かいちょーは、難しいこと言いすぎ。
殺すか殺されるか、だけだよ。
[溜息ひとつ。背中の手斧に右手を掛ける]
イマリ、ぷーさんの事嫌いだったけど、いまはよくわかんない。だってどっちかは死ぬもの。どっちでもいい。
でも、イマリは生きたい。
“向井雅史様”
[それは、女の子らしく少し丸目の綺麗な文字で。
宛名が書かれた封筒が届いた時の、嬉しかった気持ち。
少年自身は、大分、前に忘れていただろう。
──けれど、このふたつだけは覚えている。
返事を書こうとして。
何度も、何度も書いては捨てた手紙。
未だ幼く素直になれなかった少年は、結局、その返事を返すことが出来なかった。
そんな自分自身が、とてももどかしかった切なさと。
そして。]
“私、みんなの事、大好きだよ。離れても友達でいてね”
[その言葉。書き記された古い手紙は、今も机の引き出しの奥に仕舞われたまま]
─A02─
[もう動くことの無くなった学才服の身体。
爆発した首輪は跡形はなく。
血に汚れた胸の前、寝癖がついたままの頭を深く項垂れるようにして。
普段のように、眠っているように少年は廃屋の壁にもたれて座っている。
自分の選択肢が、どんな結果に辿り着いたか。
そらすら知らぬうちに、少年は時を終えていた。
──遠く。遠く。
静まり返ったエリア内の向こう。
誰かの慟哭が響いたのに呼応するように。
……ゆらり、と頷くようにその頭が揺れると。
静かに壁を滑り、その身体が倒れ。
それきり、その廃屋に音は無くなった。]**