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だから一番やってみたかったことをやってみたんだ。
楽しかったよ!
[いつもの張り付いたような笑顔ではない、それこそ心からの、心底の笑顔。]
ボクの手で、人が死んだんだ!
それは、そう
とても ……とても楽しそう
[赤く濡れた指で少女のように己の頬を包む。
とても、うらやましかった。
確かに楽しかったのに、女を手にかけるのは楽しかった、けれど。あれは一瞬の――否、一瞬ですらなかった。時の狭間に快楽と共に消えてしまった]
ううん? ボクに?
そうだな、"殺す"はできたけど、"死ぬ"のはまだやったことがないからな。
悪くない提案だよ。
[近寄る女の、肉欲煽る肢体。
瞳同士が合わさる。彼女の帽子を濡らした赤が、よりリアリティを呼び起こした。]
いいわよ?
私が何か、払えばいいのね
なぁに?
[瞳を大きくして、そのまま近づけた。
唇をほとんど触れさせるようにして]
身体、とか?
[囁いた]
身体は、なあ。
どっちでもいいや、そこまでは。
死ぬ間際に女抱きたいとか、そういう下世話なこと考えるほど、飢えてないし。
でも。
[触れそうな唇同士の間、一本人差し指を差し入れてから。]
キスしてよ。
最高のやつ。
[赤い、赤い舌を出して、人差し指をゆっくり舐めあげる。
関節のあたりを食んで、甘く歯をたてた]
随分安く売るのね
……嫌いじゃ、ないわ
[音を立て人差し指から唇を離す。そのまま唇を捉えようと舌を伸ばして――]
だって、最後のキスが死人とじゃ、悲しいでしょ。
[ああ、そうだ。あの時またねって言ったんだった。
今度は幽霊同士でキスすることになるんだろうか。]
好きって言ってよ。
[伸びてくる舌を、迎えるように唇が開く。
自然と、眼鏡の奥の色が細まった。]
[舌を差し入れ、焦れったいほどゆっくりと歯列をなぞった]
やだ、貴方
あの子とキス、したの
[眼鏡に手をかけ、もう一度唇を重ねる。取り去ることが出来たなら、瞼を閉じ深く重ねようと]
[唇とその奥で繋がっている間は、言葉を発そうとしない。
問いかけには肯定の意で頷いただけだ。
眼鏡が取られることに抵抗はしない。
どうせあと何時も見えちゃいない視界なのだろうから、割れてしまったっていい。
詰めた息を吐く。口吻をする女は、ひどく焦れったく感じて、そのまま噛み付いてしまいたくなったけれど、耐えた。
深く重なるなら、熱い舌同士で交わることを求めた。]
[深く追って、時折僅か隙間をあけてわざとらしく音をたてる。
濡れた音が入るだろう耳を擽り、項へと指を滑らせた。
あの女の首を割いた時と同じよう、今は何も持たぬ手を動かして。
どうやって殺してあげよう。
激しくなるキスにものぼせぬ頭で*考える*]
ん、
[くぐもった声が鼻の奥から漏れた。
耳に触れる指先。擽るようにささやかに動くだけなのに、みだらに思う。
首に触れれば、否応なく傷のあったあの首を思い出した。
ぱっくりと。白いものすら、覗かせて。
その逆さまを辿るように、ウルフの首だって、
――――別の女のことを考えてしまった。
人生最後のキスなのに。目の前のいい女が、こんなに扇情的なのに。]
[ああ、そうだ。
あの時傷口の開きを教えたのも、この唇だった。
ぱっくりと。今にも、何かを補食しそうな。
その唇に、今喰われている。
言いようのない満足感に、ただ酔った**]
……ねぇ
[唇を顎から喉へと滑らせる。
どくどくと脈打つ血管の上でとまり]
何、考えてるの…?
[胸に置いた手に少しだけ、力をこめる]
……キミのこと。
[そう言えばこの女は喜んでくれるのだろうか。
指先は首を辿る。首は命を繋ぐ生命線だ。
力が入り、死への期待に喉がこくりと鳴った。]
やぁね
[とん、と胸を押した。
少しでも傾ぐならば、そのまま相手を引き倒そうとする。無理やりにではない。ここが寝室ならば、きっと自然だろうくらい、手馴れた仕草だ]
嘘は、女だけに任せて
男の嘘は、役立たずだもの
[女の力は、踏み込んで耐えようと思えばいくらでも耐えられた。
それでも、ふらりと傾いだのは、ひとえに抵抗する気の無さ故に。
かつてこれほどまでに殺されることに従順な男がいただろうか。]
優しく、してよ。
[ここがビトウィーン・ザ・シーツなら、きっと言うべき立場は間逆であるはずの言葉。]
優しく、愛してあげる
[押し倒した身体。裾を割り開いて露にした膝で、胸のうえにのりあげる。
服に手をかけ肌に指を滑らせる]
痛いかも、しれないけど……
[ゆるく、首を傾げた]
男の子、だもんね
泣いてもいいのよ?
めちゃくちゃに、されてもいんだけどね。
[女の体重。その重さが官能的だ。
また、自然詰めていた息を深く吐いた。]
そうするのは、どっちかってと、ボクの趣味、だから。
いいんだ。
[泣きやしない。はずだ。
受け入れるように、目を伏せる。]
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