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ねぇ坊や
[突き抜けた先、地面に踵を擦り付ける]
私はね、貴方みたいな坊やのここ……
[ガツッと鈍い音が響く]
ここを可愛がるのが仕事なの
[身を屈める。
血は流れ続けるけれどまだ足りない。
はたして人は痛みだけで死ぬだろうか]
いつも噛み千切ってやりたいと思ってたわ
[優しい仕草で頬をなぞった。
血濡れていても未だ綺麗な顔。
口元はやはり濡れていて]
[ゆるく首を振った。
喉は絞まって、うまく呼吸すらさせてくれない。
喘ぐように口を何度も閉じ開きして、自意志の及ぶ範囲が狭くなっていく。
そんな中で、左右に振られた首は、今までしに従順だった男の見せた、初めての、ささやかすぎる抵抗だった。
もう、声を出せるほどの力はない。
けれど死ぬこともまだ許されていない。
ヒールが身体を貫く度にびくりと大きく痙攣するだけだ。
それを痛みとして認識できているのか、もう定かではなかった。]
[頬に触れる手。
その手に、揺らいでいた首も、止められてしまう。
ほんの僅かな生の抵抗も、もう。
うっすらと、閉じたままだった目が開く。
最期に女の顔を一目見たかったからなのか、それとももう筋肉の力が抜けているからなのか。
己にすら、知るすべはない。]
あらぁやっぱり声が出ない?
[左右に振られた首に小さく舌打ちを洩らす。
もう一度唇を重ね、そして大きく音をたて啜った。
二つの下品な音は真っ赤な唇に相応しいもの]
何か言いたいことはあるかしら
[問いかけても、もう聞く気はない。
立ち上がると、乱れた姿のまま最後の笑みを贈り]
またね、坊や
[薄く開かれた瞳目掛けて、綺麗なままのもう片方のヒールを降り下ろした]
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