[インスタントヒーローめいた感傷だが]
( それでも。
――…"追い出される"ほうが、
さいわいなのではないかしら。)
[そう考えていたから、
エレベーターを降りるらしいナオへ頷いた。
行って、と。掴み合いや罵り合いにならず
降りられるうちに、降りたほうがいい と]
[そうして、前に立つチカノの背中越しに
降りゆくナオの後ろ姿を見ていたはずが。
照明がちらついた次の瞬間、]
… Σ いたっ?!
[やたら低い位置にある額が、
ナオのつまさきに蹴飛ばされていた*]
/*
私さんが三分ヒーローあきらめてらしたので自前描写!
ネタにマジレス陣営は無茶振りにもくじけません。
チカノメモ>こちらこそ手抜きでごめんですよ…
わら半紙入れたほうが実際わかりやすい
["追い出す"ことは、言葉ほど簡単ではない。
躊躇いとか、偽善とか、そういった言葉がついてくる。
サヨの手をにぎったまま、マシロとナオを見つめていると、ナオが上の階に放り出したあの錘をとるためにか、本当に降りてしまった。]
あ……、待っ
[いざ行かれると怖いなんて――ひどく身勝手で滑稽だ。]
[けれどナオに気をとられた一瞬――ほんの一瞬に。]
……サヨ、ちゃん………?
[手にしていた体温は少しの余韻を残して薄くなる。
みえたのは、まだ余韻消えきらぬそのひとの――くび。
隣をみることができない。
けれど手探りに、彼女の手を探すかのように手はふわふわとサヨがいたはずの場所を泳ぐ。]
[そんな中、何かを祓うようにマシロをはたくチカノ。
うつろな目を這わせて言葉の意味を舐める。]
チカノちゃん………?
[判る、と。
霊感だと言った彼女がマシロを"そう"と判別したらしい。
けれど――]
もし、誰かが犯人、なら。
どのみち私には……。
[暫しチカノを見つめた後、マシロの言葉を待つように視線を動かした*]
まさか本当に出て行くとはな…ハハッ!
[アナウンスに急かされ、友人に促され。
名指しされた少女は、少し躓きながらも迷わず走り去る。
見送る姿に、憑りつく者は美しく笑む。
涼やかに、声を高らかに。]
更におひとり様、ご案内いたしました。
お客様、よきお時間をお過ごしくださいませ。
――永遠に。
[生首だけになった少女の姿を見遣り、目を細めた。
扇状に広がる美しい髪が印象に残る。
嗚呼、そう言えば先に案内をした少女も。
美しい長い髪だったと知る。]
さぁて、次は…
[残された少女の顔を見て、目を細める。]
[チカノの言いなりになって、駆け出したナオを。
私は止めなかった。むしろ自分の状況がとりあえず無事になるだろうと思い、胸を撫で下ろした。
卑怯だな。
自嘲した。
その矢先に見えた、サヨの頭が転がっている光景も。
私はただ、見送った。]
[疑心暗鬼――
5人居た時には選択肢を減らすという言い訳をしてチカノの言葉を信じ、3人になると漸く、"本当にそうなのか"、という考えが首をもたげはじめる。]
でも、サヨちゃんを違う、って言った……
[そのサヨは、消えてしまった。
少なくともサヨが違うということは正しかったはずだ。
自分にとって自分は潔白だ。
マシロを"そう"だと判じたことは、意味を返せば自分を"そうではない"と言ったことになる。]
だっさ……
[チカノを疑う要素を探している。
さりとてマシロを信じる要素を探すわけでもなく。]
追いつめられると、
ほんと、自分のことしか考えられないんだね…
[呆れたように自らを分析し、しばし思考の*渦の中*]
[「3分間だけヒーローになれた」。
それはサヨに似つかわしくない言葉だから。
私は空耳だろうと思うことにした。
たった数分の間、アンが生首になり、更にサヨまで生首姿になった。そんな状況下で冷静で居られるはずもない。]
ねぇ、エレベーターが無事一階に着いたらさ、ナオが食べたがっていた「「あみん」のパンプキンパイ」、買いに――…
[室内にはもう、強制退去を命ずる声はなく。ただ警告を告げるようなブザー音だけなっている。
私は憔悴しきった顔で二人を見ようとしたが。]
――…あのさ、私が何をしたっていうのよ。
[まるで壊れた機械人形のように、額へと手刀を繰り返すチカノに。私は呆れながら文句を言った。]
知ってるよ。霊能とかっていう奴だろ?
夏にお誂え向きの話の延長かと思ってたが…気でも触れたか?
[そう、さっき確かにチカノは言っていた。
悪戯する者が判る、と。]
それと、誰かが犯人ってさ…
[私はヒールを軸にくるりと向きを変え、ワカバを見つめた。]
なぜこの中に犯人がいるって思えるのかな?
こんな狭い部屋に居るのに。首だけ先に置ける訳ないでしょうに。
私は、七辻屋のまんじゅうがいい。
[そう言いながら、もうひとつ。
少女は手刀を見舞おうとして、その手の行き場をなくす。]
…なるほど。マシロ。楽しそうだな。
私を見逃して、何をしたいのかと思ったが、そう言うことか。
[君も、いつも楽しそうだったよ?私は失笑する。]