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Q どうして田中さんを口説いたんですか?
A かわいいから。一家に一台欲しいでしょ、田中さん。
Q ダイイングメッセージの内容が厨二のままですが?
A 死ぬ時までそのままにしておきます。
最後になにを願うか、現状ではわからないから。
Q 彼女いないんですか?
A 居たらもう少し、前向きになれると思うんですけど、ねえ…
午後:五階廊下
[ぼんやりとした僅かな時間を屋上で過ごした後、午後は入院患者の治療処置を行った。
前回よりも目に見えて回復している患者もいれば、治療自体が無意味なレベルまで進行している患者も存在する。常であればその結果に一喜一憂し、励ましの言葉を送るところであったけれど。
言葉はただ、機械的に音と成していくだけだった。
その後、5階のナースセンターへ足を運び、看護師へ担当患者の指示を行った。
散々思案した挙句、やはり柏木に声を掛けていこうと、531号室へ向かう途中、窓辺にて彼の姿を捉えた。]
[青と白と橙のグラデーション。柏木の描く絵よりも明度が暗いかもしれないけれど、何処か似ているその風景。その中心に佇む柏木の姿は翳りを帯びて、浮世離れした荘厳さが滲んでいる。
掛ける言葉を見失い、離れた位置から動けなかった**]
[暫く動かぬままに、柏木の姿を見つめていた。
様子を窺っていた訳でもなく、風景に溶け込んだ柏木の姿が現実なのか夢なのか、その判断さえも出来ぬほどに見惚れていた、のかもしれない。]
――柏木さん……!
[自分の上げた声に驚いて目を瞠る。色の洪水に柏木が吸い込まれてしまうような錯覚を覚えた所為だった。
あの色の洪水こそが、『柏木を追うもの』なのでは、などと妄想が、過ぎった瞬間だった。
彼が気づいてくれたなら、「何でもないです」と片手を左右へ振りながら数歩、彼へと近づき]
明日も、いい天気になると思いますよ。
明日、散歩に行きませんか?
[叫ぶように呼んでしまった所為か、柏木は驚いて振り返ったように、見えた。
己は、笑っていた。
勿論、嘲笑の類ではない。
微笑んで、いた。
『何か』に怯える柏木を無意識にも同志のように感じていた。
覇気の感じられぬ柏木の声が鼓膜へ伝う。
まだ、自分が『あいつら』に見えているのかもしれないと、朧げに悟り。
明日、明るい陽光の下、会話をすれば…、彼の心に巣食うもののかたちを教えて貰えるかもしれない、などと思考を巡らせ。]
じゃあ、また明日。
[一方的に約束を取り付けて手を振り、柏木に背を向け階下へ向かうべくエレベーターへと消える。
それが、最期に見た柏木の姿、だった*]
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