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[差し出した手に、私の端末が返ってくる。
それをぎゅっと手で握り、私はカノウくんの横へと戻り……通り過ぎてから、振り返る。]
カノウくんも、ありがとう。
……私、着替えてくるね。
[陶器の破片のせいで、私のブレザーは傷だらけになっていた。替えの服を用意しないと、いつ破れてもおかしくない。
私は、ちらりと一瞬だけ、ソラさんの遺体を見てから、目を逸らし。
ちくちく痛む足で、階段を2階まで降りた。]
[階段を降りながら、私はおばあちゃんの言葉を思い出す。ちゃんと話をしないと、と思っていた自分を思い出す。私のことを「幼い」と言ったネギヤさんの声を思い出す。「守る」と言ってくれたソラさんの声を、思い出す。
もっと考えたり、話をしたり、ちゃんとしなきゃいけないことがいっぱいある。もっと、もっと、もっと、
もっと、ソラさんと、一緒にいたかった。]
……っう、ああぁぁぁ……!!
[私は集合場所の時計の前で、声を上げて蹲った。
泣かないと決めたのに、次から次へと涙が溢れて止まらずに、わあわあと子供みたいに声を上げて泣いた。
店内に明かりが灯っても、エスカレーターが動き出しても私は動けず、結局立ち上がれたのは、店にお客さんが増えてからのことだった。]
[一度洗面所に寄って、ぐしゃぐしゃになった顔を洗う。鏡に映る私は、今までの人生で一番不細工で、思わず笑ってしまった。
それから、服屋さんに入る途中、エレベーターの前に差し掛かった時にネギヤさんの死体を見た。
私は何も言わず、開いた扉に向けて頭を下げた。ごめんなさい、と、ありがとうを籠めて。
それから立ち寄ったお店で、ショートパンツとシャツに着替えさせてもらって、ついでに鞄もブレザーと一緒に処分してもらうことにして、代わりに肩掛けバッグと、裁ち鋏を貰った。
沢山の切り傷は痛むけど、血は止まっていて、服を汚すことはなかった。]
[そして私は集合場所に戻り、端末を開く。
私の日記に、覚悟していた「DEAD END」の文字は無く、代わりにあったのは。]
『2階で、6番の子と会う。』……。
[6番の子は、ソラさんが気にしていた子だ。
私は、時計の下から動かずに、6番の子を待つことにする。
私服で、かつて携帯電話と呼ばれていたものに近い端末を見ている私の姿はまるで、友達と待ち合わせでもしているかのように、見えるかもしれない。]
/*
今朝の私の灰を消したい、もぞもぞ。
ごめんなさいすげえ凹んでたんよ……。
情緒不安定な時に余計なこと考えちゃダメね。あと、ちゃんと健康しないとダメね。
/*
最初のキャラ設定でダウナー系女子リウちゃんと、元気系女子クルミちゃんで迷ったんだけど、これは素直にリウちゃんにしとけば良かった、ね……!
だから何故元気系にしたし、私。
身体中のエネルギーが持っていかれるわ……!(へろへろ)
ん?……変?
あ、そういえば、コハルちゃんは何で、私の名前、知ってるの?
[変、と言われて私が思い出すのは、そのこと。
場にそぐわない、穏やかな空気が流れる。
それもきっと、機会があれば崩れてしまう、脆いものだけど。
今はまだ、鞄の中の刃物に手を伸ばすことはない。]
うん、楽しいよ。
私、野球やってて。チームの子とかもみんな仲良いし……友達も、いるよ。
たくさんかどうかは、分かんないけど。
んー……そっか。
[それが失われるかもしれない世界だと思えば、そんな曖昧な相槌しか打てなかった。
安心したような溜息に、私は首を傾げて。]
……なんで、そんなこと聞くの?
[私の世界で、私がどう過ごしているのか、っていうのが、コハルちゃんにどう繋がるのかが分からなくて。
疑問をそのまま、問い掛ける。]
[私は、コハルちゃんの話に耳を傾ける。
それから、暫く床に視線を落とす。
言いたいことをちゃんと考えて、まとめてから、口を開く。]
……私は、コハルちゃんの世界の「クルミ」じゃないから、代わりにはなれないよ。私が幸せなことで、コハルちゃんが得る安心は、ごまかし……だと思う。
それに、……それは、本当に、助けることが「出来なかった」なのかなぁ。
その「クルミ」の気持ちに関係なく、助けることは、出来なかった?
[コハルちゃんの世界のことを、私は知らない。
だから、自分勝手に、主観で話すだけ。]
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