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[ミルクの湯気で伏し目がちの瞳は微かに曇るかのよう。
ビャルネからどう返事が返ろうと、ただ柔雪のような微笑を浮かべて、彼らが辞するまで、取り留めのない話を続けるのでしょう。
あぁ、赤が見えるならそれはそれでうれしいこと、と。胸裏は何も伝えずに*]
[レイヨの小屋の中、炎に照らされた赤は、陰影が濃くなり。今もその場にいるかのように正確に光景を伝えた。白い手袋越しに手へ温度が伝わるのに、少しだけ表情が和らいだが、本当に微かなもので。問いに頷き]
……目視しなければ、本当には伝えられない。
刻み込まなければ。
[呟くように口にし、告白のような言葉を吐くレイヨの顔を見つめ返した。別れる間際には]
恐らく、そうなるだろう。
今度は強制もされないだろうが。
[問いの欠片にそう返し、男は次の場所へと向かう]
[ビャルネに伝達する途中も後も、男はいつもと同じような表情をしているように見えただろう。イェンニには会釈を返し、再びの伝達をしてから]
……、
[やるべき事。何が知りたいのか。二人のやり取りに、僅かに思案するような間を置いた後、目礼をしてその場を辞した。男はまた、*歩いていき*]
―イェンニのテント―
[イェンニのテントの中へと足を踏み入れる。
促されるまま、椅子へと腰をおろし、トナカイのミルクを受け取り。
杖を腕の中に囲う様にして、両手でカップを握る。
イェンニの問いに、僅かに眉をしかめる。
かんがえるようにしばしの間が空き。]
そうじゃな……
狼使いには死んでもらわねばならぬだろうて……
[なによりも、と続く言葉はとても小さく。]
孫娘を犠牲にした長老が納得せぬだろうからなあ……
[まだよそ者だというイェンニの顔へと視線を向ける。
ゆるく肩をすくめて]
わしの言葉に重きを置くのはお主の勝手じゃが……
わしとてすべての責任は負えんよ。
……そうさの……無辜の者に手をかける恐さはわしにもある。
[ゆっくりとミルクに口をつけ。]
だが……あの場に集められたわしらは、すべて容疑者じゃからのぅ。
――無辜の者を手にかけたとて、咎めはなかろうな……自信の心以外には……
[ふ、と僅かに息をつき。
カップのミルクをゆっくりと口にする。]
……指針がほしければ、ひとつあたえようかの……
――トゥーリッキは狼使い……ではないようじゃよ。
[こと、とあいたコップをテーブルへと戻しながら、それだけを告げる。
じゃらりと杖を鳴らして、椅子から立ち上がり。]
――それじゃあ、わしはこれで失礼しよう。
[イェンニが疑問を浮かべたとしても、
やんわりと笑みを返すだけでそれ以上口にはせず。
イェンニのテントを辞して、また村の中へと出て行った。]
…よけいなおせわ――
[カウコの言葉に、思わず口元に浮かべるは柔い
表情。
続く言葉に、うん、と頷いて]
…そうだな、――そうだ、な…
[納得した風に、また2度 頷いた]
…俺に出来る事 を考えた時に、――な。
説得に応じるような輩なら…
――否、応じるような輩でも、俺には、難しい…かな…
――…一言、か…
…そうだな…――目見えぬ俺の文字が読める事を期待しよう…
[男なりの軽口を添えてから
杖を持つと逆の手を伸ばし、カウコをぽんと一度叩いた。
腕の心算だが、見えぬゆえに違ったかもしれず*]
[一度自身の小屋へ戻り、眠れぬなりの休息を取った
蛇遣いは相変わらず首元にいだく大蛇をあたためる。
…ぐず、と奪われる体温を思い出すように鼻先へ音。
火の前に胡座をかいて、膝へ置いた笛を見詰める。]
…… 吹かんよ。
[室内にても燻る、しろい吐息。短くあわい呟き。]
とむらいに奏でるには、向かん音色だ…
[言ちて、灰色をした素焼きの笛を、毛皮の下へ。]
[立ち上がり、蒸気で曇る窓を袖口できゅと拭う。
気泡混じりの硝子越しに見えたのは、イェンニの
テントから出てくるビャルネの常の如く杖持つ姿。]
…む、しまったな。
イェンニは戻っていたか…まあ詮無い。
[行き合えずじまいの妹分の帰着に気づけなかった
失策へ、舌打ち。それでも今ひとり訪ねる予定の
あったビャルネを追って――厚い毛皮を纏い表へ。]
…腰を上げたかね、白髪頭。否…腹を据えたか。
[書物漁りをひとまず置いて出歩くらしい男へと、
吐息のしろい帯を唇から引き…そう声を*かけた*。]
[ほう、と白い息が空気に溶けていく。
じゃらり、杖を鳴らしながらゆっくりと踏み出した足は、掛けられる声にとまり。]
――お主か、トゥーリッキ。
そうさの……わしがやるべきことを、な……
[腹を据えたというように頷きを返す。]
……ああ、イェンニに、お主は狼使いではない、と告げた。
[天気の話をするようにさらりと本人へも、告げる。
細めた目に僅かに笑みを浮かべ、問題なかろう?というように、首をかしげた**]
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