあは。
それともそれともぉおー。
笑ってないで助けてよ〜……。
どんだけ驚いたか知らないくせにー。
[再び首を振って]
灯りはついてるし、人影もある。
けど、アンが帰ってる感じはしなくて、近寄りがたかった。
……何もしないで帰ってきちゃった。
たぶん高度成長期の田舎の村なんじゃね。ここ。
資料を当たると冷蔵庫・テレビ・洗濯機の三種の神器の他、扇風機など家電製品が普及し始めてた。
そして自動車。いわゆる大衆車が出現して普通の国民も自動車を持ち始める時期みたい……。
原付はどうだったんだろうと思って調べだしたんだけど、たぶんこの時代の学生は普通に自転車だけだね。
……バイトはどうだったんだろ。
職人見習いに近い気するね。職人気質の下働きとかですげえ体育会系な指導を受けていたに違いありません。んー。自動車工の見習いにしよう。無愛想な顔で油塗れになって怒鳴られながら仕事しているのが耕一には似合うと思った。
もうね。全然時代背景認識してなかった。もう少しでコンビニって言い出すとこだった。一先ずジャスミン茶でも飲もう。
……自動車修理工なんて村にあるのかなー。
いや、ある。あるんだ。大丈夫だよ。
たぶんちょっと遠いところまで電車で行くんだよ。
お金だけでなく技術を学ぶために頑張って通ってるに違いない。
大学にいって、生来の夢は修理工ではなく、車を一から作る企業に入ることだ。そうしよう。
よし、これで雰囲気壊さない程度に把握したはず。
ふー。焦っちゃったよ。もー。
ごめん。ごめんって。
[と言いつつも、クルミに言われるとますます笑ってしまうのだった。それでも手を差し出し、彼女が立つのを助ける。]
[アンの家の事を聞いて。]
そうなんだ……。
……みんなさがしてるんだし。
大丈夫だよ。
[この根拠のない言葉を口にするのは、一体何回目だろう……と思いながら呟いた。]
[立ち上がっても、膝が笑っている。
つられてクルミも笑い出す]
あはははは。もう、しっかりしろよ。
[コハルの手をぎゅっと握り締める。
既にクルミの中では、アンのことよりも、自分の名前が書かれていたあの手紙のことが気がかりでならなかった]
人攫いの、犯行予告だったりして。
でも、うちお金持ちでもなんでもないし、だからといって借金もしてないし。
……してないと思うし。
どうしよう。ねぇ、あの先輩なんなの?どうして私の名前なの?
[毅の店でも、少女の失踪についての話題で持ちきりだった。ある者は家出だろうと笑い、またある者は誘拐だと息巻く。...がクラリネットを吹き止めて話を聞こうと腰を浮かすと、カウンターに座った壮年の男がぼそりと呟いた]
『神隠し…』
[...は、カウンターの向こうでグラスを磨いていた毅と顔を見合わせると肩を竦めた]
[しがみつくように手を握ってくる目の前の少女の声が、微かに震えている気がした。]
こんな時だから、気になるだけだよ。
それだけだよ。
なんてことないの。
偶然なんだよ、偶然。
犯行予告ならわざわざあんなトコに紙隠さないでしょ。
ポストに入れるとか黒板に書くとかさ、するでしょ。
[まるで言い聞かせるように、ゆっくりとした口調で。]
[物騒だから、といつもより随分はやい時間に『もう帰れ』と言われる]
なんだよ、毅さん。
いつまでも子ども扱いするなよ。
俺、もう半年で社会人なんだぞ。
[...の抗議にも聞く耳持たないといった風に追い出され、仕方なしに家に向かって歩き始める]
ちぇ、面倒くさいことになったな。
ん?
[街灯の灯りの中にこはると来海の姿を認めて]
あれは…片方はうちの制服だな。
おおい、ちょっと聞きたいんだけどさ。
[すっかりと暗くなった道、電灯を頼りに路を、ナオは本を片手に歩んでいました。日が沈んで気温が下がったとはいえ、涼しいとは言えず、温い風が頬を撫ぜてゆくのに、眼を細めました。パラパラと頁が捲れて、ある一文が目に入ります。その単語を指先でなぞって、それから、口元を押さえました。]
……ぞっとしない。
[呟く言葉と顰める眉とは裏腹に、ナオの唇は、緩やかな弧を描いていたのでした。
ふっと、顔を上げます。目の前の街灯は切れかかっていて、断続的に明滅し、その先の灯りは失せていて、頼れるのは月と星の光ばかり。周囲には薄らと、けれど深く、*闇が広がっていました。*]
そっか。そうだよね。うん。
[自分を納得させるかのように、深く何度も頷く]
[それでも、心は一向に落ち着かない]
コハルは、こんな時間にどこ行くの?
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