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…そうか。
[ゼンジのこたえに、長い言葉は返さなかった。
返したのは、ごく短い了承の意のみ。
丁寧な礼に、同じく目を伏せて気持ちのみを表す。
それから暫く。
日記は、2ndの現状を伝えて来た。
”2ndは5thと合流した”
”2ndは4thと会談した”
それらを、端末は機械的に耳朶に転送して来る。]
10th グリタは、ナオに茶のおかわりを要求した**[栞]
サバイバル・ゲーム…、か。
[理不尽なゲームだ。
気持ちや肉体の強さによらず、
運や、少しの行動の差が生者と死者を分かっていく。]
悔いも何もなくせない。
そういうこと…、なのかな。
[独り言が零れた。
いつしか思考はゼンジとグリタに向けたものから、ソラのことへと向けられている。
深い、ため息が落ちた。*]
……、別に。
きっと、寝覚めが悪い って奴だろうし……
[謝罪と感謝を告げる言葉には、
一度顔を見やってそれからまた傷口に視線を落とす。]
なんでそんな顔してるの……
[裡にわだかまりはまだ、きっとある。
けれどそれは彼自身にでは、なかったから、
やっぱり同じことの繰り返しに、なりそうだ]
[私は、コハルちゃんの話にじっと耳を傾ける。
少しでも多く、背負う為に。
―― 本当に守る為には手が少ない、って言った、ゼンジさんの言葉が頭を過ぎる。
そう、手が少ない。だから、……全てを、守れない。]
……お父さんを?どうして?
[親を殺す、なんて、私の世界では滅多に起こらない。
目を見開いたのが、自分でもよく分かった。]
/*
そういえばクルミちゃんの両親はどうしてるのかなぁ、と思って聞いてみたら、父親は競技選手で世界と戦っていて、母親は機械開発に携わっているそうで。
二人とも忙しくてあんまり家にいないから、おばあちゃんっこになったそうな。
死んでないよ!
…キシは、本当に。
自分の世界に価値があると思って、とか、
[自身の裡に広がり続ける仄暗い染みが
じわり じわりと
良い人 戦い
自分の世界 神になる
単語が聞こえるたびに、
意識と自覚が、やっと、繋がっていく]
/*
クルミちゃんの世界は、科学が発達し過ぎて、戦争をしたら人類が滅びそうになったから世界終戦を行って、その代わりに五輪的なイベントが年に1回開催されたり、他にもちょこちょこと決めごとの度にスポーツが指定されて、それで国同士のあれこれを決めるようになった、っていう、とても平和な世界です。
基本的に世界中でスポーツマンシップをまずは教え込まれるので、みんな割と修造的な感じ。
世界的な戦争の禁止に伴って暴力や犯罪も戦争を促すものとして国際法で取り締まられているレベルなので、多分年間2桁レベルの犯罪数の少なさだと思われる。
……酷いことをしたな。と、思って。
[なんでと言われれば、また眉が下がる。
傷口を看てくれるのには抗わず、目の前に揺れる髪を見ていた。]
俺はお前の気持ちに…酷いことをしたと、思ってさ。
だから、きちんと話がしたいと思って。
……何ていうか、守りたかったんだ。
お母さんを。
父親って言うのが、クズの見本市みたいな奴で。
何もしてないのに、殴ってばっかりいて。
私もいつも殴られてた。
だから――殺したの。
でも、お母さんは
「もう絶対にこんなことしちゃだめ」って
泣いてた。
それから、他の人を悲しませるようなことは
したくないって、思うようになったの。
[クルミを見ていられなくて、視線が逸れる]
…――オレ様は、絶対。 生き残るんだから。
誰が否定したって知るもんか。
オトナの評価なんかいらない。
自分の世界の価値は、オレ様自身が決めるっ!
[宣言と共に絵日記を引っつかんで
勢いよく立ち上がった。
海鮮丼のイラストが書かれた店の厨房に入る。
背を伸ばして、自分の身長と同じ高さの料理台に置いてあった小型の包丁――漁師が使う間切包丁を手に取った。小さいが切れ味が鋭く、魚も易々と解体できる優れものだ。
ズボンのポケットに木鞘ごと仕舞い込み、上からぽんとひとつ叩く]
あるといっても痛み止めくらいだろう……、
今度は何笑ってるおまえ……
[傍らしゃがみ込んで、
取り出したハンカチを傷口の上に当て、
手で少し圧迫するように押さえる。手当てとはよく言ったものだ。
応急手当は当然の知識であったから、
何も施していないのにむしろ不可解な顔になる。
そして問いにこたえた言葉>には>158]
……酷いこと。
別に、……わかってたし、
お前が大事なのはあいつらだって。
[必然的に距離の近いまま、
視線は傷口にだけ向けられる]
そうだな、
暴れられた 方が
[ネギヤに返そうとして、また、口を片手で抑えた。
何かが、こみ上げる。
幽霊は、感覚は無い筈じゃないのか。
否、脳が、感覚を作る?
脳も、動いていないのに]
っ、
[コハルの告白にどこか痛い風に顔を歪めてから
両手で口元を抑え、目を閉じた**]
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