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「お姉さん、どうかしたんですか?」
[すると、男の人の声が聞こえました
振り返ると、見覚えのある人がいました
ぜろくんです
お見舞いに来たのでしょうか
わたしは答えました
人を探しているんです、って
それなら、とぜろくんは笑って口を開きました]
―とある見舞客の話―
入院している人なら、看護師さんに訊けばいいと思いますよ。
その花……アネモネは、お見舞いか何かなのでは?
[見覚えのある人だったから、声をかけた。前みたいに困っているように見えたし。
すると彼女―確か、ロッカと名乗っていた―は、首を一度小さく振った。
お礼をしに行くんです、薄く笑って言う姿はどこか微笑ましい。]
ロッカさん、アネモネと言う花のこと、ご存知ですか?
[ふと思いついて、訊ねる。彼女は首を横に振った。]
アネモネは、長い毛を持つタネが風にのって運ばれることから、ギリシャ語で「風」を意味する語からつけられた名前なんですよ。
「はかない恋」、「恋の苦しみ」――「清純無垢」、「無邪気」、「辛抱・待望」、「期待」、「可能性」と言った花言葉を持つんです。
特に赤い花は「君を愛す」、白い花は「真実・真心」。紫の花は「あなたを信じて待つ」と言う意味が込められていて。
それから、ギリシャ神話ではアネモネに関する伝説があるんです。
花の神フローラの侍女であるアネモネ。彼女は西風の神であるゼフュロスに見初められたけれど、嫉妬したフローラが彼女を花に変えてしまった、という話が一つ。
春風がアネモネの花を優しく撫でるのは、ゼフュロスが今でも彼女を愛しているからだ、という話です。
[きらきらした目で話を聞く彼女は、見た目よりも随分と子供みたいだ。
こういう反応をされると、話す側としては嬉しくなる。]
……それじゃあ、そろそろ行かないと。
その相手が、喜んでくれると良いですね。
[あまり長くなっても迷惑だろうと、俺はここで話を切り上げた。
あいつの見舞いにも行かなきゃいけないし。
微笑みながら彼女に背を向け、歩き出す。
「薄れゆく希望」と言う花言葉もある事を、俺は敢えて言わなかった。*]
[ぜろくんと別れて、近くにいた看護師さんに訊いてみました
クルミさんのお部屋はどこですか、って
車いすに乗っている女の人なんですけど、って
すると、看護師さんは言いました
彼女は昨日亡くなりましたよ、って
わたしは何度かまばたきをしました
それから、そうですか、わかりました、そう言って看護師さんにお礼を言いました
それから、立ち尽くします
どうしましょう、どうしたらよいのでしょう
腕に抱えたアネモネの、ふわりと甘い香りが鼻をくすぐりました]
[わたしはアネモネを持ったまま、屋上へ行きました
理由はわかりません
ただ、何となく行きたくなったのです
そこでわたしは、空を見上げます
とても、とても綺麗な青空が広がっていました
なぜだかわかりませんが、その綺麗な空が、クルミさんに似ていると思いました
ふわりと冷たい風がわたしの頬を撫でるけれど、マフラーが暖かくわたしを包んでいてくれました]
[わたしは、アネモネを一輪ずつ風に乗せて飛ばしました
ふわりふわりと風に乗って散って行きます
ぜろくんがさっき教えてくれた話を思い出しました
ゼフュロスと言う風の神様が、花の神様の侍女だったアネモネを愛しているから、アネモネは風に優しく吹かれているのだと]
[その神様が、このアネモネを空の上まで届けてくれたらいいのになぁ、
そう思いながら、わたしは花を風に乗せていきました
クルミさんと、かみさまに、届きますように。
届いたら、クルミさんは喜んでくれるでしょうか
かみさまは、笑ってくれるでしょうか
腕の中の花がすっかりなくなるまで、わたしはずっとそうしていたのでした]
[今日の夢は、とても不思議な夢だった。
若者は、どこかの道を歩いている。
誰かの後ろ姿が、目の前に見える。
誰かを追っているのか?
いや、それにしては歩行速度が遅い。]
まだ早かったか
[何故か若者はそう言い、苦笑いを浮かべる。
追っていた誰かは、振り返らない。
ただ、道を歩いて。
遠くに、真っ青な空が見えた。]
[そして朝。
今日も電話で目が覚めた。
最近、こんなことばかりだ。
今日は、私の患者さんに関しての電話だった。]
ボタンさん?
はい、わかりました
[月に一度、検診にくるおばあさん。
そのおばあさんが、亡くなったと言う。
いそいそと服を着替えて、病院に向かう。
葬儀に、行けるだろうか。
今日の仕事は、はやめに切り上げよう。
そういえば、今日はルリちゃんが手術だったか。
私が手術をするわけではないけれど。
手術前に、彼女に何か送っておこう。]
[ジュースが好き、と言うことしかしらないから。
何がいいか、よくわからなかったけれど。
あの歳の女の子だから、というので縫ぐるみを買ってあったんだ。
少し大きめの、くまの縫ぐるみ。
あとで、持って行ってあげよう。
そう思って、抱えたはいいけれど。
これをもって出勤するのは、予想以上に恥ずかしかった。]
空が青いな
[夢でみたような、綺麗な青空。
冬だというのに、こんなにも空が高い。
珍しい事もあるものだと、若者は思った。]
[病院にたどり着くと、まずはナースに縫ぐるみを渡した。
ルリちゃんに、渡してくれと頼んで。]
ジュースの先生から、と言えばきっとわかる
お願いしたよ
[変な目で見られている気がするが、被害妄想だろうと思うことにした。
今日も、微糖の珈琲を買う。
サンドイッチは、買わなかった。]
夢
[今夜、夢を見た。
休憩室で、『おふくろさん』を聴きながら。
隣に腰掛けた少女の言葉に、静かに頷く。
『子供は、いいねぇ…』
「はは、アンタさんだって子供だろうが」
「そうだな、…俺ちの孫とはどうやって遊んでやりゃあ喜ぶかねェ」
「娘達が若い頃は、片栗の花を観に行ったりしたよ」
「紫色の小さな花が、群生している場所があるんだ」
「春の花だ。アンタさんはすきかい?」
「すきならきっと、孫にも喜んで貰えるかもなァ…」]
[若いお嬢さんと、病院の休憩室で語り合う夢だ。
目覚めた時に不思議な気持ちになったのは
そのお嬢さんと、何処かで逢った気がするのに
それが誰なのか、
はっきり思い出せなかったからだろう。]
……これも、縁てやつかねェ
[既に日課となりつつある母の見舞いに
今日も、出掛ける]
病院・ロビー
[見上げた先には、抜けるような青空があった。
燦々と降り注ぐ陽光が、青空をより際立たせる。
雪も随分と溶けたことだろう]
ああ…、清々しい朝だァな……、
[青空を見ていると、生きる気力が湧いてくる。
外で深呼吸してから、病院を訪れた。]
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