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― 自身の小屋 ―
[戸を開ける前から、中に気配を感じる。
眉を中央へ寄せたまま、手を伸ばして内へと姿を見せた]
…――盗るものはないぞ…
[子犬の気配だけではないそこに、
低い声を向けた]
――痛。
こら、噛むのはいかんぞ。
笛が吹けなくなると困る。
[まだ尖らぬ牙を立てた子犬を窘めると、
無邪気そうないきものは我に返るよう。
次いで――戻り来たマティアスの姿に
振り返って あん と高い声を上げた。]
おや、戻ったか。
盗るものは…無いかね?
/*
ふーむ。ヘイノとラウリは大丈夫かのう。
というか、ラウリよ……おまえ、トゥーリッキがLWになってしまうではないか……!
そしてヘイノ、お前が落ちたら占い師がいなくなるww
どうなることやらなぁ。
…無いと思うが…――
[少なくとも金目のものは。
呟いて、背で扉を閉める。
家内は、外ほど杖で慎重に地面を擦らなくても、歩く事が出来る]
…――、茶でも淹れるか…?
――邪魔する。
[扉を開いて、中に入り一拍の間。
火の傍へと促されれば促されるまま。
茶を煎れに向けられた背を眺めやり、かける言葉]
先に、質問に返しておこうか。
[告げて、少し思案する間を置いて]
何もしなければ、長老から指示が出て――
誰かが死んでた、ことが前提か。
[事実、テントへと人が集まったのは沙汰を聞くため。]
長老の指示通りに誰か殺せば、間違っても後悔なしか?
元より、長老の言葉を免罪符にするつもりはなかった。
人一人殺すのに、
「命じられたから仕方なく」とは言いたくない。
[ほどなくすれば茶の香りが漂うだろうか。]
間違いでも、俺は自分でビャルネを疑って殺した。
そして、後悔するくらいなら最初から――しない。
が、答えでいいか? 納得しろとは言わない。
[後悔"出来ない"と同義にとられようと、自分の中では"しない"と定めて動いているから。]
[声をかけられて立ち止まる。イェンニの姿を認め、その話を聞いた。ビャルネの件を仄めかされると]
ビャルネは、埋めてきた。
[そう、簡単に答え]
理を考えれば、恐らく。
思うところがあったのだろう。
疑心であれ、保身であれ。
疑心も保身が含有するものではあるが。
[カウコの事に話が及ぶと、ぽつりと返してから]
[どことも定めぬまま、村の中をさまよっている。
ただ、名を呼ばれれば引き寄せられるのか、カウコがヘイヨに後悔しない、と告げるのを聞く。]
……殺しておいて後悔されるよりは、されぬほうがよいわなぁ。
お主の疑いはおしかったのぅ……
[狼使いに味方するものを殺したのだから、と小さく笑う。
この地にはまだ狼使いが二人残っている。
すくなくとも、その中の誰も死ななかったのだから。
生きて都会に行きたかったけれど。
因習の残るこの村を破壊するさまを眺める今も、また悪くはない。]
…ふぅん。
ま、つまらないわね。埋めてしまったの。
狼に食べさせたらまた時間稼ぎができるとか思う人、いなかったの?
[薄い唇にそっと当てる指先は手袋をせずに僅か赤く]
ビャルネ様が無実…と。成程ね。
何方からそれを?…あぁ「保身のために」いえないでしょうけれど。
疑惑と真実が交わるのみ、と。
そこには秘匿も、あるのだわね。
無ければ、そんな険しい面持ちで
帰ってくるものではないよ。これが怯える。
[これとは相手ゆえに指しもせず仔犬を示して、
ぐずと鼻先へいつもの音を立てる。怯える、と
口にするほどには当の仔犬は怯えもせず―――
ぱふりとマティアスの脛へと両の前足をつく様子]
否、こちらの用件で上がり込んだのだ。
あたしがやろう。
[慣れた室内を進む相手に声をかけ立ち上がる。]
先刻の問いは覚えているかね、"49"。
…そうか――有難う。
[言って、立ち上がる相手に指で水場を差し、自身はストーブの近くへと。
あん と 子犬が鳴く]
…勿論だ。
答えもこう、単純なものだ――
…――何か合った時の為、
機転を利かせろと言ったのは…
――お前だと、記憶している…。
[低い声 顔を蛇遣いへと向け
口元に浮かべるのは、微かな笑み]
[コトリ。カウコに茶を渡そうとする手は、もう彼に触れた折に着いた血の色はない。自分の分のカップを両手で包み、彼の言葉に黙し耳を傾けた]
…………ありがとうございます。
ひどい問いだったのにに答えを頂け感謝します。
ただ僕は…
長老が今日も誰かの名を挙げる心算だったなら…
あるいは誰かの手にかかるなら…
僕ではないかと思ってあそこへ赴きました。
でもそれは死ぬ為でなく出来るだけ生きる為です。
[彼の言葉の終わって後に口を開き、不審も信用も過分になれば危険が増すであろう状況で、弁明をして叶う限り人をいかしたいが為とは伝わるか否か。彼の想いとは違えど厭う事はなく、静かに頷いて茶を啜る]
説得が無理ならせめて村を襲う理由を聞きたい。
いかしいきる為の手段と同時に…
誰ともなく話す事しか僕には思いつきませんでしたが。
[コトリ。一本だけ脚の短い机にカップを置き、手を伸ばす先は容器の並ぶ棚。ひとつを手に取り、カウコへ差し出す]
…傷薬です。
化膿止めくらいにはなると思います。
[傷の事を訊ねるよりは、先に置いた問いに答えてくれた彼が来訪を求めた件を聞こうと、温まり湯気にも曇る事のなかった眼鏡の奥の眼差しが促す。彼が狼使いか否かよりは、薬を持つ事を知られる事に怯えるように視線を逸らした]
まぁともかく。ビャルネ様が無実というのなら……さぁて…あのイカレ帽子屋さんから何が聞けるかしら。
えぇ?イカレ帽子屋?どこかの遠い遠い国の御伽噺に出てくる帽子屋さんですって。
保身か、秘匿か。どこで見極めるかは…死後でも十分ではなくて?
死人にくちなしとはいうけどね。
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